↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
中学一年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
145/234

 第133話『二人の運命は空回り?』

すると、そこは先程までとは様子が違っていた。


「不気味な鮮魚コーナーになってる!」


「あはは!どの魚も顔色悪いなー」


左手には冷蔵ショーケースが並び、その中には漢(・)字(・)で書かれた札と共に魚が陳列されている。


「え……」


「おっと、これは……」


「何の魚って言ってたっけ」


「サバだね」


「…」


「ふふっ」


画面では、ヒイたちがショーケースの前を右往左往している。操作しているホットの苦悩が透けて見えるようだった。


「これ……か?」


【この魚を取りますか?】


「ねぇテディ何か言って!」


「頑張れ」


「クッ……!」


――反応が読めねぇ……!当たってんのか!?


ホットは単細胞ハラスメントだと心の中で抗議しつつ、勘を信じて【鱒(マス)】を選択。そのままマグロの元へ運んだ。


【モグモグ……美味しいんギョ】


「おっ!食べてる」


「イケた!?ミラクルで正解引いたんじゃない!?」


【じゃあ、あげるんギョ……血祭りに】


「ぇっ」


言い終わるや否や、マグロの頭が勢いよく突き出された。


『バクンッ……ボリゴリッ!』


嫌な咀嚼音と共に、ヒイとメトロの上半身が消えた。そのまま【GAME OVER】画面へ切り替わる。


「ヴッ」


「あれ?ホットも食べられた?」


「マジでさぁ……てかメトロに聞けば一発だろ!」


「サバは鯖と書きます」


「声で言われても分からん!?」


ホットは二人におちょくられるも、正解の【鯖】を選び直して再挑戦する。


【この魚を食べさせる】【目の前でこれ見よがしに食う】


「……一旦食べとくか」


「捌(さば)かせてよー。サバだけに」


「は?」


最初は見送っていた後者を選択すると、ヒイは躊躇なくサバにむしゃぶりつき――骨が喉に刺さって絶命した。


「ホラ死んじゃった!テディがクソ親父ギャグで場を凍らせるから!」


「ごめんっ……我慢できなかった……!」


【モグモグ……美味しいんギョ。じゃあ、渡すんぎょ――】


好物の魚を平らげたマグロは、みるみる活力を取り戻す。


【――引導を】


「正解演出……ふぇ?」


次の瞬間、壁ごと破壊する勢いで隠されていた全身があらわになり、巨大マグロはヒイたちへ襲いかかった。


「えぇー!?」


「ヒャーー!」


メトロは反射的に車椅子を押し、鮮魚コーナーを全力疾走した。


だが三人称視点のゲームであることが裏目に出る。真っ直ぐ走ると巨大マグロが画面を独占し、ヒイたちの姿は完全に隠れてしまった。


「あははは!デカすぎんだろ……!」


「あーー助けてーー!」


悲鳴と爆笑が交錯する中、メトロは突き当たり寸前で車椅子を鋭く切り返した。


『シュピンッ!』


刹那、鋭い切断音が響く。青果コーナーを周回していた厨房カッターが横薙ぎに通過し、巨大マグロを真っ二つに切り裂いた。


切断されたマグロはその場に崩れ落ち、厨房カッターも勢いを失って停止する。


【……!助かったの……?】


【同士討ちによる無力化を確認。運と呼ぶべきかは不明ですが、当方の生存率が上昇しました】


マグロの断面からは血と内臓があふれ出し、濁った目は完全に生気を失っていた。


【死んだ魚の目をしている。今はもう動かない】


厨房カッターも全体が赤黒く染まり、高い硬度を持つ刃にはマグロの肉片や内臓がこびりついている。


【先ほどまでの切れ味は失われている。ただの鉄塊のようだ】


「危ないトコだったねぇ」


「ラ、ラッキー」


作業室へ戻ったヒイたちは、まず忘れずにセーブを済ませる。すると先ほどまでマグロが埋まっていた壁の奥に、新たな通路が現れていることに気づいた。その先には【冷蔵室】と書かれた札が掛かっている。


「あー成程。どうりで見当たらないと思った。冷蔵庫っぽい設備が全然無かったし」


「じゃあここが【冷蔵室】……」


テディが納得したような声を漏らし、ホットは【奥で何かがじっと息を潜めている気配がする】の後に続く選択肢を見る。


【中に入る】【やめておく】


迷うことなく【中に入る】を選択した。すると【本当に?】という文字が表示される。そして、再び同じ選択肢が現れた。


「うわ出たー。再確認してくるタイプね」


「あぁ。もうこれ絶対死ぬやつじゃん……でも入るわ!」


操作主のヤケクソな決断に従い、ヒイたちは冷蔵室へ足を踏み入れると――


『ザワワワワワッ!』


――薄暗い室内で無数の魚が床や棚から飛び跳ね、津波のようにヒイたちへ押し寄せてきた。


『クチャックチャックチャッ!』


「ァー!」


「うわー」


画面を埋め尽くす魚の群れがヒイたちに群がり、二人は骨まで食い尽くされる勢いで飲み込まれた。


「普通サイズの魚でも束になると怖いね……」


「数の暴力……」


普段なら食卓に並ぶ側の魚に蹂躙された一行は、リトライ後に改めて気を取り直す。


ヒイたちは本命である【寿司作業室】へと足を踏み入れた。


まな板や包丁、オートパッカーといった設備は隣の部屋と大差ない。しかし海苔巻きロボットが【寿司食いねぇ!】と元気よく声を張り上げ、シャリ玉ロボットが負けじと【古いねぇ。今の殺し文句は寿司三昧よ!】と応戦した。


「それも……古いんじゃない?」


「どっちも旬過ぎてるよ」


そしてマグロの言っていた通り、部屋の奥には次のエリアへ続く扉がある。


【開かない。暗証番号が必要のようだ】


表示とともに六桁の入力画面が現れた。


「数字と……え、アルファベットも打てる!」


「ブラフかな。それとも本当にアルファベットが必要なのか……」


ヒイたちは解除の手掛かりを求めて再び室内を探り始めた。


しばらくして、賞味期限や値札シールを発行するハンドラベラーを発見する。ヒイが手に取り、カシャッと一枚出してみると――そこには六桁の数字が印字されていた。


「これで開くんじゃない?」


「桁数も一致してはいるね……」


テディはその数字を見た瞬間、嫌な胸騒ぎを覚えた。しかしホットは特に疑うことなく入力を始める。


「えーと……【564219】っと」


一拍の間を置いて【暗証番号が違うようだ】という無情なメッセージが表示されたその時。


『ボッ!ゴォォォォッ!』


轟音が響く。何の前触れもなく巨大なハンディーバーナーが現れ、火炎を噴き上げながらヒイたちを文字通り殺しに行こ(564219)うとしていた。


「やっぱり……」


「罠かよ!」


改めて調べ直すと、普段は酢飯が入っている番重の中から【業務報告書まとめ】と書かれた冊子を発見した。


【業務報告書一。対象:サワラ。

状態:身が柔らかいため、切り身にする際は包丁の角度に注意すること。

備考:桜が咲き始める頃になると、お客様からの問い合わせが増える。売り場への陳列を強化する。


業務報告書二。対象:カジカ。

状態:本日の入荷分は型が良い。鍋物用のパックにするため、アラも捨てずに活用すること。

備考:紅葉が色づき、肌寒くなってくるとよく売れる。明日は少し多めに発注しておく。


業務報告書三。対象:コノシロ。

状態:酢締めにするため、下処理を急ぐこと。鮮度落ちが早いので時間との勝負。

備考:雪が降り積もる時期は特に身が引き締まっていて美味い。温度管理を徹底する。


追記:■■の魚を揃える計画だったが、何故かあの文字だけどうしても書けない】


「あー成程ね?」


「何か分かった!?」


「多分これかな?っていうのは。やー随分ご丁寧なエリアだなー」


扉を開く手掛かりに気付いたテディは、まず【新入社員の日誌】を読み直してほしいと言った。


「ここ……お客さんがミユちゃんに聞いた『スズキの旬っていつだったかしら?』の質問、これの答えは夏なんだよ」


「へー」


「で、業務報告書に書いてある魚……サワラ、カジカ、コノシロの漢字は文字にするとこうだね。今編集で字幕乗せてるんだけど」


「ごめんテディ。俺にも分かるようにチャットで教えて」


どれも分からないホットは、編集された動画で簡単に確認できる視聴者を羨んだ。


「鰆(サワラ)、鰍(カジカ)、鮗(コノシロ)ときて、【■■の魚を揃える計画だったが、何故かあの文字だけどうしても書けない】となると……」


「はいはい!■■の文字に当て嵌まるのは【夏】ってコト!?」


「それか【季節】だと思うんだけど……一旦【夏】って打ってみて」


――でも六桁……ならこっちか。


ホットが閃きのままに夏を意味する英単語【summer】を入力すると――ガチャッと鍵が外れる音が鳴った。


「行けたわ!」


「ナーイス!」


ヒイたちが作業場を出ると、そこにはバックヤードの通路を思わせる空間が続いていた。そして正面の壁には、赤い文字で英文が記されている。


【Thank you for spin one's wheels(無駄な努力ご苦労様です)】


【……私たち本当に、生きてここから出られるのかな】


「ヒイちゃん……そうだよね。まだ十四歳のJCだもんね」


「メトロ!今こそ年長者のカッコいいフォロー!」


極限状態の中、年相応の弱さを見せるヒイ。その姿にテディとホットは、ゲーム内のメトロへ包容力のある対応を求めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。