第175話『ミッション④牢屋にいる仲間を復活させよ!!』
「……えっ!?テディ俺もう復活できないの!?」
「残念ながら……」
「うそーん!」
テディと確保者がバルチャーを慰めている間にも――全ミッションコンプリートを目指すらむらすとさがんは、駐機場エリアを目指して果敢に足を進めていた。
「プライベートジェット……っぶふっ……!」
最初に見つけたさがんは特徴的なデザインに吹き出す。機体は全体的にキジをモチーフにした配色で彩られ、側面には『KIZY AIRLINES』のロゴが貼られていた。
「フッ……中も外も無駄に凝るな」
「結構よくない?これ今回の目玉オブジェクト」
「確かに完成度高いけど……早くアレ!復活のアレくれ!」
「あぁ……お探しのモノはこれかい?」
キジーは芝居がかった仕草で、右手に復活チケットを持った。彼が指を鳴らすと、さがんの目の前に突如として回答席が出現する。
「え?」
「復活チケットが欲しくば、これから私が出すクイズに答えていただきます。見事正解できたらチケットを贈呈しましょう」
「クイズゥ!?ジャンルは?」
さがんが目を剥くと、キジーは『いい質問です』と言わんばかりに一冊の本を開く。
「今回の企画のタイトルは『BROレゾクラ~ラン・フロム・ザ・KP~』。という訳でジャンルは――これプロのテディ、ホット、タンドリー、ユイガ、ナキ。この五人からお選びいただけます!」
「ぐわぁ……マジか」
さがんは口を動かしながら、落ち着きなく回答席の周辺をウロウロと歩き回った。
――五人とも付き合いはあるけど……クイズってなると話違ってくるな。
「最近ユイガとは裏でFPSやってるし、この前はナキとも四時間くらい格ゲー配信やったけど……」
「いいですねぇ」
やがて覚悟を決めた彼は回答席へ腰を下ろす。
「やっぱここは、一番付き合い長いテディっしょ!テディで!」
「はいっ!ではジャンル『テディ』で――第一問!」
キジーが高らかに宣言した直後『デデン!』と、ご丁寧にもクイズ番組さながらのSEが鳴った。
「三択クイズです。次のうち、テディが苦手とすることはどれでしょう。①編集すること。②スマートフォンの保護フィルムを貼ること。③歌を歌うこと」
「うーわー!絶妙!」
さがんはキーボードとマウスから手を離して腕を組む。どれもテディなら難なくこなしそうでいて――同時に、どれも普通に苦手そうだという印象を抱いた。
「毎日投稿なんて頭おかしいことやってるクセに、編集は永遠に苦手とか言いそう……」
「即答しないってことは、僕あの話さがんにしたこと無いんだ……それか忘れてるか?」
「俺は聞いたよ。えっと――だろ?」
「俺も聞いてる。でもあれ?この話題になった時さがんもいた気が……」
「うーん。僕もその三人とのサトナ配信でした記憶あるんだよね……ギバとファイブiの二人が覚えてるってことは忘れてるだけかぁ」
会話を聞いているテディの言葉は、さがんには聞こえていない。彼はそれを知らぬまま一つずつ吟味していく。
「スマホの保護フィルム貼るの得意なヤツなんて存在すんの?俺も無理なんだけど。歌は……確かにアイツの歌声って聞いたことないな。あーでも、大分前にどっかで『歌える歌が少ない』みたいなこと言ってた気が……。いやっ、でもあれは単純に流行に乗り遅れてるジジイってだけか」
「うるさいよ」
モニタリング中のテディが棘のある笑顔でツッコんだ。
「さぁ!それでは回答をお願いします!」
「えー待って!えーとえーと……」
さがんは①と②の間で何度も視線を往復させる。
「んーー②番!」
「②スマートフォンの保護フィルムを貼ること。で、ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー!」
――もう勘だ……!頼む、当たってくれ!
祈るさがんをよそに、キジーは焦らすように溜める。
「さがんさん……先程、テディとはそこそこ付き合いが長いとおっしゃいましたね」
「……そうっすね。もう三年……四年くらい?」
「……まだまだ知り足りないようですね!残念!」
「ぐわぁっ!クソォ……!」
「ちなみに、正解は……」
キジーはそこで一度言葉を切り、ニヤリと笑った。
「このマップ内にあります!探してきてください!」
「え?」
さがんが聞き返すより早く――彼は現在地とは真逆に位置する駐車場エリアへと強制的にテレポートされてしまった。
「……はぁ!?オイ!外すとこんなとこに戻されんの!?ッチ……!すげー遠回りだってぇ!」
慌てて駐機場エリアに戻ろうとしたその時。視界の向こうを、一人の追跡者が横切った。
「……っ!」
さがんは即座に木の陰へ飛び込び、息を潜める。
「ヤバイヤバイ……」
追跡者が十分に離れたのを確認してから、慎重に移動を再開した。
「てか最後キジー何か言ってたよな……」
ひとまず空港エリアへ入ることを決め、警戒しながら辺りの様子を窺う。
「『答えはこのマップにある』って……どっかにテディのプロフィールカードでも落ちてんの?」
一方その頃。キジーのプライベートジェットには、早くも次のランナーが訪れていた。
「で、何?お前ボコしたらチケットもらえるの?」
「蛮族か!このあからさまに『ザ・回答席』って感じのが見えるでしょ!?クイズだよクイズ!」
「よーし。かかってこいよ」
「本当、思想が物騒なんだから……」
キジーは今にも暴力へ訴えそうならむらすに恐怖する。説明を受けた彼は悩んだ後、タンドリーを選択した。
「やっぱね?俺はタンドリーで、タンドリーは俺みたいなとこあるから」
「ちょっと何言ってるのかよく分かりませんが……ではジャンル『タンドリー』で――第一問!」
『デデン!』とご丁寧にクイズ番組さながらのSEが流れ、キジーは問題文を読み上げる。
「三択クイズです。次のうち、タンドリーの好きな異性のタイプはどれでしょう?①年上の巨乳、②年下の貧乳、③同い年の微乳」
「アヒャヒャヒャ!」
「ッフフフフフ!」
問題文を聞いた瞬間、らむらすとテディは爆笑を堪えきれなかった。
「えっ待って。お前これ聞いたの?」
「えぇ事前に!『この中で答えを作るとしたら、どれですかー?』って」
「最高の問題来たな……!なぁちょっとタンドリー呼ぼうぜ!」
「フッフッフ……!ゲーム終わったら引き渡しますので」
「いやぁ……ぶっちゃけ真の答えは『どうでもいい』なんだよな。アイツ裏でも性欲薄いキャラ徹底してるから」
「ちょ、それ以上は」
話の流れが配信的にまずい方向へ向かいかけたのを察知し、キジーは即座にストップをかける。
「タンドリー絶対困ってただろ。もう目に浮かぶもん」
「本人は『年齢も容姿もマジでどうでもいいけど、強いて言うなら』を前置きしておりました」
「ははははは!じゃあもう実質答え無しじゃん!」
「いえっ。お答えください!」
「うわぁどれだ……!?」
らむらすは腕を組み、短い時間で真剣に考え込む。
「アイツ年下はガキにしか見えなくて無理とか言いそう。だから②は最初に省くとして……」
「後々ここの切り抜きを見た時のタンドリーの反応が楽しみでなりません」
「年上か同い年……てかアイツいくつだよ!これ初めて話すんだけど、俺がこっそり何回も聞いてんのに全然教えてくれないんだよ!どう思う!?」
「らむらすは言ったの」
「言った言った。お前言うなよ?」
「くはっ……!はいはい」
今度はらむらすが釘を刺す。キジーは自分と違って年齢を非公開にしている友人に配慮し、そのプライバシーを守った。
「これプロはこっそりでも年齢非公開を徹底してるからなぁ」
「えっでもテディは八十歳じゃん」
「いやまぁ……僕はね」
隣にいたノックスにネタの年齢を暴露されたテディは苦笑いを浮かべる。そして頭の片隅では、他のメンバーにもネタの年齢を設けることを検討していた。
「待って?カンちゃんって何歳?」
「ん?」
突然、らむらすが何かに気づいたように室内を動き回る。
「この中だったら、まぁ③か……」
「えーらむらすさん。この後、寺岸神流さんへ謝罪することが決定いたしました」
「タンドリーとカンちゃん同い年説……あるな!」
キジーの言葉を完全に無視し、らむらすは自分の推理を進める。その流れのまま、勢いに乗って回答を決めた。
「③同い年の微乳でファイナルアンサー?」
「ファイナルタンドリー!アイツのことを一番知ってるのは俺だ!」
「らむらすさん……」
キジーはここでも安定の溜めを披露する。
「いや、らむらす……寺岸さんに謝って来い!残念!」
「え゙ぇ゙ーーっ!」
「答えはこのマップ内にあります!探してきてください!」
「はっ!?」
次の瞬間、彼は現在地から神流がいる空港エリア三階へと強制的にテレポートされてしまった。




