第156話『アノマリーはきっとこの先に!!』
ホームセンターステージの隠れ場所。
テディ:レジ奥の壁に貼ってあるポスター。(目が動く)
ホット:ネジ・ボルトコーナーのナット(チョコレート。食べれる)
タンドリー:アウトドアコーナーのプール・海水浴の???
ユイガ:アウトドアコーナーのプール・海水浴の???
アノマリーの三人が見つかったと思った次の瞬間――
「…」
――無言で通り過ぎ、別の棚へ向かってしまった。
「えっ……ナキさん?」
「はははははっ!俺っ、今回も下手なのに……!」
「お前もヤベーな」
「ガチ見逃しマジか」
「はぁー!?なんなんだよ……!アイツ等ちゃんとこの店にいんのか!?どうなんだよオッサン!」
残り時間が半分を迎え、ナキは唯一のレジに立つおじさんに望みを懸ける。ちなみにそのすぐ奥では、テディが化けたポスターの目がきょろきょろと泳ぎ続けていた。
「ナキ。オッサンじゃなくておじさんだから」
「ちゃんと教えてってお願いしないと」
「目ぇ霞んでんのか?」
「ま、ヒントとか何も出ないんですけど」
――嘘だろオイ……いつも通りのキレが全く通用しねぇ……。
アノマリーの発見数は依然としてゼロ。焦燥と絶望を抱えたまま、ナキはついにタンドリーとユイガが潜むアウトドアコーナーへ接近した。
「何秒耐えるかなー?」
「これっ……いくらナキでも見たら一発でバレるだろ」
テディとホットも視点をタンドリーとユイガへ切り替える。二人はプール・海水浴用品売り場で、ユイガはスイカ柄のビーチボールに化けていたが――肝心の縞模様が縦ではなく横向きという、何とも微妙な異変だった。
「変わりはねぇか……?」
「「……っ」」
観察力の低さから一度は見逃してしまうものの――
「……ん!?ハァ!?オイ!」
『バシュウン!』
「ニャーーッ!」
「「ユイガー!」」
「よっしゃまずは一匹ぃ!」
――他四人の反応を見て引き返したナキは、ようやく最初の異変に気づいた。
「おめでとー!やっと進めたね」
「流石に無理があったー!」
「クッ。誤算……!」
最初の脱落者となってしまったユイガは、悔しそうに肩を落とした。
「ナキってスイカの皮に模様があること知ってたんだ……」
「切り身が泳いでると思ってた小学生やめろ」
「あぁん!?舐め腐ってんじゃねぇぞ! 俺ぁスイカが大好物なんだよ! 毎年欠かさず切って食ってんだわ!」
ナキは初の異変を見つけて気が緩んだのか――すぐ隣に立つボタニカル柄のトランクスを着用したマネキンを華麗にスルーし、その場を離れてしまった。
「あと二匹ブッ潰せば俺の勝ちだろ? 余裕でブチのめしてやるぜ!」
「ブフッ……見つけられるかな?」
「ッフ!ぶっちゃけキツいんじゃない?」
「っ!はははははっ!」
「マジでっ……ヒヒヒヒヒ!ナキやってる!」
中型以上のホームセンターでは、作業服コーナーの一角に男性用下着が並んでいることは珍しくない。だがプール・海水浴用品売り場にトランクス姿のマネキンが展示されていることなど、現実にはまずあり得なかった。
「傍から見ると結構浮いてるのにね」
「ホントに」
まして、今回のステージは小規模なホームセンターである。そんな店にマネキンが置かれていること自体が明らかな異変であり、ボタニカル柄のトランクスは駄目押しに過ぎなかった。
「テディ。一気にいかれて同点になったらどうすんだ?」
「延長戦でしょ?」
「そうなるかな。やーこのゲーム楽しいね」
その後も疑っては見送りを繰り返し、思い切って発砲する。
『パシュウン!』
「これ違ぇのかよ!」
「ナキー!?」
だが二発続けてアノマリー以外を撃ってしまった。
「あと一発誤射したら終わりだぞ!」
「そのまま負けろ」
「直感で撃ちすぎ。それ通用するのホットだけだから」
タイマーは残り三十秒を告げる。ナキは何かを感じ取ったのか、ペット用品の棚の前で立ち止まった。
「ペットシーツの隣にオムツ……?妙だな」
「といいますと?」
「犬猫はなぁ……オムツなんて穿かねーんだよ!」
「「えっ」」
『パシュウン!』
「なにーーっ!?」
ホットとユイガの制止も虚しくトリガーは引かれ、異変ではないものを撃ち抜いてしまった。
「あはははは!ペット用オムツで終了した……!」
「ナキさぁ!人間だけがオムツ穿くワケじゃないから!」
「ユイガも穿いてんだっけ」
「うん今も……って忘れてた!これ撮影外じゃん!やめてそういうの」
ナキはペット用オムツが本当に存在すると知り、気を取り直して残りの正しい異変に向かう。
「これ気づかねぇだろ!」
「まぁ僕とホットはまだいいとして……」
「俺を見逃すのはやってるだろ」
「タンドリーは……ブハハハハハハ!」
ナキは改めてトランクス姿のマネキンを目にし、腹を抱えて笑う。こうして『アノマリーミックス』ハンター対決は、二対一でタンドリーが勝利を収めた。
「ガバガバハンターだったねぇ」
「シンプル目が悪い」
「心配になるレベルで下手なんだけど」
嘘みたいに衝撃的な見逃しを連発し、アノマリーはハンター二人のポンコツぶりを容赦なくイジる。
「ご自慢の才能が完全に死んでてゴミだったな」
「おいゴミは言い過ぎだろカス野郎!」
「これで身の程は分かったか?俺から赤を奪うなんて、百年どころか千年早ぇよ」
「キイイッ……!」
ナキは金切り声を上げる。だがこれ以上は不毛だとでも思ったのか、心を落ち着けるように息を吐いた。
「……悪かったよ。負けは負けだ、潔く黄色を背負ってやる」
「!」
「タンドリー、テメェは初対面の時から不貞腐れたツラしやがって。マジで胸糞悪いスカした野郎だと思ってた」
「草。初対面の印象最悪すぎなんだけど」
「シンプルに寒くて萎えてただけじゃ……」
「テディ!シーッ!」
「だがよ、そんだけアツい根性見せられたら文句も言えねぇわ。もう見くびらねぇ……今度はテメェの土俵で勝負してやんよ!」
「……はぁ」
――そういうとこはちゃんと『先輩』なのかよ……。
勃発させた本人があっさり謝ってしまい、タンドリーは盛大に肩透かしを喰らう。
――こうなったら、敵視してるこっちがダサくなってくるな。
暴君ではない一面もあるのだと知った途端、自分が殺気立っていたことさえ馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「赤もテディが決めた色だし、俺はナキやホットほど熱くはなれねぇけど……てか逆に冷めんだよな。そういう奴等が隣にいると」
「それめっっちゃ分かるんだけど」
「えぇー!?」
「人の所為にすんじゃねぇ!」
「ぶっ……あはははは!」
低燃費コンビのタンドリーとユイガが淡々と頷くと、ホットとナキは熱血派らしく声量を一段上げる。中立派のテディは笑うだけで何も言わなかった。
「本気で活動やってんのは俺も同じだ。ナキがただの人相が悪いトリガーハッピー野郎じゃないってことは……よく分かった」
「おいコイツ仲良くする気ねぇぞ!」
「別に僕たち全員がマブってワケじゃなーいよ。さっきも少しだけ触れたけど……ユイガってホットのことどう思ってる?」
唐突に話を振られたユイガは目を丸くしたものの、すぐ堰を切ったようにホットの印象を語り始める。
「ゲーム下手で使えなくてミス多くて攻撃が遅くて無駄な動きばっかで下手で何か臭い」
「辛辣だよ!」
「下手って二回言われたぁー!」
「臭いって何だよ。どこだよ」
「酷ぇ……」
「でも無理じゃない……。一生懸命なのはホットの数少ない長所」
「「ユイガ……!」」
テディとホットはユイガのいじらしさに胸を打たれ、傍にいたら間違いなく頭をわしゃわしゃ撫でていただろうと思った。
「よしよし。ユイガも素直に本音が言えて偉い!」
「ユイガってホントにツンデレなんだけど」
「俺の口調真似すんじゃねぇ!コロスぞ!」
「……俺ぁ馬鹿だから分かんねぇけどよぉ。要するに適当でいいってことか?」
「そうだな……」
黒猫が毛を逆立てるように反発するユイガと、そんな彼を生暖かい目で受け流す二人を見て――タンドリーとナキは揃って脱力した。
『ポコン』
「……あ。裏プロ来た」
『おもろかったわ。どっちもいい感じにポンコツで終わっとったな』
『本ゲームにおける娯楽性はハンターの技量が低い個体ほど、爆笑指数が高い値を示します』
『皆さんお疲れ様です!途中から観始めたんですけど、お二人とも全力で異変を探してて見応え凄かったです!』
裏プロの三人が一斉にチャットを送ってきたのを見て、テディはすぐ『アノマリーミックス』の専用部屋を立てる。
「このゲーム八人プレイ限定で『ホラー異変モード』が選べるんだよ!」
「えー何それ!やろやろ!」
『目が動くポスター的な異変にしか変身できんってことか。じゃあユイガ……』
「!?」
『……じゃなくてナイアがハンターで』
『嫌です無理ですごめんなさい許してくださいそれだけは!』
『本来であれば【だが断る】と回答したいところですが、今回は私が代行します』
「メトロがハンターか……何か強そうだな」
「そんなに俺らと遊びたいってか……しょうがねーな。やるならガチで来いよ!」
これにて諍いは終結したが――第二幕として、裏プロを交えた『アノマリーミックス』が始まるのだった。
って感じで締めましたが、次回は日常パートです。要望が多かったら……八人プレイのお話もいつか書くかもしれません。




