第19話『脱出せよ!忍兵鬼ごっこ!! 後編』
城郭説明(全てからくり兵士から逃げつつ行う)
1階……木箱から5本の鍵を探して2階に続く扉を開ける。
2階……1階と同じ。だが走ると通路の両壁から矢が発射される。
3階……ふすまで区切られた部屋から1本の鍵を探して開ける。偽の鍵を取った瞬間、捕縛罠が作動するので要注意。(罠だけの部屋も有り)
4階……宝物庫から宝を回収。誰か1人でも回収した瞬間、からくり兵士が強化される。
地下牢には三種類のアスレチックが存在する。最初は虚空に浮かぶ鉄の棒を渡って進む、シンプルだが精密操作が求められるアスレチックだ。
足場は小さく、距離もシビアに設定されているため、ジャンプの勢い・角度・着地位置を正確にコントロールする必要がある。
一度落下すると最初からやり直しのため、慎重さと安定した操作が重要になる。
――これは普通に行けるんだよな……。
ホットが悩むのは高度なジャンプテクニックを必要とする区画だった。二段積みの石壁は上から越えられない。横方向へ跳び越え、そのまま足を止めずに三段ジャンプで3メートル先の飛び石へ飛び移る必要がある。
――横方向のジャンプはミラクルで成功したけど……。
だがその先にある飛び石までは届かず、彼は何度も同じ落下を味わっていた。
――しかもその先に見える最後のアスレも超ムズそうだし!
最後は時間制限や動く床などのギミックを使ったアスレチック。
踏むと壊れる床や周期的に動くピストン床が配置されており、立ち止まると進めなくなる場面が多い。一方で無理に急ぎすぎると操作ミスを起こしやすく、冷静な状況判断が求められる。
アクション性が高く、テンポよく進むことが攻略の鍵となるが――ホットはその入口にすら辿り着けていなかった。
「いや分かる。このアスレほんまムズい」
「フー!イズイット?」
『RAMURASUは地下牢に送られた』
「え?今『誰が作ったんだよ』って言った?」
「ハハハハ!無理矢理くっつけんな!」
「ッアハハ!ジャイケルマクソンもういいから」
タイミングよく製作者のらむらすが現れたことで状況が大きく変わる。ホットは彼のアドバイスを受けどうにか城内へ復帰することができた。
「ホットってレゾクラ何年?」
「えーっと……一年?」
「え!」
「は!?」
「ヤバ!」
「あはは……」
――ホントは十ヶ月くらいだけど。
こせゆ隊も古参のレゾクラ実況者であるため、ホットの歴の浅さには大きな驚きを見せた。
「レゾクラも僕がこれプロに誘ってからインストールさせたから……。ホット全然まだ初心者なんだよね」
「でも結構いけてたよ。初心者にしては」
「ホントですか?でももう捕まりたくないな」
三階は襖が幾重にも重なる迷いの階。沢山ある部屋から正解となる一本の鍵を探し出し、扉を開けなければならない。だが偽の鍵を取った瞬間、地下牢送りの罠が作動するため注意が必要だ。なお、中には鍵が存在せず罠のみが仕掛けられた部屋もある。
――テディと合流しよう。
ホットが既に安全が証明された部屋に入る一方、テディが配信コメントをチラ見すると『ホットさんおかえり!』『待ってレゾクラ歴一年は聞いてない』『もう捕まるなよ!』など、比較的ホットを応援する内容で埋まっていた。
――けど……。
テディの高い動体視力が捕らえた『これプロなんだから次はすぐ帰って来て』『そもそも捕まるなよ。テディは今んとこ生きてるぞ(安定)』というコメントが心に残る。
準備期間の半年、テディはホットとの撮影を最小限に抑え、レゾクラやサトナといったPCゲームの技術向上に時間を費やしていた。
――僕の予想通りホットのポテンシャルは半端ない。それでも視聴者諸君は……。
『諸君!これがプロである!!』というチャンネル名とテディのゲームスキルの高さにつられた視聴者は少なくない。ホットが彼等の期待と今後どう向き合っていくかは、ひとえにテディの配慮にかかっていた。
――まぁ人生初プレイだから視聴者も大目に見てくれるか。ホットに意識が向かないように僕が目立たないと……。
「テディ止まって!」
「え!?」
テディが新たな部屋に足を踏み入れようとしたその時。追いついたホットが声をあげた。
「らむらすが兵士連れて来てる!」
「テディー!お返しじゃぁー!」
「何してんのー!?」
――あーもう配信中にそんなこと考えるもんじゃないな!
横の襖が開き、らむらすとからくり兵士が部屋になだれ込む。テディとホットは慌てて踵を返し、行き先も考えずに逃げ惑った。
「やべっ走っちゃった!グエー」
「に、二階下りたら目の前でらむらすが弓矢の餌食に……」
製作者であるにもかかわらず初心者並の戦犯をやらかすらむらす。
「ギィィィィィィィィィッ!!」
「うるっせぇ……」
捕まるとマンドレイクのように叫ぶりょくおー。
「ぐぁっ……がはっ!」
「え?死んだ?」
兵士から逃げるだけで吐血するまくれな。
「ナイス四階空いた!あ、まくれなさんお先どうぞ」
「あぁども……うわぁぁぁぁー!?」
「えーー!?床が急に抜けた!?まくれなさーん!」
「あ、ちょっと前に確率で三階に落ちる仕様になりました。でもめっちゃレアだよ」
「ホットォーー!何でお前だけ落ちてへんねん!」
「すいませーん!」
毎試合10%の確率で宝物庫の床が抜け、三階に落とされるというギミックを引き当てるホット。
「よくもまくれなを……!図ったな!これがこれプロのやり方かぁー!」
「りょくおーこっちこっち。僕が引き付けるからその隙に宝取って」
「これプロだぁい好き!」
「おい!」
積極的にコラボ配信を意識して立ち回るテディ。
状況は混沌を極めながらも、物語は終盤へ差しかかっていた。
「えっこっち来ないで!?嫌だ怖い!」
「おいホット!俺のリスナーだぞ!」
「ごめんっ」
「うぉーコイツ足早っ!キモッ!」
「えっ」
「いやお前も言うんかい!ホット引いとるで!」
宝物庫が解放され、鬼の移動速度が強化された現在。四階にらむらすとりょくおーとホット、三階にテディとまくれながいた。宝を携えているのは、爆速で一階へと向かうテディとまくれなだけである。
「クソ指つった……俺もう駄目かも」
「諦めんな!諦めたらそこでホットリミットですよ!」
「らむらすぅぅ!?それ俺の有料ブログ!」
突然のネタに吹き出した三人は平静を失い、そのままからくり兵士に捕まってしまった。
「…」
――これさ、残り時間的に脱出すんの間に合わないんじゃ……。
ホットが軽く絶望している中、らむらすはやれやれと息を吐いた。
「もうやってられるか!俺は観戦側に回るぞ!」
「えーっ!?ズルい!」
「炎上しろ!」
らむらすは管理者権限を使って離脱し、残されたホットとりょくおーは無言でアスレチックに挑戦する。そしてテディとまくれなが脱出してすぐ、地下牢組は同じ部屋に復帰した。
「ッスーー」
「りょくおーさん……これ……」
残り時間は三十秒。一階にいる二人にとって、速度を上げたからくり兵士を躱しながら四階にある宝を抱えて降りることはほぼ不可能に近かった。ひとまず四階を目指そうとしたその時、空からエコーのかかった声が降り注ぐ。
「諦めたらそこでエクスタシートーナメントですよ……」
「マジでホットどんなブログ書いてん。ちょ後で有料会員のリンク貼って?」
「いやっ……ハイ。それでらむらすは何」
「地下に行くのです……」
「え?」
――もう諦めろってこと?
「……ハッ!」
らむらすの天の声がトマトとなり、りょくおーの脳内にある豆電球が灯る。彼は慌てて手を振ってホットを一階の書庫に誘導した。
「宝が無くても脱出できるルートが一個だけあんねん!」
「ええっ!?」
りょくおーが書庫の壁にあるボタンを押すと、地下に通ずる隠し扉が開く。この脱出方法は残り時間六十秒を切った時に開放される隠しルートだった。
「なら最初からこの道を使えば……」
「いや甘いわ。確かにここ通ったらまくれなとテディに会える。けど途中で水の中を潜っていかなあかん……。ほんで98%の確率で息が足りんくて気絶するらしい」
「成功率は2%かー」
「さっきの運をもう一度起こすのです……」
「りょくおー!ホットさん!僕ら信じてますよ!」
ホットは瞬きの間に覚悟を決める。
――『ホット』は……テディが出来ないようなこれプロを魅せられるだろ!テディにはムーンウォークしたってなれないけど!!
「い……行ったらぁ!」
「よし行くぞぉ!待ってろまくれなテディ!」
ホットとりょくおーは己の運を信じ、勢いのまま水中に潜り込む。二人は並んで泳いでいたが――
『Ryokuoは隠し通路からの脱出に失敗した』
「……!?」
――参加者のログに紛れたそれを目にした瞬間、ホットは脱出者用の待機エリア内にある池に浮上した。
『Hot_KPは隠し通路からの脱出に成功した』
「ぶはっ……何か俺も息止めてた」
「はぁ!?ほんまに!?うおぉーすっげぇ!」
「ホットさん!やったー!」
「ホット嘘だろ!?」
「2パー引くとか本当に……ミラクル恐るべしだなぁ」
そしてゲームが終了し、配信コメントとチャットログには労いと賞賛の言葉が流れ続けた。
「りょくおも惜しかったなー」
「マジそれ。結局俺だけ脱出でき……ってらむたお前!」
「アハハそうじゃん!らむさんも次はクリアしましょ?」
「凄い楽しかった……」
「ね」
――次はちゃんと正規ルートでクリアしたいな。
ホットは次の試合に向けて目標を立てたが、果たして達成されるのか――感想戦に続く。
地下牢のアスレ上手い順
らむらす=りょくおー(よく捕まるので慣れてる)<まくれな(僅差)<ホット(伸びしろ有)<テディ(捕まったことないからやったことない)




