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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第41話『見抜け!エステート・ミステリー!!』

残る任務は『鍵の型を取る』のみという状況で、実行犯二人に対し、探偵は一人。探偵側が劣勢だったが、もさ彦は所謂ガン待ちの構えで管理室に出入りする者を丹念に観察していた。


「めっちゃ難しい!おい鍵触るな!茶会の参加者も部屋入ってくるのおかしいだろ!」


「――もさ彦さん」


「は!?」


タンドリーはあえて正体を明かし、自首という名の囮を引き受けた。


「隠れるゲームなのに、りょくおーさんの銃を避けてすみませんでした」


「いやそれは俺じゃなくてりょくおーに……」


――タンドリーさん声イケボすぎるやろ!?なんか急に汗かいてきた!


「もっさー何照れてんの?」


「だ、だって近いし声、っておいそこぉ!」


「アァーー!」


「お前もじゃコルァ!」


『バチバチバチッ!』


もさ彦が動揺している隙に、らむらすが鍵の型を取る――はずだった。しかし現実はそう甘くない。最後の探偵によって、二人はまとめて確保されたのだった。


「絶対もっさんが誤射してくれるって思ってたのにー」


「惜しかったな……」


「ガン待ち戦法エグすぎだろ」


三回戦は役割を交換して始まった。しかし七人プレイの場合、探偵陣営の定員は三名までである。そのため、テディは引き続き実行犯側に残ることになった。


らむらすとホットとタンドリー人は平静を装う必要から解放された代わりに、怪しい人物を見逃さぬよう観察して疑う立場に立たされる。


「俺らを見つけられんのか?」

「あいつらすぐ騙されるに違ぇねぇや」

「へっへっへ……楽勝だぜ」

「遊び半分でやっちゃおー」


「おいおいおいおいおいおいー!」

「こらこらこらこらこらこらー!」

「俺の味方知能低いな」


探偵の恰好に着替えたホットは、これから始まる心理戦の緊張に身を強張らせる。


――探偵めっちゃムズそう……でもバチ当てできたら最高に気持ちいよな!


華やかなお茶会の裏で行われる静かな追跡劇(三回目)が今、始まる。


「あー目撃者出始めんねや。早よ逃げな」


従者の姿に変装したりょくおーが『密書を回収』すると、らむらすが丁度こちらに向かって来ていた。


――今ここで聞き込みされるとワンチャン俺ってバレるかもな……。


「こせゆ隊とテディどこ?呼ぶから返事してー」


「「はーい」」


「意味ねぇ……」


ところが彼は思い直したように方向を変え、りょくおーとの距離を自ら広げてしまった。


――お、今度はタンドリー。


「……こいつか?」


「!」


りょくおーは、タンドリーに対して『素直で堅そうなタイプ』だという印象を抱いていた。そこで彼は、あえて今回の試合では任務に含まれていない『銅像に爆弾を仕掛ける』という行動に出る。そうすることで、タンドリーに『これはNPC』だと思い込ませる――つまりマークから外れようとしたのだ。


「違う、か……?全っ然分かんねぇ……!」


警戒対象から外れるための一手が見事刺さり、タンドリーは銃を下げて進行方向を変えた。


――これプロちょろいわ!やっぱこういう人狼系……推理モノは苦手みたいやな!


「はっはっはっはっは!タンドリー分からんか!」

「探偵ムズいよな。分かる分かる。それは探偵が悪いわ」

「俺ら探偵も実行犯もプロなんで。お疲れっす」

「ほらほら。撃たないと勝てないよー?」


実行犯の四人がこぞって探偵たちを煽ったその時。


「じゃあ俺は撃つ!」


『バチバチィッ!』


「ブェー!!」


「何だと!?」


ホットが任務中のりょくおーを行動不能にした。


「ば、馬鹿な……どうして!」


「俺のモデルはダックスフンド……狩猟犬だぜ!」


「おい探偵側に犬おる!?」


「ホットヤビュ……ヤバイ!」


「めっちゃ噛むやん」


「俺こっち(探偵)の方が好きかも!」


「ホットよくやった!」


「ナイス」


ここでホットが予想だにしない才能を発揮する。彼の業運は、このゲームでも猛威を振るった。


――俺はどっちでも無理だな……全然見分けつかねぇ。


タンドリーは銃を上げては下げ、一向に怪しい人物を絞れずにいた。


「!?」


だが次の瞬間、視界の端に変装時特有のエフェクトが走る。タンドリーが反射的にそちらへ向かうと――


「怪盗かよ!」


「タンドリーどうした!?」


――同じドレスを着た令嬢が二人、戸惑ったように顔を見合わせていた。


「ふふふふ!」


「俺の近くで実行犯の誰かが同じNPCに変装した!」


「マジ?」


「笑ってるってことはまくれなだな」


「これ……どっちが本物だ!?」


「タンドリーさん!こっちが僕です!」


「右か左で」


「じゃ間をとって上!」


「タンドリー。早よそいつ撃ち殺せ」


「こんなクッソしょーもねぇ奴味方にいらんわ」


「こせゆ隊が辛辣だよ!」


「ヴェ゙ェ゙……僕の味方はテディだけやぁ……!」


「泣き方気持ち悪っ」


らむらすがそうツッコむ中、二人の令嬢はぴったりと身を寄せ合って歩き出す。どうやらまくれなは勝敗より場の面白さを取ったようだ。


――舐めてんな……って言うとこだけど、ちゃんとコラボ実況のこと考えてんだな。


「違う!僕はそっちじゃない!誰か助けてぇー!」


「タンドリーどこ?俺もそっち行く!」


「いや……俺が責任持って当てる!」


「助けて!ヤメテッ!」


前を歩く令嬢か、その後ろにいる令嬢か――タンドリーは冷静に思考を巡らせ、魂が入っている令嬢が背後に回り、NPCの行動を真似ている可能性の方が高いと判断した。


「はは!本当じゃん!タンドリーが双子の令嬢の後ろ歩いてるわ」


「らむらすはどっちだと思う」


「そりゃあ……いや、お前の判断に委ねるぜ」


「じゃあ見ててくれ……いくぞ!」


「助けてぇーー!」


「まくれな逃げろ!」


タンドリーが後ろを歩く令嬢に向かってテーザー銃を撃つと――


「あははは!っしゃー!」


――視界は暗転し、耳に残ったのは――彼の中性的な高笑いだった。


「タンドリー!?」


「やられちゃったね……まくれなナイス!」


タンドリーは天界カメラに切り替え、らむらすの視点を映し出す。そこには、まくれなを追う彼の姿があった。


「は!?このメス……令嬢紛らわしすぎるだろ!」


「嘘だろ!?ついて来てた方がNPCだったのマジ?」


「こ、この犯罪者!」


「無実の人間に何てことするんや!」


「タンドリーの意思は俺が継ぐ!これでまくれなも確保して実質無罪。五・七・五でquod erat demonstrandum」


「は?」


「出た!探偵らむらすの証明終了(Q.E.D.)!」


「テディまで何を言うてんの」


「五・七・五……?」


「Q.E.D.のとこだけエコーかけんな」


「僕こんな頭おかしい奴にやられるの嫌ヨォーッ!」


一部始終を見ていたらむらすによってまくれなが取り押さえられ、残る実行犯はテディともさ彦の二人。そして未達成の任務は――


「もう残り任務五つ!?」


――三分の一まで減っていた。


「クンクン……んー。このおじさん怪しんだよな」


「嗅ぐな嗅ぐな。もうええんちゃう?」


「いやでも。俺が尾行し始めてからずっと庭園をグルグル移動してばっかだし」


「もうええやろ。早よ別んとこ行きや?」


「もさ彦さんの声震えてるし……」


「ちょ、やめよーや。な?」


――ホットの嗅覚エグ!何で分かる!?


無関係なNPCに張り付くホットを、すぐ傍にいるもさ彦がアテレコする――その状況こそ、彼にとっては非常に美味しい展開のはずだった。しかし業運を宿した狩猟犬の前では、その算段もあえなく崩れ去ってしまう。


――これは……任務やっても目撃情報で速攻撃たれるな。


「もっさん……」


「俺もう撃たれるかもしれへん!さよなら!」


それを目視したテディが、どう助け舟を出すべきか考えていると――もさ彦は覚悟を決めて走り出した。


「うぉぉぉー!逃げろー!」


「もさ彦さーん!待ってー!」


ホットともさ彦の鬼ごっこがスタートする一方で――


「ア゙ッ!!」


「はい馬鹿ー!」


――らむらすが無関係の庭師に向かって発砲してしまった。


「はぁ!?コイツ違うのかよ!」


「らむさん残念!」


「焦っちゃったかー」


残る探偵はホットのみ。彼としてはさっさともさ彦を確保してテディを見つけていきたいところだったが……。


「いやーホットさん、今度一緒にサトナしません?」


「え!いいんですか!喜んで!」


後輩という立場上、もさ彦の露骨な時間稼ぎを無視するわけにもいかなかった。


「僕も有料会員のブログ読んでるんですよ」


「マジ!?」


「「絶対嘘 (やろ)」」


「え」


『――バチバチバチッ!』


「ギャッ!お前等どっちの味方やねん!」


りょくおーとまくれなのツッコミが引き金となり、ホットの右手は意思とは無関係に動いてしまった。


「どーせ有料会員に入ってそれで満足しとるだけやろ」


「ホットさんコイツ裏で『これプロぶっ潰す!』的なこと言ってました」


「オォィ!言ってねぇ!おいやんのか?開戦したろか?」


「ま、待って!折角のコラボなんですから俺らと合戦しましょう!」


「何でだよ。誹謗中傷合戦?」


「泥仕合だろ」


「はいはいはい!もう僕らの勝ちで終わるからねー」


「あーっ!」


先輩実況者たちが口論に夢中になっている間にテディが最後の任務を達成し、実行犯側の勝利が決まった。あまりにも実況動画らしい幕切れに、視聴者は思わず笑いながら高評価を押した――らしい。

りょくおー「タンドリーの『ナイス』さ、あれちょっとカッコつけすぎやわ」

まくれな「ブフォ……あーね」

もさ彦「イケボだからって何でも許されると思ったらアカン」

タンドリー「キャラ作ってるとかじゃないですけど……おいそこの3人。声を押し殺して笑うな」

らむらす「逆にどんな感じで言ったらいいの」

りょくおー「もっと『んナイスゥゥゥーー!イェイイェイェイェーーイ!』って感じで言わな」

ホット「んぐふぅっ!」

タンドリー「もし俺が急にそんなこと言い出したら……迷わず通報してください」

もさ彦「あ、気ぃ狂っとんのは確定なんか」

テディ「あははっ……はぁ、はぁ……!あはははは!」

らむらす「テディとホット笑いすぎだろ」

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