第167話『BROレゾクラ~ラン・フロム・ザ・KP~』
長編『BROレゾクラ~ラン・フロム・ザ・KP~編』スタートします(全17話)
『BROレゾクラ~ラン・フロム・ザ・KP~』――ゲーミングコミュニティ『BRONZE ATTIC』通称BROが主催する、レゾクラ系実況者・配信者が集うオンラインイベントである。競技タイトルには『レゾンクラフト』を使用し、ルールはケイドロ形式が採用されている。
「ルールはシンプル!百四十分以内に三十三名の参加者を捕まえて牢屋にブチ込むだけ!今回、主催者さんからのご厚意で僕らが『追跡者』役に抜擢されましたー」
「そ、れって……実質俺たちが主役!?」
「悪い方のな」
「ちょー楽しそうなんだけど……!」
「三日後かよ……!クソ。早く日曜来ねぇかな!」
事前に配布された『BROレゾクラ~ラン・フロム・ザ・KP~』の概要は以下の通り。
舞台はこれプロ村に存在する中規模空港。
参加者は総勢三十三名。プレイヤーはランナーと追跡者の二陣営に分かれ、制限時間内に勝利を目指す。
◆ランナー(三十三名)
目的……制限時間いっぱいまでエリア内を逃げ切ること。
追跡者に捕まらないよう逃走・潜伏を続けるほか、ゲーム中には複数のミッションが発生する。ミッションへの参加は任意で、成功すればランナーに有利な展開となるものもあれば、失敗すると不利な状況を招くものも存在する。
◆追跡者(四名+増援一名)
目的……ランナーをできるだけ多く捕まえ、牢屋へ送ること。
ゲーム開始時に解放される追跡者は四名。基本は徒歩でエリアを巡回するが、ランナーを視界に捉えると走って追跡を開始する。視界から外れると追跡を打ち切り、再び巡回状態へ戻る。
ゲーム中のミッション結果によっては、新たな追跡者が解放されることもある。
◆牢屋
追跡者に捕まったランナーは、鉄格子で囲まれたアミューズメントエリアへ強制移送される。
牢屋内では生存中のランナーをモニターで観戦できるほか、ミニゲームやテニス・バレーボールなどの施設も利用可能。脱落後も配信を楽しめるよう工夫された待機エリアとなっている。
◆勝利条件
・ランナー……制限時間終了まで追跡者に捕まらなければ勝利。
・追跡者……制限時間内に全ランナーを確保できれば勝利。
今回のランナーは――らむらす、けや、サムろう、りょくおー、まくれな、もさ彦、ヒルト、えんり、ばたえる、ノックス、ろきはん、におん、さがん、ギバ、ファイブi、歌観月天、寺岸神流、万世かくり、イッサ・ヂーチン、ネリス・ヴォーン、モコ・ルブラン、エルミラ・フェアリウム、森野キティ、塩練メアリ、テトヴィ・ライクロフト、佐々來深°、鬼形ラセツ、曙ひかり、ワカオミ、バルチャー、布施、zen9、がるど。計三十三名が参加している。
☆彡
「――いやーありがとね今日ね。(ガサガサ)追跡者やってくれて(モグモグ)。今日よろしくお願いします(ボリボリ)」
イベント当日。テディたちは開始三十分前に集合し、今回の進行役を務める男性個人配信者のキジーと挨拶を交わすことになった。
――ホットとタンドリーは『初対面の挨拶でめっちゃ菓子食ってる』って顔してるだろうしナキは『舐めてんのか?』ってメンチ切ってそう……。ユイガはキジーさんのこと知ってたから大丈夫……だよね?
テディは初対面となる四人へ『キジーはこういう人だから』と紹介する前に、一言フォローを挟むことにした。
「今はお菓子食べてるただのオッサンだけど、キジーさんは凄いんだよ。活動歴長いってのもあるけど、色んなレゾクラ企画とか『BRO・AD』のサポートスタッフもやってたし」
「へー!」
「『BRONZE ATTIC』とはもうズブズブだよ。へへっ」
「あとシェンとメトロのゲーム友達でもあるから。実質僕らはキジーさんの子分みたいな感じ」
「そうだったのか」
「ふーん」
「よろしくー。シェンの不満とか秘密があったら遠慮なく話して」
「……まだ特に無いっすね」
「またまたぁ」
「これ毎回聞いてくるから皆も適当に聞き流してね」
そんなこんなで、五人はキジーからハンター側の概要と仕様について簡単な説明を受けた。
そしていよいよオープニング会場の駐車場に、ランナーたちが次々とログインしてくる。
「人多っ」
「ちょ、音圧ヤバ」
「隅っこ……隅っこはどこ……」
普段通りの服装をしている者が大半だったが、中には動きやすくカラフルなスポーツウェアで参加する者もいた。
「におさん。今回の追跡者ってこれプロじゃないですか」
「ですね」
待ち時間の間、『ディパレット』所属の女性バーチューバー森野キティは近くにいた『ロクラメン』のにおんに声をかけた。
「キティこれプロってテディしか知らなくて。やっぱ全員レゾクラでもプロなんですか?」
「全員ヤベェっすよ」
「ガ(チ)!?」
「あーでもワンチャン見逃してくれそうなのはテディとホットと新人のナキ、かな……でもアイツ等がどんくらいガチで来てるかによるなぁ……」
「テディとホットさんとナキさんね!覚えた!」
ハンターについて情報収集する者や、雑談に興じる者、他参加者へ挨拶に回る者――そんな喧騒も、定刻のサイレンとともにぴたりと静まった。
駐車場内に設けられた簡易ステージに、アロハシャツ姿のキジーが姿を現す。
「あーあー。えー。うぃーす。お疲れ様でーす。こんばんはー」
「オイ何だその挨拶!」
「やる気あんのかー!」
「本日は『BROレゾクラ~ラン・フロム・ザ・KP~』にご参加いただきありがとうございます。司会進行役を務めます、キジーです」
「誰だー!」
「聞いたことないな」
「私の声聞こえてますでしょうかー」
「声小せぇぞー!」
「腹から声出してけー!」
予想以上に参加者がキジーを囃し立て、裏で控えていたテディ以外の四人は少しだじろいだ。
「な、何か……」
「すげー野次飛ばしてんな」
「遠慮ないんだけど」
「俺らこの後出んのか?」
らむらすやこせゆ隊など、キジーの企画ではお馴染みのメンバーたちは、彼に遠慮なくツッコミを入れるのが恒例となっていた。そのため本人も気にせず、そのまま進行を続ける。
「今回の追跡者はこちらの方々です!どうぞー!」
『プシュー!』という白煙の演出と共に、黒スーツにそれぞれのメンバーカラーのネクタイを締めたホット、タンドリー、ユイガ、ナキの四人が壇上に立つ。
「キター!」
「キャー!」
「本物だー!」
「スーツカッコイイー!」
「「……っ!」」
――いや嬉しいけど!さっきのブーイングみたいな空気はどこに!?
キジーへの反応とはあまりに違う様子に、四人は必死に笑いを堪えた。
「それではお一人ずつお話を伺っていければと思います。まずはじゃあホットさんから」
「はいっ!よろしくお願いします……っ。ちょっとすみません。ランナーの皆さんキジーさんの時とリアクションが違いすぎて……」
「本当それ。俺ゲームマスターぞ?不遜な態度取る奴全員ゲーム中発光させるぞ?」
「ヤメロ!」
「嫌だー!」
「こいつヤバ」
ようやく笑いが収まったホットは、軽く咳払いをして場を仕切り直す。
「初めましての人は初めまして!『諸君!これがプロである!!』のホットです!追跡者の中だったら俺が一番皆さんに甘いので、いっぱい追いかけっこしましょう!」
「永遠に追いかけ続ける気だコイツ!」
「見逃してはくれないと」
「えー、逃げるより追いかける方が強いと噂のホットさんの活躍、楽しみにしております。続いてタンドリーさん」
「はい。追跡者のタンドリーです。まともな命乞いは無視しますが、せめてレゾクラ上手い人から狩っていきたいと思います」
「頼むー!そうしてくれー!」
「レゾクラだとアイツが一番ヤバイからな……」
「ありがとうございます。今回は高低差のあるマップなので、レゾクラアスレに関して強い操作技術を持つタンドリーさんは最も手強い追跡者となるでしょう。続きまして……ユイガさん」
「ユイガです。追跡者から逃げるための重要ポイントは……そう!アピールですね。平等に審査するので、つい見逃したくなるようなアピールを期待しています」
「無茶ぶりの匂いがする……!」
「エグいこと言ってるって!」
「情報によると、一番トリッキーで容赦なく人を弄ぶのがユイガさんだとか。彼にだけは捕まらないよう、皆さん頑張ってアピールしてください。最後にナキさん!お願いします」
「どうもナキです。いや見た感じランナーの皆さん大先輩ばかりで……まさかデビューして一ヶ月も経ってない俺に捕まるとか……そんなワケないよなぁ?」
「当たり前だろー!」
「そ、そんなワケ!」
「十秒以内に生贄を用意しなかったら即殺しますんで。よろしくどうぞ」
「えールールにも記載の通りランナーは味方同士を殴れませんが、生贄や結託などは自由です。ナキさん対策として、人柱と行動を共にするという戦略もありかもしれませんね」
ここでハンターの紹介が終わり、キジーは追跡者の予備メンバーであるのテディを呼び出す。するとステージに設置されたディスプレイに、笑顔のテディが映し出された。




