↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
156/234

 第144話『泣きっ面に蜂』

糸哉たちより年上に見える少年はそう吐き捨てるなり、使い古されたコントローラーを何の前触れもなくこちらへ投げつけてきた。


『バシッ!』


「お、幸樹ナイスキャッチ」


いち早く前に出た幸樹はコントローラーを受け止め、高圧的な少年を鋭く睨み返す。


「ウダウダしてねぇで来な。相手してやる」


「相手、って……」


「……『メテブラ』か」


『メテブラ』――正式名称『大激闘メテオブラザーズ』とは、宇宙を舞台にした対戦型格闘ゲームだ。個性豊かなファイターたちが宇宙空間に建てられたステージで激突する。


勝利条件は『相手をステージの外へ落とすこと』とシンプル。攻撃を受けると衝撃ゲージが蓄積し、百%を超えると大きく吹き飛ばされやすくなるため、一気に場外へ押し出すチャンスとなる。


シンプルな操作で爽快なアクションを楽しめる一方、衝撃ゲージの管理や必殺技を狙うタイミング、ステージギミックの活用など奥深い戦略性も魅力。


ゲーム好きなら知らぬ者はいない大人気格闘ゲームで、幸樹はまだ名も明かしていない少年と勝負する流れと なった。


「……僕がやろうか?何か向こうの自信凄いし」


「俺がやる。あんな奴の相手しなくていい」


「うぇっ」


――確かに印象最悪だけど、そんな気に喰わなかった?


初対面の相手にここまで露骨な敵意を見せる幸樹を見て、糸哉は目を丸くする。


「何でこうなったのかはよく分かんないけど……幸樹頑張れー!」


とはいえ彼の実力は中級者以上。余計な口は挟まず、そのまま送り出すことにした。


今回のルールはお互い残機を三機ずつ所持し、先に相手の残機を全て失わせた方が勝利となる。


「泣きっ面拝んでやんよ!」


「そのキャラで耐えれんのか?」


『3……2……1……Fight!』


画面ではスーパーヒーローを選んだ幸樹と、魔王を選んだ少年が激突する。少女は糸哉たちを中に入れた後、どこかへ行ったきりまだ帰って来ない。


メテブラでは武器や魔法を駆使するファイターもいるが、今回は両者とも身体能力と格闘技を武器とするインファイター同士。拳と蹴りが飛び交う接近戦となった。


開始から三秒。幸樹が操作するヒーローが跳び上がった魔王を下から拳で打ち上げ、そのまま空中コンボへ繋げる。一気に上空へ吹き飛ばされる魔王だったが、幸樹が追撃のため間髪入れず距離を詰めた瞬間――


「オラァッ!」


――反対に魔王がダッシュで踏み込み、鋭い拳の連打を叩き込んだ。


「っ!」


今度はヒーローが軽く吹き飛ばされる。そこへ魔王はジャンプで追いつき、空中で蹴りの連撃を浴びせた。


「はあっ!」


「痛ってぇ!」


着地したかと思えば休む間もない。なおも宙に浮いたまま身動きの取れないヒーローを、魔王は下から何発もの拳で打ち上げ、さらに高空へと運んでいく。


しかし、ラッシュはまだ終わらない。


魔王はハイジャンプで再びヒーローの懐に入り、先程の蹴りコンボを二セット連続で叩き込んで衝撃ゲージをみるみる上昇させていく。


「うわっ!ヒーローやばいっ!」


このままでは場外へ落ちてしまう。ヒーローは空中ジャンプでステージへの復帰を図るが――


「甘ぇなぁ!」


「くっそ……!」


――その隙を見逃さず、魔王が再び跳躍。無防備なヒーローへ容赦なく蹴りを浴びせる。


「オラ行ってこいやぁー!」


「ぐあっ!?」


さらに場外際(きわ)まで追いかけると、真上から何発も蹴りを叩き込み、そのまま彼方へ吹き飛ばした。


「早っ!?」


ここまで僅(わず)か八秒。ヒーローの残機が一つ消え、衝撃ゲージもリセットされる。


「幸樹頑張れ!」


「……っ」


――コイツ……余裕見せるだけの腕はあるってことか!


幸樹はすぐさま反撃に転じた。衝撃ゲージがおよそ七十%まで溜まっている魔王を、今度こそ撃墜しようと攻め立てる。


「オルァ死ねぇー!」


「くっそ……!」


しかし、少年は攻守の切り替えがあまりにも巧みだった。


攻め返したかと思えば即座に切り返し、幸樹の攻撃を受け流しては反撃(カウンター)を差し込む。

気付けばヒーローの衝撃ゲージは魔王に追いつき、あっという間に追い越されてしまった。


「はーっはっはっは!苦しいなぁヒーローよぉ!」


「っの野郎……!」


そして三秒後。先ほどとほとんど同じコンボを最後まで決め切られ、ヒーローの残機は残り一となる。


「えぇぇ」


――まだ相手は一機も落としてないのに……。


「す、凄い……!」


流石の糸哉も、少年のゲームスキルには舌を巻いた。だが幸樹の闘志はまだ消えていない。


――せめて一機だけは奪う……!


「クソ……!あと少し……!」


ヒーローのかかと落としが炸裂し、ついに魔王の衝撃ゲージが百%へ到達する。


「お!幸樹いけー!」


糸哉が期待に満ちた眼差しを向け、幸樹が大技の力を溜めたその時。


「よーし!喰らぇぇ!」


魔王の必殺技――長い脚から繰り出される後ろ回し蹴り《バックスピンキック》がヒーローの胴体へ炸裂した。


「嘘だろ!?」


「まだ幸樹の衝撃ゲージ半分も溜まってなかったのに……」


勝負を決める一撃として演出が入り、時間がゆっくり流れる。そして画面いっぱいに『GAME SET』の文字が表示された。


「……相当やり込んでんな」


「これはたまげたなぁ……」


――魔王の攻撃性能をここまで引き出すなんて……完全に使い手だ。


圧倒的な試合運びを目の当たりにし、糸哉と幸樹は悔しさも忘れて息を呑んだ。


「いやー!俺今日調子悪いんだけどなぁー!」


「チッ……!」


「煽るねぇ」


一方的に叩きのめされた幸樹の額に青筋が浮かぶ。糸哉は苦笑を漏らし、興奮の残る表情を手で隠した。


――幸樹も戦闘ランクで言ったら実力者のハズなんだけどなぁ……。


勿論、メテブラにも実力を測るためのランク制度は存在する。その名も『戦闘ランク』。


下から順に、流星クラス<星雲(せいうん)クラス<衛星クラス<惑星クラス<恒星(こうせい)クラス<超新星クラス<黒穴(くろあな)クラス――全七段階に分けられていた。


その中でも『惑星クラス』に到達して初めて、上級者への入り口に立てると言われている。


「お前ランクは?」


「……『惑星』」


「ほー。さっきよりは退屈しなかったぜ。もっと手応えあると思ってたけどなぁ」


「っ……」


「マジか……。幸樹も十分強い部類なのに」


幸樹はメテブラを専門にやり込んでいるわけではない。それでもカジュアルプレイヤー相手ならまず負けないだけの実力は備わっていた。


その腕前を、少年は一方的にねじ伏せたのである。


「先に言っときゃよかった。俺の戦闘ランク『超新星』なんだわ。さーせん!」


「ええー!?」


『超新星クラス』――それは黒穴クラスに次ぐ、メテブラ第二位のランクである。


そこは公式大会の優勝経験者やプロゲーマー、あるいはネット上でも名の知れた猛者たちが集う領域だった。


――しかも見た感じ、僕らとそう歳が変わらない……。せいぜい十五、六歳くらいなのに……。


糸哉の喉がごくりと鳴る。この年齢で超新星クラスに到達している時点で、天才と呼ぶ他ないからだ。


「そんなに強いなら……大会とか出たことあるの?ひょっとして有名な人?」


「なわけねーだろ。ちゃんと周り見たか?こっから大会会場までの距離、舐めてんじゃねーぞ。どんだけ時間食うと思ってんだ」


「確かに。ここ僕が前住んでたとこより酷……田舎だね」


「俺は好きなキャラ徹底的に極めて、敵をボコるのが最高に楽しいんだよ。テメェ等もそういうの好きだろ?」


「まぁ」


「おいもっかいやるぞ」


「ん?泣き止んだか?」


「泣いてねーよ!」


「えー次は僕が……」


テディが参戦に名乗りを上げたその時、スマホからシェンの声が流れる。


「見つけた……プレイヤーネーム『hachi(ハチ)』。コイツ大会勢の間じゃ『野生怪物』って呼ばれとる」


シェンがプレイヤー名と使用キャラクターをもとに調査した結果、少年――『hachi』は、魔王使いとして一部で名を馳せる強豪プレイヤーだった。


公式大会への出場経験は一度もない。しかしその実力は大会上位勢に匹敵すると言われ、界隈では『野生怪物』として知られていた。


「ハッチ君!僕ともやろうよ!あ、僕は熊本だからテディって呼んで!」


「オイ糸目!その呼び方ヤメロ」


「じゃあみっつ君」


「殺すぞ。その名前で呼んでいいのはアイツだけだ」


「でもまだ名前聞いてないしなぁ……じゃあナキで!」


「俺ぁ針北満士(はりきたみつし)だ!一文字も掠(かす)ってねーぞ!」


「泣きっ面に蜂でナキ。他人に容赦なく追い打ちをかける天才だから」


「天才って……言いすぎだろオイ」


「そこだけ拾うな」


なんやかんやで糸哉の人当たりの良い笑みに押され、満士は糸哉との対戦を受け入れたのだった。

次回 テディⅤSナキ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。