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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学二年生編

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 第178話『前途有望なランナーたち』

「一階の定食屋みたいなとこに、これプロメンバーのプロフィールが壁に貼られてた気が……」


「うっわマジか……!多分それだわ!クッソ一階かよ……!」


さがんも当然、その場所の存在は把握していた。ただ出入り口が一つしかなく、遮蔽物に乏しいため視界が開けている。追跡者から逃げるには不向きな場所――それが、彼の抱いていた印象だった。


――定食屋ってアレかぁ……!弱いポジってとこしか見てなかった。


追跡者から逃げることを最優先に考えていたがゆえに、店内の内装にまで目を向けていなかったのである。


「ま、今から行っても間に合わんし。ゆっくりしようや」


「いやぁ……もっと早く会ってれば!でも流石zen9さんっすね!」


「クッ、お前……手の平ドリルヤバい」


zen9が見え透いた世辞を受け流そうとしたその時。


「……!来る来る!」


「えっ来てんの!?」


短くそう言い放ったさがんは、笑みを消して走り出した。状況を察したzen9もすぐに三階の奥へと駆け込む。


「見ーつけた……視界に入ったのはzen9さんだー」


そして階段を上がってきたユイガが二人の姿を捉えた。彼は瞳を鋭く光らせ、二人が逃げた展望デッキ目指して走る。


「……ユイガ!追うなら俺を狙え!」


「えっ……」


「おーい!こっちこっち!」


「っえ……何か凄いトコいるんだけど!」


屋外に出た瞬間、頭上から降ってきた声にユイガが驚いて目を見開く。見上げると、そこには屋根の上に立つさがんの姿があった。


彼はニヤリと笑うと、そのままフェンスの上へ飛び移る。


「……!」


――多分あの傘から……。


さがんの移動ルートを即座に見抜いたユイガは、すぐさまアスレチックを開始する。テラス席からマーケットパラソルに飛び、数秒とかからずに先程までさがんがいた場所へ到達した。


「ヘイヘイ!チェイス始めようぜ!」


「受けて立つ……!」


さがんが駐機場エリアへ飛び降りる。それを追ってユイガも屋根からフェンスへ飛び移る――が。


「…」


飛距離が足りなかったのか『ズルズルズル……』とフェンスに身体を擦りつける形で、そのまま展望デッキの人工芝に着地してしまった。


「はうっ……えっメッチャ恥ずかし……うぅー!」


「……何してんだお前」


「にゃーっ!」


羞恥に耐えきれない声を上げながら、ユイガは再びテラス席の上に乗る。すると背後からタンドリーの呆れた声が飛んできた。


「エグイって……怖すぎ」


――早く逃げよ……。


未だ三階のラウンジに潜んでいたzen9は追跡者二人の姿を確認し、呼吸を殺してその場を後にした。幸い、二人はそれに気づかないまま会話を続ける。


「目(さがん)さんがフェンスの上に乗って下に逃げてったから、俺も追いかけようとしただけだけど?」


「さがんさんのこと目さんって呼ぶな。それと俺、お前が失敗したとこまで見てたからな」


「グギィ……俺、今から屋根からフェンスまで飛ぶ練習するから。タンドリー他のとこ捜索して」


「コツ教えてやろうか?」


「いらない!」


ムキになって言い返すユイガに、タンドリーはフッと笑みを零す。


「そうか」


それ以上は何も言わず、三階の捜索をユイガに任せることにした。


☆彡

ミッション④終了まで、残り八十秒。


「チ……逃したか」


ネリスが目指す駐車場エリアでは、テトヴィ・ライクロフトを捕まえ損ねたナキがいた。


移動速度上昇の効果が切れ、追跡を諦めたナキは別方向へ歩き出す。その途中、ふと手にしていた警棒へ目を向けた。


「……そういや、この警棒って追跡者殴ったらどうなんだ?」


その疑問が浮かんだ矢先、空港から出てきたホットの姿を見つけた。


「お!丁度いいとこに!」


走って追いかけることのできないナキは、警棒を振って自らの存在をアピールする。


「……あれ?なにー?」


四方八方へ警戒の目を向けていたホットも、すぐにそれに気づいた。二人は歩いて近づき、互いの声が聞こえる距離まで接近する。


「や。ちょっと試したいことがあってよぉ……」


「え……のわっ!?」


言葉を濁すナキから不穏な気配を感じ取ったホットは、振り下ろされた警棒を紙一重で躱した。


「オイ避けんな!実験だっつってんだろ!止まれ!」


「嫌だよ!万が一牢屋に転送されたらどうすんの!?これ生放送!」


「そうなったらそうなったで逆に面白ぇぞ!」


「じゃあ俺がナキをやってやる……!」


蜂から逃げ回るだけではいられない。ダックスフンドは意を決して振り返り、警棒を握った。


「オラくたばれ!」


「お前が倒れろっ!」


そして二人は至近距離で警棒をぶつけ合い、まさかのチャンバラを始める。


「オラァッ!」


「うっ!」


仲間割れじみたその戯れの中で、先に一撃を入れたのはナキだった。


「…」


「……あ、何ともないんだ……」


「何だよ。しっかり対策されてんのな」


「ホント良かった……」


警棒を追跡者に当てても、牢屋へ転送されるのはランナーだけである。その事実が判明し、ホットは心底安心したが――


「まぁ、ナキの言う通り牢屋に転送されたらめっちゃ面白かったけど」


「だろ?テディ驚くぜ」


――ほんの少しだけ残念そうでもあった。


「……何をやっているんだアイツらは」


そんな二人のチャンバラを木陰から目撃したネリスは、呆れながらも別のルートから向かった。そして――残り十五秒。


「十七、十六……あ、来た来た来た!皆ネリス長官来たよ!」


「「やったー!」」


「……!」


彼女は焦りで声も出せなくなったが、それでも何とかオープニングステージへ到着する。


「ハァ……間に合った」


「超ギリ……!まさにヒーローの推参!ネリス長官の到着に牢屋は大興奮しております!」


「テディ……ここで一人選べばいいんだな?」


「お決まりですか?どうぞ!」


テディの朗(ほが)らかな音声を聞きながら、ネリスは一人の姿を思い浮かべる。そして、迷いなく口を開いた。


「予想通りかもしれないが、長官が復活させたいヤツは決まっている……イッサ」


「……!」


祈るように目を閉じていたイッサが、ハッと目を見開く。ネリスはカメラへ背を向けると、去り際に一言だけ告げた。


「長官と互いの視聴者の期待を背負うんだ。次は簡単に捕まるなよ」


「ネ、ネリスお姉様ぁ……!」


「オッケーです!それでは……復活チケット一枚を消費してイッサちゃんを復活させます!」


「頑張れよー!」

「行けー!」

「あ、もう終わりかぁ……」

「ぐわー!しょうがねぇなぁ」


こうしてミッション④が終了する。


「ミッション④結果……森野キティとネリス・ヴォーンの活躍により、エルミラ・フェアリウムとイッサ・ヂーチンが復活」


「残るランナーは十四人……ナイス!」


クイズに挑んだが惜しくも失敗し、通知に名前を残すことができなかったさがんとらむらすも、二人の復活を喜んだ。


「復活したのは二人か……ふふ」


残り時間は四十八分。プライベートジェットを封鎖したキジーは、モニターに映る結果を静かに受け止めると――早くも次なるミッションの準備へ取り掛かった。


☆彡

「ちょっと誰か……誰かいませんか!?」


空港エリア二階。復活したばかりで心細さがピークに達したエルミラは、少しでも早く他のランナーと合流しようと辺りを見回していた。


その近くでは――


「恐怖値がヤバい……怖……!」


――感覚を研ぎ澄ませながら慎重に移動する塩練メアリの姿があった。


「「あっ……!」」


互いの姿を捉えた瞬間、二人は安堵したように駆け寄る。


「よかった……!」


「エミィさん。復活おめでとうございます!」


二人はようやくの合流を喜んだが、それも長くは続かず――


「…」


――追跡者のナキが同じフロアに侵入した。


「……!いるいるいる!」


「え?いる?本当に?」


「ガチでいます!」


メアリがいち早く気づき、その言葉にエルミラの表情が強張る。


「……!」


――二人……さてどっちを狙うか。


ナキがランナーの存在を視界に入れてすぐ、二人は瞬時に別方向へ散開した。入り組んだ施設内の構造を巧みに利用し、彼の追跡を振り切っていく。


「……ランナーの逃走スキルも上がってんな」


二人の姿を完全に見失ったナキは、深追いを諦めて再び索敵を開始した。


「えーん、折角合流できたのにー」


「すぐバイバイしちゃった……これ私から電話した方がいいかな」


メアリが携帯電話を取り出したその時。


「――早すぎ早すぎ!バケモンじゃん!」


「大した事ないですよ!犬が追いかけてると思えば!」


「警察犬ってか……!?くそっ、タダでは捕まるか!」


「えっ殴っ……!?痛い痛い!流石、最後のロクラメンは違うな……!」


別方向から、ホットに追われるえんりがメアリの方へ接近してきた。


「……!」


その様子を目撃したメアリは、一刻も早く逃れようと階段へ急ぐ。


「煙幕がなくとも、時にはこちらから攻める姿勢を示すことが有効な手段になると……。勉強になります」


携帯電話をしまったメアリは、後ろ髪を引かれる思いでエルミラがいるであろう空港エリアを後にした。


「やはりあそこは危険ですね……惜しいですが移動します」

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