第163話『これプロ村人狼 中編』
笑いが広がったのも束の間――
「やめてください!アタシには夫が!イヤッ!ちょっとどこ触ってんのよ!あっ……痛ぁぁぁぁぁい!」
「オォイ!」
「誰が襲われてんの?」
「喘ぐな」
「これプロそれでええんか!?」
――りょくおーより女声が板についているテディが何者かに襲われ、最期の叫びを残した。
二日目の朝。夜明けと同時に、七人はほぼ一斉に家を飛び出した。互いの無事を確かめるように視線を交わし、人数を数えるが――二人足りない。
「嘘、だよな……!?」
「りょくおー、テディ……!」
「ババァちゃうやんけ!」
広場の中央。二人分の爆発でできた穴の中には、テディとりょくおーがシンクロしたように同じ格好で転がっていた。
「え?自爆で死んだ?」
「この死亡ポーズ見覚えが……いや何でもない」
「飲茶……って言ってみただけだけど?」
「伝統芸しやがって……あ、今の独り言な」
タンドリーがそんな二人に近づくと、遺体は一冊の本へ姿を変えた。
「テディの役職は『幻覚持ち』でりょくおーさんは『独裁者』……」
「つまるところ……いてもいなくてもいい奴だった?」
「「あ」」
「フッ。実質ノーダメやん」
「「あぁっ!」」
「らむさんにまくれな!死んだ人のこと悪く言うのやめとけ。そんなことより今日の夜この穴でキャンプファイヤーしようぜ!」
「この人が一番酷ぇ!」
「犯人見つけてやれよ」
「もっさんまでボケられたら困るんだけど?」
「ちくしょう……どっちかの家に行ってたら俺の『死霊使い』で蘇生してやれたのによぉ!」
『死霊使い』のナキは昨夜まくれなの家に行ったそう。それを聞いた彼は、腑に落ちたような反応を見せた。
「僕は外出てないです!まだどうなるのか分かんなくって……様子見してたんですけど、その間二人くらい?家の周りうろつかれました」
「まくれな何もしてないんだ」
「あ、それ俺かも……ナキもまくれなさんの家行ったの?」
ナキが肯定すると、ユイガの猫目が妖しく光った。
「俺は『掘削者』だけど?落とし穴掘ったのにナキがまくれなさんの家入れてるのおかしくない?」
「それは……お前が『幻覚持ちの掘削者』だからじゃね?」
「ぬ」
「前提に『幻覚持ち』があるとこんな複雑になるんや……このゲームやば」
一言で矛盾を突き崩され、ユイガはひとまず追及を打ち切ることにした。
「他に役職言える人いる?昨日何したとか」
「俺は……ちょっとまだ言えないな」
「俺も!役職の把握に時間取られて使うの忘れたなんて言えないかな!」
「みなまで言ってんじゃーか!」
「んん全部言うとる!」
ホットの正直なボケにタンドリーともさ彦が声を揃えてツッコみ、続いてこせゆ隊二人が報告を始めた。
「俺『死霊使い』でらむさんの家行ったんやけど……蘇生出来なかったから『幻覚持ち』かも」
「俺死んでないよ」
「あれ?」
「勝手に殺すな」
「あーそっか。訪問先が元気なら何も無いんか」
「そうですね」
「ちょっとまだこの状況でゲーム性はっきりしてないから、家から出ない方がこういう時安全かと思って……」
「まくれなさんは役職使わず?」
「そうですね……やや当てはまる」
「性格診断やってんちゃうぞ」
「曖昧……」
――怪しくね?でも俺も出るか迷ったし。そんなもんか。
らむらすは直感でまくれなの行動に引っかかるものを覚えたが、初プレイという理由で一旦疑念を脇へ置いた。
「俺も……これ言ったらあんま意味ないけど、役職明かしたら殺されそうだからやめとく」
「この中に俺の家来た人いるのか?」
「はい」
昨夜、らむらすはタンドリーの家で役職を行使した。よって一日目の殺害に関わっていないと思われる人物はらむらす、もさ彦、タンドリー、ユイガ、ナキの五人に絞られた。
「家出てないホットとまくれな……」
「一旦怪しめか」
「いやいやいや。俺からしたらしっかりアリバイあるそっちの方が怪しいけどね?」
「逆にね?口裏なんかいくらでも合わせられるやろ。絶対そっちの中に『反逆者』混ざってるって」
「てか役職明かしてない人多すぎんだけど。『鍵番』とか『張り込み』は?」
「まぁここで鍵番出てきたら次の夜に殺されるからな」
「そーね」
――って言ってるらむらすが鍵番か……。
もさ彦は、彼の上ずった声から内心の動揺を察した。
「じゃあ……人気投票する?」
「えっ!?僕に票入れたヤツ誰!?」
「んんっ!」
「フッ……」
「ヒヒヒ……」
ユイガの『人気投票』という一声でまくれなに匿名票が二票集まり、その後さらに一票が加わった。
「えー皆。とりあえず顔あげてー地面見ないでー。真っ先に僕に投票した人はー?」
「ごめんなさい……俺こせゆ隊だと、まくれなさんが魔人デュビドゥバの前でシャンプーし始めるシーンがホント大好きで」
「おいファンボ(ーイ)紛れてんぞ!」
「ほ、ほぉん……ならホットはしゃーないか」
思わぬ自白にまくれなは心を動かされる。だが残りの生存者が『追放無し』を選ばない限り、パフォーマンスで追放されるのは彼だった。
「……まぁ一旦スキップか」
「だな」
「どうしてこの流れで僕を吊ることになるんだい!?」
「じゃあホットか」
「俺ならオッケーとかないから」
――って僕も投票スキップせな!
まくれなは『追放無し』へ投票しようとしたが――
「えっえっえっ!あーーっ!」
「「えっ?」」
――誤操作により自身へ票を投じてしまった。
「だはははははは!」
「何しとんねーん!」
「そんなバカな!」
「ガチか」
「あーあ」
「ははははっ!あはははははははは!」
そして村の外へ永久追放されたまくれなの正体は『反逆者』だった。
「「えぇーーっ!?」」
一同は騒ぎながらも大笑いし、その場は混乱に包まれた。だが日没は待ってくれない。
「おやすみー!」
「おやすみなさい」
運よく『反逆者』を追放できたものの、生存者たちは逃げるように二日目の夜へとなだれ込んだ。
一日目夜の行動とそれぞれの役職は以下の通り。
・らむらす(不明)→タンドリー(異常なし)
・りょくおー(独裁者)→死亡
・まくれな(反逆者)→りょくおー殺害
・もさ彦(死霊使い)→らむらす(異常なし)
・テディ(幻覚持ち)→死亡
・ホット(不明)→在宅
・タンドリー(不明)→外出不可
・ユイガ(掘削者)→まくれな(落とし穴掘ってた)
・ナキ(死霊使い)→まくれな(異常なし)
残り村人五人。反逆者一人。
「さてどうしよ……どうしよ!でも茶番で『反逆者』一人吊れたから残り一人……ここは向こうも焦って誰か殺しに行くかもしらん」
「ひいっ!ひっ……ふぅ……。ヒイッ!?」
そう判断したもさ彦は、ナキの家へ向かう道中で誰かの悲鳴を耳にした。
「誰だ産気づいてる奴!」
「らむらす!ヤバかったらウインクして」
「誰が分かるんだよ」
「……ん゙っ!」
「えっ」
「う、生まれた……のか……!?」
そしてナキが無事生きていることを確かめ、家に帰り着いた直後。
「ア゙ァ゙ッ!」
「ん?」
「何か悲鳴が……」
「変なオッサンの声したんだけど」
「オッサンじゃねぇ!」
「あははっ!今の声タンドリーか。誰か思った」
タンドリーの絶叫が夜闇に響いたものの、何が起こったのか判然とせぬまま――一同は夜明けを待つしかなかった。
そうして三日目の朝。全員が広場に集合すると、広場の中心には骨付きチキンが一つ置かれていた。
「た、タンドリーか……!?」
「焼き鳥になっちまって……」
「っ……っ……!」
五人はしばし笑いすぎて苦しんでいたものの、彼の遺体が役職を示す本へと変貌するとようやく落ち着きを取り戻した。
「タンドリーも『幻覚持ち』だったんだ」
「『幻覚持ち』が真っ先に殺られてく……」
「ちょっと発言いいですか?」
ここでナキが、どこか神妙な声色でタンドリーの家を見つめる。
「俺はどうやら……『死霊使い』で夜な夜な彷徨ってるだけの『幻覚持ち』みたいっすわ」
「夢遊病やないか」
「俺は外出れなかったんだけど」
ナキが『幻覚持ち』だと明らかになった後、ユイガが不服そうに呟く。それを聞いて、らむらすが小さく笑った。
「俺がユイガを家猫にしたから。あっ言っちゃった!」
「らむさんが鍵番ね。俺、ナキさんの家行ったけど何にもなかってん。まだ誰も助けられてへんし、実質ただの能無しやわ……」
「この村の『死霊使い』役立たずだな」
「二人共ホントに『死霊使い』?」
「いるだけの無職と変わんないんだけど」
「「クッ……」」
残りの生存者から非難を浴び、未だ蘇生実績ゼロのもさ彦とナキは何も反論できなかった。
「あ、ホット『愛弟子』です!テディの『幻覚持ち』かりょくおーの『独裁者』のどっちかを継承できる感じで……」
「どっち!?」
「お前なら『独裁者』引けるやろ?」
らむらすともさ彦は、反逆者をあぶり出す好機に声を弾ませた。
天界の会話
タンドリー「何で俺だけ美味しく調理されてんだよ」
テディ「面白いから……タンドリーだけこうしちゃった」
りょくおー「テイオーと俺を殺しやがって!残りの反逆者誰や!」
まくれな「まだ言いませーん。クソッ何でよりによって投票で……」
りょくおー「もう一人も適当に追放されたらバリおもろい」




