閑話⑫『ラクトの決意』
父の迎えで帰宅した純花は、自室のベッドでだらだらと動画を見漁っていた。そんな中『BRO・AD』でのテディとネリスの切り抜きショート動画が目に留まる。
――テディがネリス長官にビビってなかったのって、まさか……。
やや高圧的な態度に天才肌のゲームセンス。そして、ふとした瞬間に覗かせるツンデレな一面。共通点を挙げればそれくらいだが、純花にはカレンとネリスがどこか重なって見えた。
――え、あーいうのが好みなの?
「うぎぃ……ぐぐっ……あぇぇ……!」
言葉にならない感情が煮詰まり、奇怪な鳴き声が零れる。純花はずっと悩んでいた。
――結局、外で『糸哉お兄ちゃん』って呼んでみたけど、イマイチしっくりこなかった……。入学までにテディ以外の呼び方考えなきゃ……。テディとカレン先輩のことも怖くて聞けなかったし……。
兄によると、尋ねた際に糸哉は笑顔で『ただの先輩だ』と答えたらしい。純花はとりあえずその言葉を信じることにした。
――別に、テディに一生彼女が出来なくていいなんて思ってない……お兄ちゃんと同じで、活動が減ったりしないなら、別に……。
そう思う一方で、自分を見てほしい、近いところにいたい――そんな我儘な願いが胸の中で膨らむこともある。今日はその想いが、これまでで最も大きくなっていた。
――純花だって……!お兄ちゃんみたいに頑張れるんだから!
彼女は決意をそのまま指先へ乗せ、ある人物の連絡先をタップした。
☆彡
『――あと、ついでに聞きたいことあって……テ、テディってどんなお菓子が好きなの?』
『――』
『いや何でも食べるのは知ってるけど……その中でも特に!みたいなのあるじゃん。付き合い長いんだからそういうの……』
『――』
『ぅ……っ。そうだよバレンタインだから!悪い!?』
『――』
『するよ!テディ別に手作り平気でしょ!?』
『――』
『だから何でも……が一番困る……もっと頂戴。ケーキ系とかクッキー系とか』
『――』
『チョコクロ……!?ぅぅ……ぐぐぐ』
『――』
『真剣に聞いてるんだからいい加減にして』
『――』
『それでもシュークリームかぁ……む、難しそうなんだけど』
『――』
『あーうるさいうるさい。やってみてから考える!』
『――』
『あ、あと……カレン先輩以外でテディと仲良い女の人って』
『――』
『今ガチキモっつった!?いいじゃんちょっと探るくらい!もういいっ!バイバイ!』
純花の心情と今後の目標を示唆しましたが、次回バレンタイン編ではないです。ごめんなさい。




