第164話『これプロ村人狼 後編』
一日目の行動、役職。
・らむらす(鍵番)→タンドリー(鍵番)
・もさ彦(死霊使い)→ホット(異常なし)
・ホット(不明)→在宅
・ユイガ(掘削者)→まくれな(落とし穴掘ってた)
・ナキ(死霊使い)→まくれな(異常なし)
大御所二人に迫られ、ホットは気まずさから小さく項垂れる。
「俺が引き継いだ役職は『鍵番』だったんで……多分テディの『幻覚持ちの鍵番』をもらいました」
「「はぁー!?」」
「余計な無能が一匹増えただけなんだけど」
「この無能がよぉ!」
「ごめんー!」
二日目夜の行動とそれぞれの役職は以下の通り。
・らむらす(鍵番)→ユイガ(鍵番)
・もさ彦(死霊使い)→ナキ(異常なし)
・ホット(幻覚持ち)→らむらす
・タンドリー(幻覚持ち)→死亡
・ユイガ(掘削者)→外出不可
・ナキ(死霊使い)→タンドリー(異常なし)
一日目の行動を踏まえ、らむらすは怪しい人物の洗い出しを始めた。
「シンプルに考えると、タンドリーの家行ったナキが怪しい?」
「おいおい!もっさんも俺の中でかなり黒くなってますよ!『幻覚持ち』で言い訳は立つかもだが……昨日俺の家には誰も来なかった」
「となると?」
「俺目線はらむらす……いやホットか?」
「俺が村人なのはユイガが証明してくれるから」
「俺もらむらすも、タンドリーの殺害には関与してないんだけど?」
ここで怪しいのはもさ彦、ホット、ナキに絞られる。
「これで三人いる『幻覚持ち』が、テディとテディから継承したホットとタンドリーとナキ……で全員か」
「結局これどっちやねん」
「人気投票で追放されたまくれなさんが可哀想すぎたな」
「プフッ……またローラーする?」
ローラーとは――真偽を見定めることなく、やや怪しいと感じられるプレイヤーを全員追放するという戦術のことである。
「やる?やっちゃう?」
「俺はいいぜ!」
「えー嫌だ!」
「やるのかやらんのかどっちや!」
再びランダム投票に傾きかけていたが、村人陣営とほぼ見なされているらむらすが笑ってこの場をまとめる。
「ま、今回は追放無しで」
「そっか……」
「ナキ露骨にテンション下がってるやん」
そうして容疑者が絞り込まれた三日目の夜。
「ウェワーーッ!」
「うわっ!アァーーッ!」
各所では訪問された者たちの情けない悲鳴が飛び交い――
『卑劣な村人どもめ……!』
――とうとう死人までもが声を上げる始末だった。
「オイ死人」
「やかましわ!」
「空からまくれなさんの呪詛が……」
「やーいやーい。この終身名誉犯罪者ー!」
「死人は黙ってろ!」
死亡または追放されたプレイヤーはミュートにして見守るというルールが定められていたが、こせゆ隊はこのメンバーであれば多少の悪ふざけも許されるという考えだった。
『天に還れ!』
「「お前じゃい!」」
「ちょっと首吊って文句言ってくるわ!」
「らむらす!?」
「何言ってんの?」
そして四日目の朝。
「誰だこれ。らむさん……?」
全員が広場に集合すると、広場の中心には特盛りオムライスが一つ置かれていた。
「あはははっ!えー。これはらむらすでいいの?」
「らむらす死ぬとあぁなるの?初知りなんだけど」
「普通に死なせてやれよ」
もさ彦がオムライスに近寄ると、たちまちそれは一冊の本に変わる。
「……え!?」
彼はその内容に目を通し、絶句せずにはいられなかった。
「らむらすは……『幻覚持ち』だ」
「何だって!?」
「嘘でしょ!?」
「……いやおかしくね?」
九人の中に三人いるとされる『幻覚持ち』はテディ、タンドリー、ナキの三名。『愛弟子』で『幻覚持ち』の役職を継いだホットを除いても、らむらすが『幻覚持ち』だという結果は四人を困惑させるものだった。
「らむらすは本物の『鍵番』!じゃないと俺のアリバイがパーになるんだけど!」
「俺だって怪しくなんだろーが!この結果合ってんのか!?」
「あとこの状況でめっちゃ言いにくいんやけど、俺も『幻覚持ち』かもしれん……」
「「えぇ!?」」
昨晩、もさ彦は最も襲われる可能性が高いらむらすの蘇生を成功させた――にもかかわらず、朝には彼の死体が発見された。
「じゃあもさ彦さんがらむらすを殺したんだ!」
「そういうことかよ……!」
「それだけはマジで違う!ホンマに違う!」
「声デカいんだけど」
「村人が生に執着するのは当然の本能やろぉ!」
「いや待って……」
それにしても『幻覚持ち』が多すぎる。その事実から、ユイガはある可能性に気づく。
「これさ、残りの『反逆者』の役職が『偽装屋』だから、殺された人全部『幻覚持ち』になってる可能性ない?」
偽装屋――反逆者確定役職であり、自信が殺した相手の役職を全て『幻覚持ち』に書き換えることができる。
「いや……あるな」
「それは普通にあると思う」
これまでに殺された『幻覚持ち』のうち、らむらすテディとタンドリーについては、実は普通の役職だった可能性が浮かび上がってきた。
「でもテディから継承した俺は真の『幻覚持ち』だと思う。もさ彦さん昨日の夜らむらすの家行ったんですよね?」
「行ったで」
「俺『鍵番』でもさ彦さんの家行ったんですけど、監禁できてなかったから……俺ともさ彦さんは確定で『幻覚持ち』だ」
「もっさん、テディ、俺で……数合うか?」
三日目の夜の行動は以下の通り。
・らむらす(鍵番)→死亡
・もさ彦(幻覚持ちの死霊使い)→らむらす(蘇生成功)
・ホット(幻覚持ちの鍵番)→もさ彦(鍵番)
・ユイガ(掘削者)→ホット(落とし穴掘ってた)
・ナキ(幻覚持ち)→ユイガ(蘇生完了)
「俺ともっさんがシロだってことがハッキリしてねぇのか……」
「ホットは?最初から『愛弟子』偽装して……」
「俺そんな器用な立ち回りできないよ!?」
「でもどうなんやろ……こん中だとユイガが一番真っ白よね?」
「そだよ」
二日目の夜。『鍵番』のらむらすがユイガを外出不可にしていたことから、ユイガはほぼ確実に村人陣営だった。
「成程な……」
「明日で決着か……」
四人の供述をひとまずまとめたものの、ほぼ『幻覚持ち』の証言ばかりでどうしても内容が薄い。今の段階ではとても追いきれないという結論になり、次の犠牲者が出ることを期待して解散した。
「確定『幻覚持ち』だと何も出来ねぇのもどかしいな……」
「俺死にそうなんだけど」
「……俺だーっ!ギャーーッ!」
「ホットさーん!」
五日目の朝。全員が予感していた通り――ホットは色鮮やかな花々に囲まれ、永遠の眠りについていた。これで残るプレイヤーはもさ彦、ユイガ、ナキの三名のみとなる。
「し、死んでる……」
「何で毎回ホットだけ手厚いの?花とか……」
「白雪姫かよ。初日のテディとりょくおーさんは野ざらしだったのにな」
そしてホットの役職は『幻覚持ち』であることが判明する。これも『偽装屋』の能力で役職がすり替えられている可能性はあったが――死亡している以上、彼が『村人』として虚偽の発言をしていた線は消えた。
「うーん。どっちか分からん……!」
「思ったんだけど、これ自称『幻覚持ちの死霊使い』対決だから。二人ちょっとアピールしてもらえる?」
「あぁん!?」
「そうなんのかよ……!」
「まぁ俺が『幻覚持ち』なのも全然あるけど……『偽装屋』の能力ややこしすぎ」
「らむらすは確定『鍵番』として、テディとタンドリーと俺ともっさんとユイガが『幻覚持ち』ってことか?」
「こーれワンチャン『幻覚持ち』二人VS『偽装屋』説あるで」
もさ彦とナキ。どちらにも決め手となる証拠はなく、結局のところ己の内に秘める村人パッションをぶつけ合うしかなかった。
「もっさん怪しいなァ!」
「ナキさんかぁ……俺は結構『幻覚持ちの死霊使い』だと思ってんけどな」
「ちょっと!ファイティングポーズ見せた俺が黒っぽく見えるじゃないっすか!」
「ふっふふふ……!よし決めた!俺が正しければ、ホットを殺ったのは……」
ビシッ!とユイガはナキに向かって指を差した。
「ナキが『偽装屋』でしょ!」
「根拠は!?」
「勘だけど!もしもっさんが『反逆者』だったらマジごめん!」
「俺はユイガさんを信じるしかない……!」
「おい何でだよぉぉぉ!」
撤回も弁解もなくナキの追放が決まり、明かされた役職は――
「頼む!」
「ナキであって……!」
――『偽装屋』だった。
「うわマジだったー!」
「あはははははは!」
「くっそぉぉぉぉぉ!」
こうして『反逆者』は全員追放され、村に平和が訪れるのだった。
今回の役職は以下の通り。
村人……らむらす(鍵番)、りょくおー(独裁者)、もさ彦(幻覚持ちの死霊使い)、テディ(幻覚持ちの鍵番)、ホット(愛弟子)、タンドリー(観測者)、ユイガ(幻覚持ちの掘削者)
反逆者……まくれな(張り込み)・ナキ(偽装屋)
「ナイスー!」
「いやーコングラチュレーション!」
「おめでとー!」
「ナイストライ!」
「最後よく当てたな」
残りのメンバーが次々と通話に参加して感想戦を始める中、一人だけ黙り込んでいる者がいた。
「ナキさんホンマすいませんっ……!今めっさ土下座してます」
「「ははははははは!」」
「ナキさんコイツ口だけっすよ!」
「ウェブカメラつけろー!」
「いやまくれなさん!俺こそ力不足で申し訳ねぇ!」
「十分ようやってたで」
これ以降も何試合か行われ、新ゲームとナキのお披露目は滞りなく果たされたのだった。
まくれな「まさかノリで追放されるとは思わんてぇ……!」
りょくおー「頭動かす暇なくパーンいかれたもんなぁ」
もさ彦「ナキの絶望半端なかったんちゃう?」
ナキ「初試合でこれはエグいっす。やっぱ先輩方が混じると違いますね」
らむらす「デビューしたてのド新人にカバーされたまくれなさん。一言どうぞ」
まくれな「えーどうも。今年で実況歴十四年目のまくれなです」
これプロ「「wwwww」」
まくれな「ナキさん。これからもよろしくお願いします!」
ナキ「(この人俺が生きてる年数分ゲーム実況やってんのか!?)こちらこそっす!!」




