第55話『熱戦勃発!ウェルテックス祭!!』
プロゲーミングチーム『ストロニアンサイト』のオルトス、たろいちろー、IMIの三人は壁面すれすれを掠めるようにして、途中階のバルコニーへと着地した。
「うわ脳みそ筋肉だ」
解説であるイッサ・ヂーチンの呆れた声が飛ぶ。
「開始直後ですよ!?同居が早い!」
実況の声に被せるように、たろいちろーが歌観月天がいるフロアに入った。
「二階一人いた」
「こっちも奥にいるヤツ追ってる」
「オッ。上にいる子は神流ちゃんカナ?」
「なんか味方に激キモ粘着ジジイいない?」
「神流ちゃん……ハァハァ……ッスーー。ハァハァ……」
「ちょ笑かすな!照準ブレる!」
「え……!?敵きてる!!」
たろいちろーの視点が歌観月天を捉え――彼女が振り返った次の瞬間、銃声が鳴り響いた。
「さぁ!たろいちろーは扉をしっかり使って発砲!対して歌観月天は一旦引くような動き!」
3v3の衝突戦が始まり、部屋と廊下で激しい撃ち合いが展開される。先に崩れたのは――万世かくり。乾いた破裂音とともに、彼女の体が崩れ落ちた。
「うわあああああ!やめでぇ!」
「オルトスが先制!そして間髪入れずたろいちろーが追い込んだ歌観月天にインファイト!」
「痛ぁーい!ちょぉ!」
「これも良いエイム!」
「ユニオンストリームUはちょっとキツいかもですね……」
白いシールドが砕け、歌観月天も倒れてしまう。だが次の瞬間、黄色のスモークが廊下を満たした。
「何も見えん……!」
彼女が死ぬ間際に投げたガス弾がオルトスとたろいちろーの視界を一気に塗り潰す。そして上階で、銃声がひとつ弾けた。
「寺岸神流!不法侵入者IMIを見事返り討ち!」
「神流!ワンチャン引っ繰り返せる!?」
「さぁオルトスとたろいちろー!カバー間に合うか!」
そして寺岸神流は瞬間移動のウルトで素早く移動する。彼女は階段口へ滑り込み、倒れているかくりへ手を伸ばした。
「万世かくりを復活しに行った!」
「起こしきれますかね……!?神流も体力ギリですよ」
『パァンッ!』
だが――破裂音が響き渡り、寺岸神流の体が崩壊してしまった。
「あぁ……!」
実況の声が一瞬詰まる。階段の上、ガスの隙間から――オルトスの銃口が勝敗を告げるように光っていた。
「あと一歩間に合わず……!」
「いやでも神流のあの粘りはすごかったですね……!」
ユニオンストリームUチームの画面に部隊全滅の表示が浮かぶ。
「終わりやした……」
「そんな……」
「あぁーー!」
「ストロニアンサイトチーム!初動のリスクを見事跳ねのけました。そして……銃声を聞きつけて抱腹絶倒芸人チームが詰めています!」
実況は止まらない。瞬時に視点が切り替わり、仲良しお笑い芸人で編成された『抱腹絶倒芸人』チームの画面が映し出される。彼らは『ストロニアンサイト』が潜む建物を見上げていた。
「ストロニアンサイトチームは生存を優先する模様」
「流石に、ある程度装備が整った相手となると分が悪いですね」
実況カメラが島全体を映し出す中、ホットは空を飛んで移動するチームを見上げていた。
「あのウルト普通に強いよな。味方も飛べんのヤバ」
「キルログ見た感じストロニアンサイトもあの個人用飛行装置でユニオンストリームUチームを強襲したのかな」
「早いな。でもあれ移動中は攻撃できないんだろ?上手いスナイパーなら恰好の的……」
『ズドォン!』
『ドシャッ!』
「「…」」
『これプロ』チームが走って移動している途中、空中で狙撃された声優ゲーマーチームはそのまま壊滅してしまう。崩れかけた三人分の体が、ホットとタンドリーのすぐそばへ落下した。
「……鳥の死骸みてーだな」
「もうちょい可愛く表現してよ。プレゼントボックスとか」
「待って。これ近くにプロスナイパーいるってこと!?」
「あ、でも向こうで1パーティピークしてるね」
「詰めよう!」
テディが通常スキルで索敵した敵は遮蔽物から体や顔を出して様子を伺う『ピーク』を繰り返し、攻撃の機会を探っていた。
第二マッチは中盤戦に突入。各所で戦闘は発生していたが、局地戦では決着がつかず、撤退するパーティが続出していた。
「あんの立てこもりめ……!俺の神グレを喰らえ!」
「イヤーッ!別パ来てるよ!」
「後ろ後ろ!挟まれてる!」
移動中のらむらすランチチームは建物の窓からの銃撃に加え、別方向の敵からも攻撃を受ける厳しい状況に陥っていた。
「あっこれマズイかも!マズイかもっス!」
「あー始まった始まった。あー」
「エグーい!」
QH-Sチームも敵のウルトに巻き込まれ、周囲に光の結界が立ち上がる。狭い空間での動きが制限された撃ち合いに突入していた。
「右の方からも音する……えー当たった!」
「ふあーーっ!グレでドア壊れた!」
「ひえぇ!直す直す!はいゲジョゲジョゲジョ……」
「「直る音キモッ」」
こせゆ隊チームも安置圏内の建物に籠城。連携して守りを固めながら、外の敵に応戦している状況だ。
「右一人左二人……右倒した!下がってる!」
「一人当てた!ここ今二人いる……今別れた!」
「左の敵ダメージ……あと一発!」
ロクラメンチームも岩裏に隠れながら、射線を通し合う激しい銃撃戦を繰り広げていた。
「あそこ一人……最後かな?橋の下降りてった!俺キルポイント取り行ってくる!」
「隣の建物からの射線に気をつけるのよー」
「母ちゃん?」
『パパパパパパ!』
「はーー!?やめてください!やめてください!」
「ブッ……言わんこっちゃない!」
残り七部隊。テディはウルトを使用し、QH-Jチームの奇襲を受けたホットのカバーに入る。三人がいる研究施設周辺や発電プラントの内部には次々と漁夫が流れ込み、一分前まで優勢だったチームが、次の瞬間には肉体が崩壊し棺へと変わるような状況だった。
「まさに乱戦の坩堝。セーフゾーンも収縮しております。安置きわきわの戦いの中ディパレットチームのグレネード!さらにウルトの爆撃も止まらない!」
「今のもさ彦選手のカバー上手い!」
実況がこせゆ隊チーム周辺の戦闘を映している間に、これプロチームの生存者はホットただ一人となってしまった。順位は現在、暫定七位である。
「キルポも上限取れてるし、八位でも九位でも順位ポイントは大して変わんないから!落ち着いてこ!」
「……っ」
――でも俺が『QH-J』を凌げなかった所為で……。
「さぁあっと言う間に数が減っていく!」
「上位成績チームが結構落ちてますねー」
そして実況カメラがQH-Jチームであるジェノの視点を映す。彼は建物の上からスナイパーライフルのスコープを通して、ホットがいる倉庫の裏を見張っていた。
「QH-Jチームのジェノ、姿を隠しているホットをしっかり見ています」
「絶対殺すマンじゃないですか。ホット選手がいる位置も……あそこ以外で射線を切れる場所なさそうですね」
「…」
『パシュウン!』
「怖っ!!」
ホットは恐る恐る顔を出すが、その動きに反応してジェノのサンチネラが鋭い銃声を響かせる。正確に頭を狙い澄ました射線に、これプロチームの三人は息を呑んだ。
「ジェノさん……完全にホットのいる方向を警戒してるね」
「ホットの正面から敵来たらいよいよ詰みだな」
さらに、いつ別チームが挟み撃ちの形で仕掛けてきてもおかしくない状況だった。
「スナイパーライフル……ユ、許せないよ!」
「僻むな」
――今ユイガもスナイパーライフル上手かった(よね)って言おうとしたな。
ホットが危うく非公式メンバーの名前を口にしかけ、テディとタンドリーは焦りを覚える。視聴者にそんな動揺を悟られないよう、当の本人は近くに落ちていた戦利品へ手を伸ばした。
「あ、それ僕のだね」
「使っていい?」
「え?グレネードはホットが持ってるのしかないよ」
「いや……これっ!」
ホットがこの状況の打開策を決めた頃――ジェノは味方二人に背中を預け、視線を一方向へと向け続けていた。
――動かないな……?別チにキルポ(イント)取られる前に獲り行くべきか……。
彼が痺れを切らして動こうとしたその瞬間、倉庫の左側でグレネードが爆ぜる。
――来た!
爆発音に反応し、ジェノのスコープが一瞬だけ横へ揺れるが――彼はプロゲーミングチーム『Quirk Hematite』所属のプロゲーマーである。
――グレで気を逸らした隙に右に逃げる。それかそうみせかけて左か……どっちに逃げても脳天ぶち抜いてやる。
「チャレンジャーだねぇ」
「……本気か?」
「いっけぇー!」
「……!?」
その刹那、ジェノの予測は覆された。
『キュイイィィン……バシュッッ!バキィン!』
「えぇヤバ!ヘッドショット!?」
「ジェノのシールド割れたぞ!」
撤退すると思っていた相手がより高威力のエネルギーライフルを構え、自ら撃ち返してきたのである。
「っ!」
――あんにゃろ……!
ジェノは回復よりも、ホットの排除を優先する。まだ七部隊が生き残る混戦の中――二人はほぼ同時にトリガーを絞った。




