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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第62話『散弾銃の証明』

『バシュバシュバシュバシュ!』


ギバが二丁拳銃で容赦なく弾丸を浴びせるが――


「タンドリー!」


「痛ぇな……!」


――とどめを刺されず『ダウン状態』となったタンドリーが這い進み、その身を盾にした。


「ダウン状態の味方を盾にする戦術はよく見られますが、ギバ選手相手だと……防ぎきれますかね」


「おっと、ホット、これは……」


実況カメラがギバ視点を映す先で――目前のホットが新たな銃を構えた。


――頭じゃなくて……狙うのは首の付け根!


『――ズドンッ!』


「……は?」


最強クラスの赤アーマーが瞬時に割られ、ギバは思考を挟む間もなくリロードに入った。


「なんとここでホット!サブ武器のシャープレディ(ショットガン)を発砲!」


「ホット選手、普段はアサルトライフルやサブマシンガン主体の印象ですが……ここでショットガン……攻めてますね!」


「しかも当てていく!ギバの頭にヒット!これは実力か、それともミラクルか!」


ホットとギバはストレイフ(左右移動)しながら真正面から撃ち合う。一方でさがんもテディのウルトが切れた隙を逃さず、一気に攻勢へと転じた。


弾丸が空間を裂き――テディとホットが同時に引き金を引く。


「あと一発……!」


「いっけぇぇぇぇぇぇ!」


次の瞬間、画面いっぱいに『Your team is the Champion』の文字が映し出された。


「やったーーーー!!」


「ナイス!!」


「チャンピオンきたぁー!やったねー!」


実況席も同様に熱を帯び、毒島が興奮を抑えきれない声で口を開く。


「この第四マッチ、見事チャンピオンに輝いたのは――これプロチーム!」


「おめでとうございます!!」


最終戦のリザルトは映されないまま、配信はそのまま結果発表へ進行する。テディは麦茶を飲み、歓喜を抑えて締めに入った。


「じゃあ配信はここまで!結果はウェルテックス祭公式チャンネルの配信を見てね!」


「一位あるかな……皆応援してくれてありがとう!」


「お疲れ様でした」


ウェルテックスのカジュアル大会で、試合終了直後に配信をすぐ切るのは主にトラブルを防ぐためである。試合後は勝敗によって感情が大きく動きやすく、負けた場合には愚痴や言い訳、勝った場合でも不用意な発言が出やすい。


そのまま配信を続けてしまうとこうした発言が切り抜かれ、他の参加者や視聴者とのトラブルや炎上につながる可能性がある。


こうしたリスクを避けるため、多くの配信者は試合終了と同時に配信を終了するようにしていた。


「負けて泣いてるとこや、勝って過剰に喜んでるとこはポジティブにもネガティブにも受け取られやすいから……だよね?」


山根家のリビングにて。純花は欠伸を噛み殺し、テレビのリモコンを操作する兄に話を振る。彼は画面を本大会の配信に切り替え、麦茶を軽く口にした。


「例え善意の共感でも……人間は感情をコントロールできない生き物だから」


ユイガは『人間』という言葉の中に自分ともやのかかったクラスメイトを含め、一度言葉を切った。


「でも、今日は上位チームのインタビューでまた会えると思うけど?」


「…」


――ど、どうなったんだ……?やっぱりこれプロが優勝したのか?


山根家の父は、途中からの観戦でも十分に分かりやすい展開に魅せられ――結果を早く知りたくて仕方がなかった。


そして進行は、そのまま最終集計へと移る。


「――三位は54ポイント獲得……ストロニアンサイトチームのオルトスさん、たろいちろーさん、IMIさんです!おめでとうございます!」


「おめでとうございます!お疲れ様ですー!」


「「ありがとうございます!」」


「まずはオルトスさん!三位という結果――」


「「…」」


これプロの三人は申し訳なさを感じつつも、三位入賞チームのインタビューを半ば聞き流していた。


そしてついに、第二位――準優勝チームの発表の時が訪れた。実況の毒島は結果を確かめると、カメラに向かって一息に言い切る。


「――準優勝!合計得点60ポイント!QH-Sチームのさがんさん、ギバさん、ファイヴiさんです!おめでとうございます!」


「おめでとうございます!聞こえてますかー」


「毒島さん!まだ呼ぶなって!」


「あははははは!さがんさん、あと一歩届きませんでしたね!今のお気持ちいかがでしょうか!」


「そうで……」


「毒島がさん付けしてくんの違和感ある」


「な。毎度思う」


「おい!俺が喋ってるでしょうが!」


「ギバさん!ファイヴiさん!お二人にも後で聞きますから!」


毒島はQH主催のさまざまなカジュアル大会で司会を務めることが多く、同チームのさがんとは私生活でも交流がある間柄だった。もちろん、ギバやファイブiとも気さくに言葉を交わしている。


「いや惜しすぎでしょ……!いいかな。今から毒島さんとこ行って0を左に一個付け足してもいいかな」


「あはははは!僕どうこうしても結果はどうにもならないですよ!僕ただこの席座って口動かしてるだけなんで!」


さがんが悔しそうに食い下がっていると、ギバはふとあることに気づいた。


「……待って左?それ小数点にならん?0.6ポイント……」


「あヤベ……600!600ポイントの間違い!」


「さがんおーいー!十五万人の視聴者の前でゴリラ晒すな!」


「イーッヒッヒ……!ご、強欲ゴリラ……」


「んっ?イッサちゃーん?誰がゴリラだってぇ!?」


「つまりGG(グットゲーム)……ってね!」


「イブ黙れゴルァ!」


QH-Sは二位という結果でも軽快な掛け合いで笑いを生みつつ、内心の悔しさはしっかりと表に出していた。


『逆転マジかー』『まくった!!』『優勝すげぇ』『やりやがったな……』


視聴者のコメントが先に優勝を祝うムードになる中、待ち望まれた結果が告げられる。


「総合優勝チームの発表です!熱戦ウェルテックス祭、栄えある優勝は――」


ここで毒島が一拍置くようにイッサへとバトンを渡し、彼女がはっきりと言葉を告げる。


「――こちらのチームです!一位61ポイント!これプロチームのテディさん、ホットさん、タンドリーさん!おめでとうございます!」


「「ありがとうございまーーす!!」」


これプロチームは二位との差わずか1ポイントで輝かしい優勝を成し遂げた。配信外でインタビュー体制が整い、三人は公式の通話へと入る。


「まずはリーダーのテディさん!いかがだったでしょうか」


「はい。僕ウェルテックスのカジュアル大会に出たの一昨年の第四回QHカップぶりで」


「あーそうですよね」


「その後、仲間の二人が同じグループやコミュニティ同士で出場する『血戦(けっせん)ウェルテックス祭』に参加するって聞いて……」


「本大会の前に開催された大会ですね」


どちらも『Quirk Hematite』主催のeスポーツ大会だが『QHカップ』は混成チームで競い合い、『ウェルテックス祭』は同じグループやコミュニティ単位でチームが組まれる形式だった。


「次僕もこういう大会に出るってなったら、チーム『これプロ』として自分のメンバーと一緒に走りたかったんです。今日実現して……優勝まで叶うなんて本当に嬉しいです!」


「テディさん……!最高ですかよ……!」


「テディ……!」


「えっ……イッサさんはギリ泣いてないけどホットはガチ泣きしてる?」


イッサとホット、二人の涙混じりの声が重なる中、毒島は順を追ってホットに話を振る。


「我々にミラクルを見せてくれたホットさん。今の気持ちをお聞かせください」


「脳みそぐちゃぐちゃで……何言えばいいのか」


「あはは。声もぐちゃぐちゃだけど」


「もう……とにかく……さいっこーの気分です!」


「ありがとうございます。実況視点で見る限り、ホットさんはランクプラチナという立場ながら、ディザスターのジェノ選手をスナイパーライフルで、同ランクのギバ選手をショットガンで、それぞれヘッドショットを決めたシーンが印象深かったんですが……」


「あぁ……あれはもう完全に勢い任せで撃ったやつですね」


「嘘でも練習の成果って言えよ」


「ふふっ……でも初出場ですよね?実力と運を100%出せたんじゃないかと思います」


ホットは胸の高鳴りが目に滲み、当時の記憶は曖昧になっていくが――その瞬間は配信アーカイブに、称賛のコメントごと残されるのであった。


「タンドリーさんにとって、今日はどういった大会になりましたか?」


「そうですね……」


「あっ。ちょっと待ってください。本当にごめんなさい」


「はい」


毒島はタンドリーの言葉を途中で切り、震える声で尋ねる。


「タンドリーさん声……かっこよすぎないですか」


「毒島さんナイス!私もそれいつ言おうかめっちゃ悩んでました!」


その美声に心を掴まれた視聴者が続出し、この配信をきっかけにファン層は大きく広がったと後に語られている。

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