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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

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 第25話『友達なら』

爆裂イケメンの敦斗と学級委員長の糸哉は、クラスで目立ちがちな存在である。だからこそ、人付き合いを避けたがる幸樹が今後も親しくしてくれるのか――それは二人にはまだ分からないことだった。


――でも良かった……幸樹にとって僕とホットは『合格』みたい。僕だけとかだったら二人の時に言うもんね!


「幸樹今日いけるの?やろやろ!」


――えー凄い嬉しい!正直ちょっと不安だったんだよな……。距離感ミスりたくなかったから。でも今日って……。


敦斗がアイコンタクトで『今日撮影だよね?』と合図を送るが、糸哉はそれを無視して集合時間を決める。しかも指定された時刻は、動画撮影の時間とまったく同じだった。


「……!!」


――え。今日やるゲーム面白そうだったからやるの楽しみだったのに……。


敦斗はその瞬間、糸哉が撮影よりも友達とのゲームを優先したのだと悟る。


「……テディ。もう話さない?俺、これ以上あの事を幸樹に隠したくない……」


様々な感情が積み重なり、一度は呑み込んだ本音が――ついに口をついて出てしまった。


「敦斗……」


――確かに。もう僕らが『諸君!これがプロである!!』のテディとホットって言った方がいいか……。


「……『あの事』?」


――何だ?確かに時々二人だけの世界っつーか、独特な空気を感じることはあったけど……。


幸樹は自転車を引いて並んで歩く二人に目をやり、反射的に教室で聞いた話を思い出す。そして一つの仮説に至った。


「あぁ……その程度で態度変える奴等と一緒にすんな。二人が何で気にしてるのか知らねーけど。まだ中学生だからか?別に珍しくもないだろ」


「こ、幸樹……!もしかして気づいてたの?」


「お前らが普段あれだけ絡んでたら嫌でも察するだろ」


「マジかぁ……まー僕もタンドリーにならバレてもいっかってなってた時あったかも」


「まず一個だけ聞かせてくれ――」


幸樹はいつも通りのテンションで一言。


「――どっちが彼女なんだ?」


「いや俺たち恋人じゃないから!」


「実は僕が右で……っておいっ!一億歩譲って僕らが付き合ってるとしたら、小椿さんの件(偽装カップル)はどう説明するのさ」


「それは……」


――確かに変だな。でも敦斗も糸哉も割と面倒な変人臭ぇし。


「タンドリー今僕たちのこと変な人見る目で見た?」


「たまたま教室で女子の会話が聞こえたんだよ。糸哉と敦斗どっちが攻めか受けかとか……」


幸樹が誤魔化すように教室での出来事を話すと、糸哉と敦斗の顔色がさっと変わった。


「幸樹ごめんホントに……女子に悪気は多分ないから……多分。(幸樹が標的にされても)怒らないであげて……」


「もう来たんだ……早いな……」


――誰かは後でじっくり聞くとして……。


早くも自分のクラスに腐女子がいることが判明し、糸哉は人物の特定を明日やることリストに入れる。してこのまま誤解されたままではいけないと、幸樹の勘違いを改めて訂正することにした。


「テディ早く早く!」


「まっ、待って……何でまだ、そんなスタミナあるの……」


こうして三人はそれぞれの家に戻り、ボイスチャットアプリ『スカイコード』で再集合した。


「幸樹……いや、タンドリーお待たせ」


「いぇーい。タンドリー聞こえてるー?テディだよー」


「……!?」


――誰!?あとこの声どっかで……。


いくらPC越しとはいえ、幸樹のヘッドホンから聞こえてくる二人の声は――どう考えても別人のものだった。


「スカイコードのニックネームでも分かる通り……僕とホットは『諸君!これがプロである!!』っていう名前でゲーム実況やってるんだ」


「は?いやお前はそのままだろ」


「実は俺もデビューしたの今年の三月からで……あ!タンドリーこれプロはレゾクラの動画で見たことあるって言ってたよね?なら俺たちのスキンとネームタグ見れば……」


「ホット賢い!すぐサーバー立てるね!」


「は?おい……!」


――これプロ?ホットにテディ……?そういえばこの前の忍兵鬼ごっこにそんな感じの奴がコラボ?でいた気が……。


幸樹は敦斗よりも早くからネットの世界に触れてはいたが、Nico・Tubeの利用目的は好きなゲームのプレイ動画や料理動画の視聴に限られていた。


ゲーム実況者そのものへの理解や関心は薄く、レゾクラやFPSのカスタムマッチといった視聴者参加型企画に参加して遊ぶことを重視している。


そのため、企画が動画として投稿され自分の姿が映っていたとしても――わざわざ視聴することはほとんどない。幸樹にとって重要なのは実況者本人やチャンネルではなく、あくまで企画に参加して楽しむという体験そのものだった。


そんな彼なので、糸哉と敦斗が『諸君!これがプロである!!』のテディとホットでも――


「そうか」


「えー!?」


――全く動じなかった。寧ろ幸樹のレゾクラIDを見た敦斗の方が興奮していた。


「……『inducks(インダックス)_tory(トリー)』さん!?俺です!俺この前の忍兵鬼ごっこで助けてもらったホット・ドッグです!」


「誰だよ」


「へ!?二戦目の地下牢アスレ一緒にクリアしたじゃん!その後もからくり兵士が来るの教えてくれたり……!」


「そんな奴いっぱいいる」


「こ、この浮気鳥!」


「かなり前からレゾクラ企画に参加してる古参視聴者の一人で、アスレがプロ並みに上手い勢だってらむらすが言ってたけど」


「このID従兄の兄貴からもらったんだよ。その流れで俺もらむらすリスナーになっただけ」


幸樹はレゾクラをウィンドウモードにし、Nico・Tubeを開いた。これプロの動画を辿っていくうちに、いくつか見覚えのあるサムネイルが目に留まる。


――これ……立ち回りプロすぎて何回も見たやつだ。こいつらの動画だったのか。


「今チャンネル見てるけど。これプロってそういうことか」


「あ、僕らのチャンネルで大事なのはゲームの腕じゃなくて実況というか。あくまで視聴者さんがプロ並みにゲームが上手くなることを目指してるというか……」


――タンドリーに『俺なんかじゃこのチャンネルに相応しくない』って思われるのだけは避けたい!ややこしいけど曲解しないで!


糸哉が念を送っていることなど知る由もなく、幸樹は納得した様子で画面をレゾクラへと切り替えた。


「……おい何で俺を祀ってんだ」


「あっ戻ってきた」


幸樹がほんの少し目を離したその隙に、足元の景色は地面から鳥居の上へとすり替わっていた。糸哉と敦斗は阿吽の呼吸で建てた赤い鳥居の下に並び、マイク越しに揃って柏手を打つ。


「まるで家族のような職場!上下関係がなく、フラットな関係性!仕事も遊びも本気のこれプロチャンネルは現在アクションゲームが上手いメンバー募集中!」


「胡散臭いテンプレ詠唱すんな。俺が社畜になるだろ」


「は、入ってくれなきゃ浴びるまでコーラ飲んだあと泣き寝入りするぞ!」


「勝手におねしょしとけ」


「タンドリーがこれプロに入る確率は2.8%……鶴と亀の足の総数は……」


「このポンコツデータキャラが!つるかめ算で確率は求めらんねーよ」


「ツッコミタンドリーが空いてる日一時間だけでもいいから一緒に実況やってくれますよーに!」


「最初からそう言え」


「えっ」


てっきりツッコミが来るものだと思っていた敦斗は、予想に反して普通の返事が返ってきたことに面食らう。幸樹は鳥居から降りて二人の前に立った。


「いちいち回りくどい。普通断らねーだろ……友達からの誘いなら」


「タ……タンドリー!」


「チキン……!」


「そこは本名で呼べよ。三日ぶりの飯を前にした中学生か」


「スキンが凛々しいアヒルだからイマイチ締まんないね」


「黙れホットドックの悪魔。食って存在消すぞ」


こうして三人目のメンバーが参加を承諾した翌日。糸哉と敦斗は幸樹の報告に目と耳を疑った。


「コーキをこんな素敵なグループに誘ってくれてありがとう……!」


「コーキが友達とあんな楽しそうにしてるのなんて何年ぶりか……。もうママかっ、感激しちゃって……!」


「……一旦家で話すか」


幸樹は糸哉たちとゲームを終えた後、リビングでくつろいでいた両親に『諸君!これがプロである!!』チャンネルのことを相談する。そして、自分も彼等と一緒にゲーム実況をやってみたいと打ち明けたのだった。


「コーキは昔から料理にしか興味のない子で……。ゲームも息抜き程度にはやっていたようですが、ずうっと一人で。店を手伝ってくれるのは凄く有難かったけどね。親としてはやはり心配してたんです」


「イトヤ君にアツト君。コーキと友達になってくれてありがとう……え?反対?しないしない!むしろ背中を押したいくらい!コーキがやりたいって思ったことを尊重しないと」


敦斗のときと同じく、最大の難関である親からあっさりと了承を得て――


「ご、後日あらためてチャンネル管理者と伺い、保護者同意書へのご署名をお願いに参ります……」


――糸哉の中にあった常識が崩れかけていた。

幸樹母「イトヤ君ってそんな有名人だったの!?た、楽しみねコーキ……!」

幸樹父「俺が思ってたやりがいは得られないかもな。けど、ここまで大きなチャンネルなら安心して預けられそうだ。うーん」

幸樹「本音は?」

父・母「「月いくらもらえるんだろう」」

幸樹「……テディから広告単価聞いとく」

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