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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第60話『これプロチームの生存戦略』

タンドリーは建物の角に身を潜めて息を整える。川の向こうには、まだ敵の影がちらついていた。


「タンドリー諦めてないよね!?」


「託した!」


「先に落ちやがって……」


――今度は俺かよ。


数分前。日本の庭園と近代的な高層ビルが融合したようなエリア『瑞鳳ずいほうプラザ』にて。諸君!これがプロである!!のテディ、ホット、タンドリーは男性歌い手グループのチルアウトレックチームへ積極的に戦いを仕掛けていた。


「さっき奥の方敵いなかった?」


「全滅した。けど向こうから別チ()来る」


「ホットのとこ気をつけて!後ろ射線通ってる!」


テディのウルト『捕食者の突進(プレデターラッシュ)』が戦局を切り開き、二パーティのうち三人を倒す。三人はコンテナ裏で一息つきながら回復作業に移った。


「テディこれ戦利品の中にあった」


「やったー!ありがとう」


ホットはテディにアルティメット加速剤を渡す。通常なら次のウルト回復まで250秒もかかるところが、瞬時に発動可能となった。


「セーフゾーン収縮……左寄りっぽいね」


「じゃあオアシス区画抜けて研究所行く?」


「あそこいい思い出無いけどな……」


「俺も……けど行くか」


三人は感覚に頼らず、戦況を正確に把握したうえで動いていたその時。


「――クールタイム終了……突撃するぞ!」


「「イエッサー!」」


『アルティメットスキル。跳ねる(バウンシング)道化師(・クラウン)を発動します』


「これプロ……!このネリス・ヴォーンが全て終わらせる!」


『――パパパッ!パパパパパパパ!』


「!?」


索敵の届かぬ位置から、白い軍服を着た女性ブイチューバーがウルトで跳躍し――滞空しながら三人へ銃弾を叩き込んだ。


跳ねる(バウンシング)道化師(・クラウン)』――空中に円盤型のトランポリンを設置できるウルトだ。


それを踏み込んだ瞬間、内部に蓄積された反発エネルギーが解放され、対象を空中へと強制的に打ち上げる。


三人はユニオンストリームNチームに先制を許すが――後続の二人にも同等の打撃を見舞い、拮抗した撃ち合いに持ち込んだ。


「えー瑞鳳プラザ周辺ではユニオンストリームNチームとこれプロチームが激突。ネリス・ヴォーン、モコ・ルブラン、エルミラ・フェアリウムのスリーマンセルです」


「今のネリたん……じゃなくてネリス選手、めちゃくちゃ良い動きしてましたね。愛おしい……」


「イッサちゃんから本音が零れてしまいました」


テディは一歩身を引き、横手の高所から通る狙撃を見切って回避する。エルミラ・フェアリウムの一射をやり過ごすと、今さらのように息を吐いた。


「はぁー。彼女……ネリスさん。さっきのソロマッチで僕が最初に落としたった」


「はいテディ戦犯ー」


「まだギリセーフにならない?持ちこたえてんだから……!」


「いや位置キツ……うぁっ!」


「ホット――えっマジぃ!?」


ユニオンストリームNが高所を徹底した立ち回りを見せたことで、テディとホットは惜しくも撃ち負けてしまう。


「狙撃女は倒して別チはシールド割って追い返した!そっちは!」


「一人ダウンしたけどもう一人はギリ生きてる!先そっち処理して!」


「っ!」


――せめて確キル入れる!


「おっと!?モコ・ルブランは撃ち合わない!迫るタンドリーに背を向け、ダウンしているテディとホットの元に向かった!」


『ズドドドドドドドド!!』


「ぐっ!」


「マジ!?」


同じく残り一人となったモコ・ルブランは、正面からではタンドリーに敵わないと判断し――ダウン中のテディとホットにとどめを刺した。


「確キル優先の判断ですね。下手に勝負を挑むより、目先のポイントを確保するのは非常に合理的だと思います」


1VS1(ワンブイワン)で負けるリスクを考えての選択!しかしタンドリーが詰めてくる!」


「一旦戦犯か?お前も……」


彼女が両取りに動くより早く、タンドリーの照準が頭を捉える。乾いた銃声と共にユニオンストリームNチームは壊滅した。


「はぁ……まだ戦ってもらうからな」


そして現在、タンドリーは死んだ仲間の『コアデータ』を持って移動していた。


プレイヤーが完全に崩壊した場合でも、即座に戦線から離脱するわけではない。


崩壊時に残される『コアデータ』を味方が回収することで、リカバリー対象として保持することができる。


回収されたコアデータは、戦場各地に設置された『リコンストラクション・ビーコン』へと持ち込むことで再生が可能となる。


なお再生されたプレイヤーは最低限の装備のみを所持した状態で復帰するため、完全な戦闘能力を取り戻すには物資の確保を再度行うことが必要。


第ニマッチでもホットは二人のコアデータを確保していたが、QH-Jチームのジェノに退路を断たれ、再生という選択肢を封じられていた。


「僕らのことなんて置いてってよ……」


「屍を越えて、生きて……!」


「安全圏から甘ったれたことばっか言いやがって……」


今回は周囲に敵影はなく、戦闘準備も万全――まだ二人を再生できる可能性は十分に残っていた。


「…」


一方、これプロとは反対側にいるQH-Sチームは現在7キルを獲得していた。


「テディとホットがやられた……モコさんやるぅ」


さがんは戦闘データを開き、これプロチームの使用武器を洗い出していた。


そのタイミングで、テディとホットがモコ・ルブランのサブマシンガンに倒されたというログが更新される。


このログには、プレイヤーを戦闘不能にした武器が表示される仕様だ。そこから、敵の射程や火力をおおよそ把握することができる。


「嘘!じゃあ俺らマジで優勝有り得るんちゃう」


「タンドリーさんが生きてる?」


ギバもまた、脅威が排除されたかどうかを確認する。戦闘中に『戦闘データ』を確認するのは、戦況を正確に把握して次の行動を判断するためだ。上級者ほど、耳で拾う銃声と目で追うキルログを組み合わせる。そうして、戦場の見えない部分を補完していた。


「向こうやりあってるわ。3パ(-ティ)か?ジェノが殺しまくってる」


ファイヴiも戦闘データを参照し、銃声の聞こえる方向とログの内容を照らし合わせる。その結果QH-Jチームが複数のチームと交戦中だと判断した。


「正味ぼっちのタンドリーさん狩りたいけどなー」


ログの流れが激しい――それはすなわち、戦闘が長引き、互いに消耗している証拠。


「一旦俺たち抜きで暴れてるQH-J(後輩)処すのが先か」


体力を削られた敵を狙う『漁夫の利』を仕掛けるには、絶好のタイミングだった。


☆彡

「――さぁスカイリンク研究所周辺には五人集まっています。残り九部隊二十四名」


タンドリーは瞬間的に距離を測り、アサルトライフルで応戦する。接近戦では機動力と反射神経を駆使し、ライフルでは届かない射線を補った。


『チャッ……カチッ。チャキッ』


タンドリーが新たな弾倉を差し込んだ直後、足音が施設の奥で跳ねた。反射的に銃口を上げる。距離は中間――遮蔽物は多いが、視線は通る位置だった。


『ズドドドドドドドド!バキィン!』


引き金を引くと、反動の小さな連射が安定して伸びる。連射したうちの数発が応戦に出た敵の胴に被弾し、赤色のシールドを叩き割った。


「タンドリー・チキン・カレーさん。しっかり腰撃ちしてますねー」


「改名すんな」


タンドリーは銃を構えたまま次の足音に備える。研究所内はセーフゾーンに含まれているためか、複数のパーティーが入り乱れる混戦状態となっていた。


「あと六十秒でセーフゾーン収縮……さっさと行くか」


タンドリーは通常スキルの高速移動で施設内を横断すると――


「「あ」」


――その進行先で、体力を回復中の寺岸神流と視線がぶつかった。


「ここで寺岸神流とタンドリーが会敵!両者ともにチームは残り一人!」


「これは……」


誰もが次の瞬間、銃声が響くと確信していた。


「……」


「!」


だがタンドリーは神流を撃たず、その場を逃げるように去った。


「……タンドリー選手見逃しましたね」


「この意図にはどんな理由があったんでしょうか」


「生存を優先したのと……」


イッサが状況を踏まえて推論を巡らせる一方、タンドリーは「俺は何も見なかった」と呟き、そのまま俊足で外へと抜けていく。その直後、屋根上の敵が放った弾丸が彼の足元をかすめた。


「……何か結果的に寺岸さんを二度も生かしてるけど」


「まさかタンドリーって……」


――ああいう感じの子がタイプだった!?


ホットは恋愛じみた運命センサーにでも触れたのか、一人で勝手にテンションを上げていた。対してタンドリーは静かに息を吐く。


「そうだな……」


植木の陰へと身を滑り込ませ、ぽつりと一言。


「頼むから別チ()の囮になってくれ」


「「最低 (だよ)!」」


コメントも味方につけてタンドリーを詰めるが、当の本人は顔色一つ変えなかった。その間にも『リコンストラクション・ビーコン』は目前まで迫る。


――俺もコメント見よ。


再生待ちのホットは、空いた手でサブモニターにこれプロの配信を映す。コメントが洪水のように流れる中、その中のいくつかに視線が引っかかった。


『ホットならあそこで終わってたわ』

『残ったのがホットじゃなくてよかった』

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