↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学二年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
229/234

 第211話『部活動も楽じゃない!!撃退編』

「イヤァァァァァッ!!」

「うおぉぉぉぉ!!」

「ヤバイヤバイ終わった終わった……!」


六人は一か所に固まり、身を寄せ合ったまま動けなくなってしまう。


「……」

「……?」


やがて、音が途絶えて静けさが戻る。恐る恐る顔を上げた六人が、ようやく緊張を解こうとしたその時。


『『バンッ!!』』


「「ギャーーーーッ!!」」


二か所ある出入り口から、ほぼ同時に爆音が響いた。


それは美術室を占領され続けた鬱憤と怒りが、そのまま爆発したような一撃だった。


「扉蹴るのは聞いてない……!」


「うるさい。早く退散するよ」


遥と部長は中にいる六人がいつでも出られるように鍵を開ると、一目散にその場を後にした。


そして一分後。


「うえぇぇぇぇ……」

「もう無理もう無理……」

「グスッ……ズズッ……」

「ヤバすぎ……」

「もぉ何か気分悪い……」

「眩暈ヤバ……」


不良グループ六人組は、もつれ合うようにして廊下側の出口から脱出する。美術室から遥の痕跡が消えていることにも気づかずに――荷物を引っ掴んだ六人は、逃げるように校舎を飛び出していった。


「……やったかな」


「副部長それフラグ」


「あたしだったらもう近寄らないけど……どうだろ」


遥たち三年美術部員は無人となった美術準備室で、仕掛けに使った道具を手分けして回収していた。


布を引き上げるための糸に、演劇部から借りた小型スポットライト。不気味な足音を流したスピーカーに、一部始終を撮影したスマートフォン――。


「撮れてる?」


「バッチリ」


彼女たちは片付けそっちのけで、不良グループの絶叫シーンを撮影した動画の確認に夢中になっていた。


「えっ片付け……」


その様子を横目に、遥は自分が描いた作品の前に立つ。


――でも、本当にこの方法で良かったのかな……。


筋肉がぶくぶくに膨れ上がり、目が半分飛び出した生首をキャンバスいっぱいに描き込んだ一枚――『不良グループ追い出し作戦』のために、土日と昼休みを費やして完成させた力作である。


――これで解決するといいんだけど。


時は遡り、不良グループが美術室を占領し始めてから一週間が経過した頃。


大人しい性格の女子が集まる美術部といえど、最高学年である三年生たちにはそれなりの責任感が芽生えていた。


『新入生も入部してきた以上、この状況を見過ごすのは嫌だ……皆はどう思う?』


『そりゃ何とかしたいよ。でも先生に言っても駄目なんでしょ?』


『チクったら報復来るかな……』


『AIに聞いても、すぐ他の先生に相談しろの一択だよ……。そりゃそうなんだけどさ』


『遥!学年一位の頭脳で何かいい案出して!』


『へ。まだ三年になってから一位取ったことな……あ、ハイ。今その話関係ないですよね。うーんそうだな……』


――とにかく、あの一年生たちが美術室に寄りつかないように……。


誰もが頭を抱える中、遥はとある策を思いついた。そしてやや言いづらそうに口を開く。


『ちょっと……いや大分陰湿な方法でよければ、美術部っぽい撃退方法が思いついた』


『聞こうか』


遥がひねり出した案。それは『怖い絵を効果的に披露して、不良グループに恐怖のトラウマを植えつける』という、実に破天荒で美術部らしい作戦だった。


『勿論、懸念はあるんですけど……。逆上した一年生が報復に出るかもとか、そもそもヤンキーがホラーを怖がるのかとか……』


『グロ怖い絵かぁ……でもこういう目的があるなら楽しく描けそう』


『やれそうなら新入部員と一緒に描く?』


『描いた絵は文化祭のお化け屋敷やるクラスに提供すればいいし』


『一年の不良共の泣きっ面見てぇー。演出方法は演劇部の友達に相談したらイケそう』


遥は先にリスクを提示したが、三年女子たちには思いのほか好印象だった。


『駄目元でも……遥の案やってみよう。どうせ絵を描くんだから』


『『おっけー』』


――マジか……採用されちゃったよ。


彼は標的の動向を見張る役を任され、美術室に残ることになる。他の部員たちは早速、恐怖を演出するための絵の制作に取りかかった。


――本当は先生も交えて直談判するのが一番いいんだけど……。


遥には、まだ説得によって解決したいという気持ちが残っていた。


――あの不良たちと同じクラスだっていう子も、先生に相談したところでほぼ確実に逆効果になるって言ってたし……。まぁこれが失敗したら先生に言うけど。


そうして遥は枝垂桜(しだれざくら)の絵を後回しにして、例の『筋肉がぶくぶくに膨れ上がり、目が半分飛び出した生首』を描き上げたのだった。


『――これで部長が外から糸を引くと……』


『おおー!布が全部落ちた!』


『リハーサル要員で演劇部の子が標的役やってくれるって』


『もう皆ノリノリじゃん……テンションが完全に文化祭……』


作戦の舞台である美術準備室では、部長たちがうきうきと仕掛けを整えていた。呆れ顔の遥がぼそりとコメントすると、全員の視線が一斉に集まる。


『誰が美術室に落ちた菓子クズ掃除してんだよって!』


『誰が部活に関係ないゴミまとめて捨ててんだよって!』


『こっちが陰キャしかいないからって調子に乗りやがって!』


『腹立って当然ですよねその気持ち凄い分かりますごめんなさい』


どうやらこの作戦には美術室を占領されたことだけでなく、積み重なった細かな鬱憤も込められているらしい。


こうして――最高学年としての意地と恨みを乗せた撃退作戦は見事に成功し、不良グループ六人組は強烈な恐怖を味わうこととなった。


「――僕はまだ全然ビビってるけどね?」


「一週間経った今でも?」


「流石にもう大丈夫じゃない?」


「あの後すぐ学年主任と校長にも、たむろしてる写真見せてチクったし」


「ならあの撃退作戦は完全に意趣返しじゃ……また何かあったら絶対に教えて」


「平気平気。もうすっかり平和な部活動そのものよ」


「一応ビビり動画も握ってるし」


「それ弱みになるの?」


「まぁほぼ記念やね。よっぽどプライドの高いヤツじゃないと、交渉材料としては弱いかなー」


「…」


――うーん。


遥はもう大丈夫だと楽観的に笑う同級生たちを、どこか不安そうに見つめていた。


――もしあのグループが部員の誰かに何かしてきたら……その時はシェンさんに頭を下げよう。


遥は、この件が綺麗に収束してくれることを心の底から願った。


情報の神が、彼等の真の弱みを握って潰しにかかる前に――。



おまけ『中学校生活も楽じゃない!!翠羽編』


「――はい。それじゃあ今配った『日本の気候・自然災害』のプリントを班で協力して進めてみてください」


――はぁ……。


社会の授業。翠羽は憂鬱な気分を抱えながら、机を動かして班の形に並べた。


「「…」」


――あーあ。嫌だなぁ……。


彼女は、社会の授業そのものが嫌なのではない。


「「…」」


翠羽は改めて自分の班に視線を向け、気まずそうに目を伏せた。


――私の班の人たち喋らなすぎる……!


大舞学園中学では三年間クラス替えが行われないため、全員が顔見知りになってから既に一年以上が経っている。


それにもかかわらず――翠羽の班は不運にも、互いにそれほど親しくない生徒ばかりが同じ班になってしまった。さらに全員が内気な性格のため、班活動では毎回誰も仕切らずに沈黙が流れ続ける。


――絶対この後答え合わせで順番に当てられるのに!誰かがやるだろって待ってる雰囲気もキツい……これならまだ仲良くない子とペアワークする方がマシだよ……。


翠羽は互いに役目を押しつけ合う独特な空気を前に耐え切れず、これまで何度も班の舵(かじ)取りを担ってきた。


無論、誰かに頼まれたからではない。ただ誰も動こうとしない状況を前にすると、どうしても自分が何とかしなければと思ってしまうのだ。


――損な性格ってこういうのを言うのかな……。


「つらい!」


「お疲れ」


「結局今日も私が代表して言った……問五の答え……」


班活動のたびに居心地の悪さを感じている翠羽は、授業が終わると決まって友人である草重(くさしげ)の席へ避難していた。


「何か私がやらなきゃって思っちゃって……。他の皆も絶対『小椿さんがやってくれるから任せればいいや』って思ってる……」


「翠(すい)ちゃんも人前で話すの得意じゃないのにね」


「たまには誰かやってよー!はぁ……」


――勝手に不公平だって不満感じちゃってる……私が一人で勝手に……。


「発表を誰かに任せてる人代表として、翠ちゃんに言いたいことがある」


「音緒(ねお)ちゃん……」


草重もまた大人しい女子であることに甘えて、発表の役目はいつも活発な生徒に任せている側の人間だった。


「いつもホンマごめん。でもこれからも任せた」


「私もそっち側行きたいー!」


とはいえ翠羽の悩みは、結局のところ班員たちに直接伝えなければ解決しない問題だった。


――嫌だしどうにかしたいけど……そんなこと言えないよー!


結局、意見を押し通せない翠羽は――次の席替えまで発表役を請け負い続けることになるのだった。

プリント中のやり取り。

幸樹「おい日新。机動かした後に寝直すな」

日新「ちょっと時差ボケでぇ……俺と服部の間に時差があって……」

幸樹「お前どこの国にいんだよ」

日新「えーーと台湾」

幸樹「一時間しか変わんねーじゃねーか。ボケてんのはお前の頭だ」

残りの班員「「あはははは!」」

翠羽(後ろの班めっちゃ盛り上がってる……いーな……)


敦斗「あ、テディ。この問四テストに出そうな気配がする」

糸哉「お、じゃあ絶対覚えておかないとね。『地震・津波・洪水・土砂災害などが発生したときに、どの地域が危険なのかを地図上に色分けして示したもの』を何て言う?」

敦斗「バイオ……」

糸哉「うんもう違うね」

本多(ほんだ)「犬飼君アレだよ。パンク……」

糸哉「の方でもないよ本多さん」

翠羽(敦斗君と熊本君の班もちゃんと話し合いながらプリント進めてる……いいなぁ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。