第165話『これプロチャンネル三周年記念』
総合的な格闘ゲームの実力順:シェン>ナキ>メトロ>テディ>ホット=タンドリー=ユイガ>ナイア
休みと職業の設定
テディ(教師)……土日祝
ホット(ホスト)……シフト制(平日)
タンドリー(コック)……シフト制(平日)
ユイガ(配達員)……シフト制(ほぼ平日)
ナキ(保育士)……土日祝
テディ「……六人目の職業も公務員設定にしよ」
三月十九日、『諸君!これがプロである!!』チャンネルは開設三周年を迎えた。その週末の定期配信『諸君!これがテディの雑談ゲーミングである!!』略して『これ雑』では、サムネイルもいつもより少し豪華なデザインになっている。
「こんばんはー。今回も『諸君!これがテディの雑談ゲーミングである!!』略してこれ雑、やっていきたいとー思います!」
『三周年おめでとー!』
『めでてぇな』
『今ケーキ食ってる』
「やーとうとう三周年かぁ……僕の実況歴も四年目に突入したよ」
『夢みたい』
『大きくなったな!』
『早くない?』
「皆もお祝いとスペチャありがとうございます!まさか三周年で新メンバー追加っていうね!予想してる人もそこそこいて面白かったよ。『ホットの前例があったから』だよねー。周年にぶち込んで来るんじゃないかって恐れ抱いちゃってた?」
『震えて寝てた』
『ナキいないの?』
『ナキみってるー?』
「今回もコメントと話しながらゲームやってこうかなーって思うんだけど……ぶっちゃけ登録者百万人記念の時いっぱい話して過去も振り返ったから……特に話すことないんだよね。これからも頑張ってこう!って感じ」
ここでテディがレゾンクラフトの画面を表示すると、配信画面にはこれプロ村の中央に佇むテディが映し出された。
「そして!三月十九日が記念日なのは僕だけじゃないよね!てことで今回は特別に!この二匹も祝われに来てくれましたー!」
「こんばんはー!」
「来たぁぁぁぁ!」
『え!!!!!』
『ラーメンふいた』
『あああああああ』
移動速度を強化したホットが周囲を駆け回り、ナキが空中からふわりと姿を現す。告知のないゲストの登場に、コメント欄は一気に騒然となった。
「俺とホットの単位同じかよ」
「な!まるっきり種族違うのに」
「ホットはデビュー一周年で実況歴二年目、ナキは生まれたての一年目だね」
「誰が幼虫だ!」
「蜂の子……美味いよな。高タンパクで」
「はい刺傷ー。オラ喰らえぇ!」
「あはははははは!」
「登場して十秒で殺し合い!?ナキこれが君の人生初配信だよ!?」
「あーシェン。『ナキが来て泣きそう』ってコメントした奴BANな」
「ぶはっ!」
「全く緊張してないどころかコメントチェックまで……!?シェンも『おけ』じゃなくて!やーとんでもないよ諸君。僕が虫取り網で捕まえたナキはとんでもないミツバチだったみたいだ」
「なんてったって『ナキ・ツラニハチ』だもんな……」
ナキに空中から槍で滅多打ちにされたホットは、速度を落としてテディの右隣に立つ。満足したナキも浮遊したまま左隣に並んだ。
『生ホット生ナキめでたい』
『嬉すぃー』
『供給過多で溶けちゃう』
「うわヤバ!二万人も見てる!」
「『ねぇ待って』とか『これマジ?』とか……ついてこれてない視聴者多くね?」
「サプライズゲストって体だからね。正気に戻ると『驚かせるな』とか『油断したじゃねぇか!』って逆ギレしてくるから、視聴者諸君は配信終わるまで驚いたままでどうぞ」
「って言うから一気に殺伐とし始めた……」
ホットは祝福ムードが一転、不平や煽りコメントで溢れ始めたコメント欄を見て失笑する。
「ナキの得意ジャンルは格闘ゲームだけど、武器を使った戦闘の適性がずば抜けてるんだ」
「最初はちょっと手こずったが、敵をボコボコにブッ殺すのって最高にハイになれる」
「僕と同じタイプかも」
「テディよくこんなミツバチ捕まえてきたな」
「『ナキもゲームジャンル特化型?』そうだね。タンドリーと同じ。だからシューティングゲームは結構一緒にやったなー」
「普通に楽しかったぜ。丸一日かけてウェルテックスとかサトナのレクチャー受けた。やっぱテディ教えるの上手いわ」
テディはナキにバトルロイヤル系シューティングゲームの才能を感じ、加入前から有名作品の基礎を一から叩き込んでいた。
「ウェルテックスが七時間くらいで、サトナが八時間くらい?とか言ってなかった?」
「多分もっといってると思う。途中から指南役はユイガにバトンタッチしたから」
「ユイガ面白ぇよな。しょっちゅう先輩ヅラしてくんだけどよ、ちっせぇ子猫がシャーシャー言ってるようにしか聞こえねぇ」
「「はははははは!」」
ユイガがドヤ顔で教えている姿を想像し、テディとホットは同時に吹き出した。
「ユイガ職場でもここ二年くらい後輩ポジの座にいるから……」
「ナキが来て一番喜んでたのもユイガだったなぁ」
「実際、俺の方が年上だからアイツが永遠の後輩キャラだろ」
「そうだね。これからもユイガファンの諸君は彼を子猫のように可愛がってあげてください」
『何歳差あるのか気になる』
『これプロの年齢順どうなってん』
『干支だけでも教えて』
これプロメンバーの年齢について詮索するコメントが相次いだが、三人は曖昧に濁して話題を変えた。
「やーでもね。これからも変わらず毎日投稿は続けていって、配信も有料会員限定のヤツとかメンバーをローテーションしてやっていきたい……かも!」
「それ大丈夫?いける?」
「どうせアレだろ?蓋開けたら俺とユイガの定期配信になってんだろ?」
「やっぱ土日だとそうなっちゃうか……まぁそこは追々ってコトで」
本業では週末が繁忙期にあたるホストのホットとコックのタンドリーだが、デビュー間もない頃は週末配信にも度々参加していた。
現在では余程の大型コラボでもない限り、土日夜の枠への参加を基本的に見合わせる方針としている。
「今日投稿した人狼ゲーム系も沢山やりたいし……TRPGもいいね!」
「ナキが入ってから、最近は格ゲーばっか撮ってる気がする」
「いいじゃねぇか。『ナキ目線だと誰が上手い?』か……ホットは素質あるぜ。無駄な動きが少なくてフェイントもあんま効かねぇ」
「俺!?やったぁー!」
「僕は僕は?」
「キメェ」
「あはははははは!ふはっ……あはははははははは!」
「ホット喜びすぎだよ!」
ナキはキーボードから手を離して腕を組み、瞼を閉じて試合の様子を回想した。
「テディは自認の通りタイマンより混戦の方が強ぇ。死角からのカウンターがマージでしつこい。悪趣味」
「えへえへえへへ」
「ホントそういうとこだと思う」
「メトロも達人レベルのCPU(コンピューターの敵)みてーな、血の通ってねぇ動きも底知れなくて不気味っつーか……厄介極まりねぇ」
「前にどっかで言ったけど、ジャンル格ゲーだと裏プロがかなり上位に食い込んでるんだよ」
『あーね』
『結局ナキは何番目?』
『シェンがいっちゃん強いっけ』
「シェンはもう別格すぎて比較しちゃ駄目だな」
「戦いづらい相手とかあるよなー。俺ユイガには中々勝てない」
「マジ?あの猫クソ下手だぞ!瞬発力は悪くねぇけど」
「ナキ。ユイガこのアーカイブ絶対見るから。後で怒られるよ」
後に配信を見たユイガが、FPSゲームのデスマッチでナキを叩きのめしたことは言うまでもない。
「今は食わず嫌いしないで色んなゲームに手ぇ出してるからな。路線が増えて、どのジャンルが肌に合うか分かんのが楽しい」
「それで分かったのがとにかくナキが好戦的だっていうね」
「レゾクラでも秒で武器作って動物狩りまくってるもんな」
「ははは!『狩猟大臣』いいな。他は?」
「僕が厚生労働大臣になるよ。ホットは永遠にアレキサンドライト掘ってもらうから財務大臣で」
「俺がパーティにいるかいないかでラスボス討伐時間違うからね」
レゾクラにもラスボスにあたる合成獣が存在する。以前ホットがいる三人といない三人とで、討伐に要する時間にどの程度の差が生じるかを検証した動画を撮った。
「あれは辛かった……先にホット有りで楽々クリアしちゃったから余計に後がしんどくて……」
「俺からタンドリーに変わってからの、ユイガが鬱憤を全部タンドリーにぶつけてるとこホント好き」
「へぇ……後で見るわ」
その結果、三人での平均討伐時間が約二時間とされるものをホット有りだと一時間弱、ホット無しだと二時間半かかるという衝撃の結果となった。
「タンドリーは言わずもがな農林水産大臣で、ユイガは……ユイガは……防衛大臣だ!」
「絞り出した……」
「ユイガは自由の方がいいだろ」
『甘い』
『関係性オタクが騒ぎ出す』
『二人の絡みもっと見たい!』
ナキはこの時点で既にユイガへの甘さを覗かせており、ファンはそんな二人の距離感に悶絶するのだった。
「この前のコラボで、まくれなさんが十四年目って聞いて震えた」
「あー言ってた。こせゆ隊マジ歴長いよな」
「大先輩と比べると僕は実況歴半分もいってない子熊だけど……ここまで色々あったなぁ」
「アレだろ?相当馬鹿なミスやらかしまくってここまで来たんだろ?」
「言い方!」
「ウッ頭が……一旦未来を見て落ち着こう……よし!」
『気を確かに』
『目を閉じるとシェンのしごきが……』
『ヨシッ!』
「五人実況が安定してきたら目指せ六人実況!でもこれプロの動画スタイルは変えないから、どんどん追ってくれると嬉しいな!」
「よろしくー!」
「お願いします!」
約二時間の雑談ゲーム配信を終え、糸哉は寝る支度を始める。
「あれからもう、四年……」
就寝前に零した独り言によって、時の底に沈んでいた記憶が不意に蘇った。
――『もう家族は選べねーんだから。ゲーム実況者を俺たちの居場所にしようぜ』
「もっと豪華な居場所にしていくから、夢に出るなよ……リズ」
彼は約束を交わした友人にそう言い残し――やがて訪れる朝へ身を預けた。
これにて『中学一年生編』は終わりとなります。閑話を挟んでからの新章『中学二年生編』も引き続きお楽しみください。




