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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第27話『年齢設定の心得』

「あぁ……初めまして。タンドリーです」


「シェン・ロンだ。舐めた口聞いたらお前の実家……『ヨリドリカレー』をネットでバズらせて名店にしてやる。毎日一時間待ちの行列ができるくらいにな……」


「なっ……!おい卑怯だぞ!基本親二人でやってる店でそんなの回る訳ねーだろ!」


「忙しすぎて逆に地獄を見せるパターン……シェン怖っ」


たった一言でタンドリーを黙らせ、シェンは満足そうに紫煙をくゆらせる。


その後四位で終えたランクマッチを抜けると、話題はゲーム実況の準備へと移った。


「――飲み物を零したとかモニター倒したとか……配信・撮影外での不注意による故障は個人負担。言うてケースバイケースで、弟がうっかり壊したとかじゃったら酌量してやる」


「だってさ」


「その現場を見た俺がうっかり弟を壊したら?」


「個人負担じゃボケ」


「お兄ちゃん沸点低っ!」


タンドリーは三つ下の弟のことを少し持て余している。良くも悪くも自由奔放で行動が読めず、呆れることが多い。そのため、あまり関わらないようにしていた。


カジュアルマッチでのんびりプレイしている最中、タンドリーはシェンに聞きたいことを思い出す。


――気になるのは機材と……。


「シェンの声もボイチェンすか?」


「地声。タンドリー専用のボイチェンデータあと少しで完成するけぇ待って」


「……ホットが敦斗って分かっても慣れないな。口調か?」


「母ちゃんにもボイチェンしてる感ないって言われた。ベースが同じ身体の延長線上だから?」


「性別変えるとか渋声の大人がショタ声出すとか――身体構造に逆らった変換じゃなきゃ基本バレん」


中学生男子が自分の声を大人の声にボイスチェンジする場合、極端な違和感は出にくい。ただし注意すべき点もいくつかある。


「声変わり前の中坊が気をつける点は五つ。ホット答えろ」


「息遣い・滑舌・間・感情表現・抑揚!」


「よし。ただホットの場合『癒し系子犬ホスト』ってキャラで定着させとる。素が出ても浮かないようにな」


「早く大人になりてーよ……」


「それな……」


――多少の違和感が出ても許容される保険か……。


声の高さだけを下げるだけでは成立しない。話し方や言葉選びまで大人寄りに寄せないと、ふとした瞬間に年齢差が滲み出てしまうのだ。感情が高ぶった時や咄嗟の相づちでは素の少年らしさが混じりやすく、そこをどう抑えるかが課題になる。


「タンドリーは貫禄が高校生じゃけぇ特別にキャラ固めんでも大丈夫。普段通りのテンションでツッコんでけ」


「分かる。ホント落ち着いてるよね。俺と同じくらい」


「ほざくな一人っ子。客商売しとるけぇ物腰が自然と安定したんじゃろ」


「……っすね」


――俺いつから『しっかりしてる』って言われだした……?


また、落ち着いた声質に引きずられて語彙や態度が不自然に背伸びしすぎると、かえって作り物めいた印象を与えてしまう。無理のない範囲での演じ分けが求められるのだ。


「俺も最初は結構言われたけど撮影で慣れた。てかタンドリーの声マイクのせい? なんか反響してるように聞こえる」


「あー。安物のイヤホンマイクだから……?」


「あと壁じゃな。ホットの部屋より薄い」


実際の原因は単純だった。マイク自体が安価なものだったことに加え、防音や吸音が施されていない、ごく普通の一軒家の部屋だったのだ。そのため声を拾う度に反射音が混じり、結果として反響しているように聞こえてしまう。


――まあそうだよな。たまに一階の笑い声とかも聞こえるし。


「ホットは実家暮らしって言ってんの」


「いや。明言してないけど独り暮らし感は出してる……俺ん家の壁しっかりしすぎてて全然バレてない」


「住環境の差きちぃな……吸音材も経費で落ちますか?」


「好きなだけ貼りゃえーが。あと敬語いらん」


「ありがとうございます」


☆彡

そして宿泊研修の前日。テディとホットは新しくやるゲームの解説動画を撮影していた。


今回のゲームは『バレットターンズ』――ラウンド制で戦う一対一のローグライト・シューティングゲームである。


ゲーム自体はシンプルな銃の撃ち合い。だが各ラウンドで敗北したプレイヤーはランダムな能力を獲得し、自身の武器である銃を大幅に強化できる。弾速や反動、分裂、跳弾といった要素が積み重なっていくので、一方的な連勝にはなりにくい。


初期装備の弾数も六発と限りがあり、リロードや能力によって増減する。


敵を二回倒すごとに一勝となり、敗北者には新たな能力が与えられる。ステージは回ごとに変化し、先に五勝した方が勝者となる。


「それがバレットターンズ……今回は全能力を種類別レア度順に紹介していくよ!」


「えっ……全能力?」


「七十種類!こんな風に最初と負ける度、場に五枚の能力カードが表示されるから……出現率の低い高レア能力はホットのミラクルに任せた!」


「ま、任せぃ!」


テディのカードは『スピードバレット』『ブーストダッシュ』『リバウンドショット』『ヒールゾーン』『パワーアップ』と低・中レアだった。


それに対し、ホットのカードは『ハイパーフォワード』『ヴェノムショット』『フロストバレット』『クロノスボム』『ガーディアンシールド』と最後のカードだけ高レア能力だった。


「俺のカード名前だけじゃ何の能力か全然分かんない……!テディのはフィーリングで当たりつくのに」


「でも景気良いよ。『ガーディアンシールド』は一発撃つごとに被弾ダメージを一回無効化する能力だから。単純に無敵だね」


ただし効果は蓄積されず、連射しても無効化できるのは次の一被弾分のみである。


「テディしれっと『リバウンド(跳弾)ショット』選んでんのエグ。まぁ最初は普通にやるか!」


「いいよ」


高低差のある足場と、上下に動くリフトが配置されたステージでラウンド1が始まった。


――俺は弾切れの隙を突かれなきゃ負けないはず……!


左右に配置された二人は即座に高所を目指して駆け上がる。ホットは能力を発動させるため、ひたすら弾を撃ち続けた。


「相手のライフを銃撃でゼロにするか、足場から落とせば勝利だよ!落下負けがないステージもあるけど、ほとんどのステージはこれみたいな感じで落ちると負けちゃうから気をつけて」


「ヤバ弾切れっ……!うあぁー!」


テディが説明している間に『リバウンドショット』――弾が壁に当たると跳ね返る能力がホットを襲う。これでは弾は連射に近く、一回分のシールドではとても守り切れなかった。


「あははは!幸先は良いけど相性が悪すぎたね」


「でも弾速遅いわ。地形によっては全然躱せる!」


しかし射撃の腕が桁違いに強いテディ相手では、ホットは赤子同然だった。


「はーい。ここカットなんだからサクッと次引いてねー」


「くっそぉ……このゲーム最初が一番弱いのに」


第1ラウンドに敗北したホットが次に引いたカードも『アイスブレイク』『コロッサス』『チェーンソー』『スペクトラルフレア』『カオスブロッサム』と、名前だけでは一目でどんな能力か分からないものばかりだった。


「えー『チェーンソー』は被弾すると短時間チェーンソーの刃が出現し、敵に近づくと与えるダメージが倍になる能力……近接特化ですねー」


「これで勝てないのはバグでしょ!」


早速高レア能力を二つも手に入れたホットは、跳弾をものともせずテディと追いつめていく。


「やばいやばいチェーンソー音怖っ!」


「ほらテディー。チェーンソーの威力試さないとー」


「くぅ……流石に高レア能力二つ持ちの相手は無理だ!」


加えてステージは足場同士の距離が広く、跳弾を狙いにくい地形だった。テディは撮影の為と諦めてチェーンソーの餌食となる。


ラウンドを進めていくうちに、テディは跳弾・跳弾強化・HP増加・敵の引き寄せの能力を重ね、ホットは一回無敵・チェーンソー・リロード時間短縮・弾速上昇・敵の移動速度低下と五つの能力を手にした。


「ほらほら!もう遠くに行けないよー?」


「そっちこそ!壁登るの遅くなってるねー?」


テディはホットに近づこうとすると移動速度が低下し、チェーンソーで多段ダメージを喰らう。その上二回に一回は攻撃を無効化するという苦しい状況だった。


しかしそれは相手も同じである。ホットは常にテディの射程圏内から逃げられず、強化された跳弾を避けなければならない。おまけに攻撃を重ねても、こちらより多いHPを削り切るのは容易ではなかった。


「弾速も上がってるの地味にキツいよー!やっぱ低レア能力でも十分刺さります!強いです!」


「ヤバいもう体力ない!!そらっ当たれーー!」


試合が進むほど戦況はカオスになり、先の展開は予測不能になっていく。


その後も能力紹介に加え、ステージ攻略法や最強コンボ、これプロテクニックなど――二人は様々な角度から撮影を続けるのだった。

後日、これプロチャンネルに投稿されたバレットターンズ動画を見たらむらすとりょくおー。

らむらす「バレットターンズ超やりたい」

りょくおー「あれMOD入れたら4人でやれるみたいやで」

らむらす「アッツ。テディともう1人呼んでやろ」

りょくおー「あ、俺もう既にカウントされとるんや」

らむらす「……もういいっ!」

りょくおー「アハハハハハハ!冗談ですやん!メンヘラんな!」

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