第162話『これプロ村人狼 前編』
正体隠匿型コミュニケーションゲーム『これプロ村人狼』――レゾンクラフト内で開発されたテディ考案の人狼ゲームである。
参加人数は五~十二人。プレイヤーは村人と反逆者、二つの陣営に分かれて戦う。
◆村人
目的……反逆者を特定し、すべて排除することを目的とする。
◆反逆者
目的……正体を隠しながら人数を減らし、村の支配を狙う。反逆者同士の役職は分かるが、意思疎通は出来ない。
ゲームは『朝・昼』と『夜』の二つのフェーズで進行する。
◆朝・昼フェーズ
全員が家から出て広場に集まり、情報共有と議論を行う。
プレイヤー同士の発言や行動履歴をもとに疑念を深め、最終的に投票によって追放者を決定する。
◆夜フェーズ
全プレイヤーはそれぞれ自宅へと戻り、外からやや隔離された状態で行動を選択する。この間、各役職固有の能力が発動可能となり、調査・妨害・排除などが密かに行われる。
◆役職
各プレイヤーには固有の役職が与えられ、それぞれ異なる能力と勝利条件を持つ。
役職の割り当てはランダムであり、構成によっては一部の役職が存在しない、あるいは複数存在する場合がある。
なお村人陣営の確定役職ではないものは、反逆者側に振り分けられることもある。
プレイヤーは死亡時、その人物の役職のみが公開される。
◆観測者
任意のプレイヤーを一名選択し、その人物の役職と陣営を把握することができる。
ただし一試合に一回限り。
◆鍵番
夜フェーズに自分以外のプレイヤーを一名選択し、その家を施錠する。
監禁されたプレイヤーはその夜、移動と能力行使の両方が制限される。また相手は鍵番の正体を特定することができない。
対象がその夜に外出しようとしなかった場合、鍵番は『対象が外出していない』ことを知ることができる。
同じプレイヤーの家に連続して鍵をかけることはできない。
◆死霊使い
村人確定役職。夜フェーズに自分以外の任意のプレイヤーを一名選択し、死霊魔術を施す。
訪問先のプレイヤーがその夜に死亡していた場合、一度だけ蘇生させることができる。ただし相手は死霊使いの正体までは判別できない。
◆掘削者
落とし穴を掘る。
落とし穴が設置された家を訪れた人物は侵入を阻まれ、その夜は家の中へ入ることができない。
同じ家に複数の訪問者がいた場合、例外なく全員が等しく穴へ落ちる。
◆張り込み
夜フェーズに自分含む任意のプレイヤーを一名選択し、その家に張り込む。対象の家に訪問があった場合、その人数だけを把握できる。
◆愛弟子
ゲーム中、最初に脱落したプレイヤーの役職を継承する。継承後はその役職の能力および勝利条件に従って行動する。
◆独裁者
村人確定役職。昼フェーズ中、一度だけ任意のタイミングで能力を発動できる。その日の議論は直ちに打ち切られ、独裁者は自身を含む任意のプレイヤーを一名選び処刑を強行する。能力発動時、独裁者であることが全体に公表される。
◆幻覚持ち
村人確定役職。ゲーム開始時、幻覚持ちには『独裁者』を除くいずれかの役職が割り当てられたように表示される。しかし、それはスマホに内蔵されたAIが本人に見せている偽の情報にすぎない。幻覚持ちは、自身が『思い込んでいる役職』の能力を使用することができる。 ただし実際には能力は一切発動しておらず、その結果もAIが作り出した偽情報である。 自身が幻覚持ちであることはゲーム中明かされず、他プレイヤーからも判別することはできない。なお『愛弟子』が幻覚持ちの役職を継承した場合でも、画面上には継承した役職名のみが表示される。たとえば『幻覚持ちの鍵番』を継承した場合も『鍵番』としか表示されず、幻覚持ちであることは判明しない。
◆偽装屋
反逆者確定役職。自身が殺した相手の役職を全て『幻覚持ち』に書き換えることができる。
◆感染者
反逆者確定役職。自身が訪問した家をその日から毎晩好きなタイミングで命を奪うことができる。また殺害されたプレイヤーの家へ後から訪れたプレイヤーは、次の夜フェーズで役職を使用できない。
◆ 勝利条件
・村人……反逆者を特定し、投票で反逆者を全て追放すれば勝利。
・反逆者者……正体を秘匿しつつ村人を排除し、村人と反逆者の数が同数になれば勝利。
今回はらむらす、これプロ、こせゆ隊の総勢九人が集結した。
☆彡
穏やかなインドアが集まる『これプロ村』――そこでは、ひと癖もふた癖もある住人たちがそれぞれの生活を送っていた。
「ふぁっ……あーーーぁ……。まだ九時か……おやすみなさい……」
赤い屋根に黄色い壁。どこかオムライスを連想させる家で、らむらすが二度寝しようとしたその時。
「キィィヤァァァァァァァァァ!」
まくれなの甲高い悲鳴が村中に響き渡った。
「びっくりしたぁ!」
「っ……」
「ふふっ……」
「迫真すぎ……」
「どないしてん!」
らむらすは勢いよく外へ飛び出す。同じタイミングで、隣家からもさ彦も走り出てきた。
二人が視線を向けた先――円形に並ぶ九軒の家の中央広場で、一人の男が乾涸びていた。
「……え」
「嘘、だろ……!?」
りょくおーは唇を震わせて駆け寄り、長い首に抱きつき、緑のたてがみへ顔を埋めるように叫んだ。
「テイオーーーーッ!」
「誰だよ……りょくおーのマスコットキャラをこんな目に遭わせたのは!」
「むごい……まるで酷暑の直射日光に曝され続けたみたいだ……」
「えーっと……誰?」
らむらすが読者の心の声を代弁するようにぽつりと漏らすと、これプロメンバーとこせゆ隊が一斉に彼を振り返った。
「え?りょくおーのマスコットキャラクター、青緑馬のテイオーさんをご存じでない?」
「らむさん何で覚えてないの!こせゆ隊にもちゃんと相棒のマスコットキャラがいるんすよ!」
「最初見た時『うまそう。馬だけに』ってクソしょーもないボケかましてどっちらけだったやないすか!」
「まさからむらす……『幻覚持ち』じゃないよね?」
「違う違う!もっさーのお陰で忘れてた理由思い出したわ」
ユイガに怪しまれたらむらすは焦って否定し、掘り返された黒歴史を忘れようとした。
「『幻覚持ち』の話は後にしろ」
ナキが遺体へ歩み寄ると――倒れていたテイオーの身体が淡い光を放ち、一冊の本へと姿を変えた。
「あっ!」
「テイオーが本に……」
「……りょくおーさん読みますか?」
「んぁ?これ読んだらええんか?」
ナキが短く頷くと、りょくおーは本の表紙に記された題名を口にする。
「――『テイオーの遺書』……うぅっ……テイオー」
「……読ませる人選ミスったかこれ」
「まぁ見守ってよーよ」
彼はペラリとページを開き、慣れた調子で読み始めた。
『ワイはとある二人組に殺されてもうた。姿は見えへんかったけど、あいつら自分ら以外の村人を皆殺しにするつもりらしいわ。あいつら――反逆者は俺ら村人と同じ役職持って、正体隠して紛れ込んどる。ほんで俺が死ぬまでに集めた情報やと、役職者の中に幻覚見とる奴が最低三人おるみたいや。お前らが俺と同じ目に遭わんことを祈る。頼むから反逆者を追放して、俺の仇を取ってくれ。頼むで皆!頑張れりょくおー!』っ……テイオー!」
「あれ。確か標準語で書いたハズなのに。あと後半アドリブ足されてたな……」
「っ……!は、は……」
「遺言の中身コテコテの梅坂弁で草……」
テディの本音ツッコミがツボに入り、ホットとその他は危うく吹き出しかける。
「『反逆者』って、俺たち九人の中に二人も!?」
見かねたもさ彦は助け舟を出し、そのまま話を進めた。
「俺のカイザーを馬肉にしやがって……!反逆者全員しばき回したるわぁ!」
「こわ」
「殺意高……」
「おい最初コイツ調べよーぜ」
誰もが突然の出来事を受け止めきれないまま時間だけが過ぎ、やがて空は群青から茜色へと変わっていく。
重苦しい空気に包まれたまま、一同はそれぞれの家へ戻るのだった。
☆彡
『村人』のもさ彦は白色の一軒家で一人、誰にも自分の声が聞こえない状態で役職が表示されたスマホを凝視する。
「さて。役職は『死霊使い』か……俺やったら初日から殺すんは可哀想って思てまうわ。ワンチャン誰も死んでへんのんちゃう?」
もさ彦は『死霊使い』としてリスクを顧みず誰かを蘇生しに行くか、それとも様子見のため一晩家に籠るか――その二択を迫られていた。
「うーん……どんな感じか知りたいし。適当にホットさんの家行ってみるか……」
と言いつつ結局らむらすの家を訪ねたが、彼は声も出ないほど驚くだけで何の反応も示さなかった。
「何ですかアナタ!やめてくださいッ!何をやってるんですかッ!アアッ!イヤーーーーーッ!」
「えぇ?」
「何か知らんババァおるわ」
「ご、強盗!?」
だがその直後、りょくおーの家からマダムのような甲高い断末魔が響いた。
りょくおー「おーい!44話ぶりの登場やのに初日で死んだってー!」
テディ「まぁまぁ。ここでポツポツ喋ってこーよ」




