第176話『難易度高め!?これプロクイズ!!』
「……えーー!?らむさん!?」
「あのクソ鳥……!」
転移先を確認したらむらすは、開口一番キジーへの悪態を吐く。そして戸惑い気味に目を瞬かせる神流へ、かいつまんで事情を話した。
「これプロクイズって……うわアタシあんま自信ない。らむさんはどうだったんですか?」
「タンドリーの好きな女性のタイプ外してここにTPされた」
「えっっ!?」
――ドリーの好きなタイプ……!?普通に知りたすぎる!
「そ、それ……どんな選択肢があったんですか?」
神流は興味を隠しきれずにいながらも、必死に平静を取り繕って尋ねる。
――やっぱ喰いついてきた……。目の色変わってんじゃん。
しかしらむらすにはバレバレだった。
「カンちゃんと重ねて『同い年の微乳』でファイナルアンサーしてさ」
「…」
「駄目だっ……グヘァ!」
次の瞬間、らむらすは神流にタコ殴りにされた。身から出た錆である。
立て続けに二人が復活チケット獲得に失敗する中――
「断末魔聞こえた……絶対近くいるって……!」
――りょくおーは空港エリア二階にあるモノレール特急券の券売機の裏に隠れていた。
彼は必死に気配を消して、近づいてくる二人の声に耳を傾ける。
「――におんさんごめんなさい!俺、皆の前で一発芸なんてやりたくない!」
「俺だって病気の弟のために逃走成功させないとで!」
「あれ?この前コラボした時は『病弱な妹がこの配信観てる』って……」
「……ウチ三人兄妹だから!体が弱い弟と妹がいる(ってことになってる)んですー!」
ホットがロクラメンのにおんを追跡している最中、券売機の横を素通りして駆け抜けていく。その少し後、確保情報の通知が流れた。
「っはぁ……耐えたぁ……」
それを聞いたりょくおーは、自分がまだ無事だったことにひとまず安堵する。
「――油断すんのはまだ早ぇっすよ」
「!?」
ホッと肩の力を抜いたのも束の間、この局面で最も聞きたくなかった声が飛んできた。
「りょくおーさんが隠れてるとこ、後ろガラス窓でしょ?あそこ外から丸見えっす」
「それはちゃいますやん!」
観念したりょくおーは、渋々ナキの前へ姿を現す。
「ね、ナキ。今度一緒にメテブラとウェルテックスしよ?」
「あざっす!このゲーム始まってから色んな人に誘ってもらえてマジ嬉しいっす!」
「じゃあ後で連絡するねー」
「はい!じゃ……サヨナラ」
「嫌だーっ!五万!五万払うからぁぁぁぁっ!」
「危ねぇ……桁が違ったら揺らぐとこだったぜ」
ナキは警棒を腰に収め、ふうっと息を吐く。一度上がった追跡者のギアはまだまだ止まらない。
「おでんの玉子ください~。おつゆ多めで~」
「え?」
「あっ」
におんを確保したホットは、そこからぐるりと半周する。正面入口とは反対側にある別の階段を下り、一階のコンビニへ入ったところで歌観月天と鉢合わせた。
「ホットステイ!待てっ!」
「えー。何かご褒美くれるんですか?」
「あーっ。うーん……それはね?無いけど……」
「では!歌観月さんの『負けました』まで――三、二、一……どうぞ!」
「……ま」
「ま?」
「負けてたまるかーーーっ!」
「おっと!テディが怒る前に牢屋に返さなきゃヤバイ!」
ホットが矢継ぎ早にランナーを捕まえていく中、駐車場エリアでも別の場所から悲鳴が上がる。
「アーッ!捕まっちゃうー!」
「いや無理無理無理無理……っ!ホント無理ッ!」
「このままだとモコさんの方捕まえますけど。いいですかそれで」
タンドリーは、モコ・ルブランと曙ひかりを同時に発見していた。並んで逃げる二人に対し、どちらを追うか一応確認を取る。
「いや!ひかりが捕まるんで、モコさんは見逃してあげてください!」
すると、心優しいひかりの理性がすぐさま顔を出した。
「駄目だよ!ひかりんが逃げて!」
「タンドリーさんお願いです!ひかりから先に捕まえてください!ホラ止まりますんで!」
「……!」
――自ら身代わりに……上下関係で何かあるのか?
タンドリーは有言実行でその場に立ち止まったひかりに驚く。基本的に人を信用しない彼は、彼女を動かしたのは純粋な友情ではなく力関係だったのではと察した。
「嫌嫌嫌!モコを置いて行かないで!タンドリーさん、モコからやってください!」
「何言ってんの!早く逃げて!」
女性同士の熱い友情に、コメント欄は尊さと同情の声で盛り上がるが――
「じゃあモコさんから」
「ぬぁーーっ!」
「ええーっ!」
――骨の髄まで冷酷なタンドリーは、情け容赦なくモコに警棒を当てた。
「アンタ今の会話見て何とも思わんかったんか!?人……じゃなかった!この鳥でなし!」
「鳥に温情を求める方が悪い。早く逃げないとロックオンするぞ」
「は、薄情者ー!うぇぇんモコさぁぁぁぁん!」
こうしてひかりは悪魔という名のタンドリーから逃れたが――残された彼女に逃げ場は用意されていなかった。
「……何か俺ブイチューバーばっか見つけてんだけど」
「っ!?うわぁーっ!またぁ!?」
空港エリアと駐車場エリアの間にある道を走っていたところを、今度はユイガに視認されてしまう。
「では曙ひかりさん。先日発売された『妹系稲作娘でろ甘おねだりボイス』のアピールをどうぞ」
「いっやあぁぁぁっ!あぁぁぁぁ!違うんですぅぅぅ!やめてぇぇぇぇぇ!」
一難去ってまた一難。ひかりは逃げる猶予すら与えられず、ユイガの餌食となった。
ミッション④終了まで残り八分。この短時間で五人が相次いで確保され、残るランナーは十二名となった。
「あっ……あはははっ!絶対アレだー!」
ここで、三毛猫の耳をぴこぴこと揺らしながら森野キティがキジーの元へやってくる。
「いらっしゃい!かくかくしかじかで……どのジャンルにしますか?」
「はーい!同じ子猫同士の縁で……ユイガさんを選びます!」
――きっとシンパシー感じるハズ……!絶対正解するぞ!
同じ猫族という親近感を頼りに、キティはユイガに関するクイズへ挑むこととなった。
「では三択クイズです。次のうち、ユイガが選んだ罰ゲームはどれでしょう?※実際にやるかどうかは別。①虫料理フルコース完食、②一人で凸待ち配信、③十五キロ走る」
②の凸待ち配信とは――配信者がライブ配信中に他の配信者、または視聴者からの通話がかかってくるのを待つスタイルの生配信のことである。
「えぇ……」
キティは絶妙な三択に目を丸くし、まずは特に気になる選択肢から触れていくことにする。
「ユイガさんとは『BRO・AD』で、ちょっとだけお話しする機会があったんですよー」
「あぁー。一日観光で、最後はマフィアの単発戦闘員になってましたね」
森野キティは『BRO・AD』で『ギルティーポップ』というマフィアに所属していた。一方のユイガはボスである深°の勧誘を受け、ほんの短い間だけ構成員としての立場に身を置いていたのである。
「話した感じ、キティと同じで超絶人見知り陰キャと見た……!だから②は絶対、何が何でも選ばないと予想!」
「えー森野キティさん。この後ハコビネコ・ユイガさんへの謝罪が決定いたしました」
「キャハハッ!いやっ……!キティも一緒だから!」
笑顔でフォローを入れながら、キティは①と③の間で悩み始める。
「……いや!もう早くやっちゃおう!答えは①です!」
「お。理由をお尋ねしても?」
「はい。忘れもしない、ユイガさんとのファーストコンタクト……『森野さんって昆虫食の人ですよね?』からの『俺も昔、幼虫とか食べてました』……これ!」
「ブフォッ!え?」
正面でキジーが盛大に吹き出す中、キティは得意げに胸を張る。
「なんとキティ、この問題の正解を知っていたのだったー!」
「な、なんだってー!?」
昆虫食好きのキティと、幼い頃に様々な虫の幼虫を食べ比べていたユイガ。二人の初会話は切り抜き動画になるほどプチ話題となり、初対面から一気に意気投合したエピソードとしても知られていた。
「猫同士の食の共通点が虫て……せめて魚であってほしかった」
「ユイガさんと一緒に昆虫食のお店に行きたかったんですけど、リアルで会うと焼け爛れるから無理って断られちゃった……」
「俺もそれ見ましたよ。飲んでたビール吹いてマウスパッドに零したんでよく覚えてます」
雑談に花が咲きかけるも、残された時間は少ない。キティは意を決して①を指差した。
「ファイナルアンサーで!」
「森野さん……」
ここでもキジーは安定の溜めを披露した。
らむらす「カンちゃんって何歳?」
神流「えっ?カンナはぁー。ハタチです♡」
らむらす「ほなちゃうか……」
神流「ドウイウ意味ダ(拳グッ)」
らむらす「違う違う!タンドリーは二十歳じゃないだろうなって!流石にもうちょい上だろうなって!」
神流「ならば良し。でも確かに、アタシ目線だと年上感あるかも……」




