第102話『爆ぜろ!デスドッチボール!!』
アクションスポーツゲーム『デスドッチボール』――レゾンクラフト内で開発された、ロクラメン考案のオリジナルゲームである。
舞台は刻一刻と環境が変化する特殊アリーナ。飛んでくるボールを捌き、変化する戦場を生き残って相手チームを殲滅を狙うゲームだ。
参加人数は八~十二人。プレイヤーは二つのチームに分かれて対戦する。
◆基本ルール
内容は一般的なドッジボールのルールに沿ったものとなっている。
各チーム内野三名、外野一名でスタート。
二つのチームに分かれ、相手チームへ向かってボールを投げ合う。
ボールを当てられた者はコート外の外野へ移動し、外野から相手内野に当てることができれば再び内野へ戻れる。
◆アビリティ(全プレイヤー共通)
・ジャンプ力上昇
・ボールを投げると、稀に速い速度で飛ぶことがある。
◆イベントルーレット
一定時間ごとに外野に強制発動し、フィールドへランダムな妨害ギミックが出現する。ルーレットを止める役は順番制となっており、相手チームを妨害することもあれば、自チームに被害が及ぶこともある。
◆勝利条件(同チーム共通)
制限時間二十分以内により多く内野に残っていたチームの勝利。
敵チームの内野プレイヤーを全員外野送りにさせたチームの勝利。
☆彡
今回の参加メンバーはロクラメン、ホットとタンドリーの八名。初戦はホット、タンドリー、ヒルト、えんりの通称『これプロチーム』対『ロクラメンチーム』のばたえる、ノックス、ろきはん、におんのチーム分けで行うことになった。
「おぅおぅ!何がこれプロじゃコルァ!」
「ここでキッチリ格の違いってヤツ見せたるからなァ!」
「俺らはヒルトたちみたいに甘くねぇぞ!」
初対面のノックス、ろきはん、におんから威勢のいい宣戦布告を浴びる。だがホットとタンドリーも負けていない。
「そっちこそ!チャンネルを焼け野原にされる覚悟はできてますか!?」
「せめて四肢の一本はなくなると思えよ」
二人は全素材無限使用可能の『レゾンフリーモード』から火炎瓶を取り出し、物騒な笑みで応戦した。
「待て待て待て!何で両手に火炎瓶持ってんだ!?」
「ドッチボールだぞ!?競技変わってるからな!?」
「危ねぇなオイ!投げていいのボールだけだから!」
遠慮のない試合開始前茶番から始まり、全員ドッチボールコートへ入る。最初のジャンプボールはタンドリーとノックスの対決となった。
「お、いきなり赤対決じゃん」
「ノックスー!取れ取れー!」
ここではクリック連打で跳躍ゲージを溜め、より多くパワーを蓄えた側がジャンプボールを制する。 両者は溜め開始と同時に、凄まじい勢いでクリックを開始した。
「鶏が無理すんなって……!」
「うるせぇ!来い!」
『カチカチカチカチッ!』とマイクが拾うほどの連打音が鳴り響く。そして――
「っしゃぁぁぁ!」
「くっ……!」
――最初のボールはノックスが制した。
「ナイス!」
「……よしっ!喰らえぇぇ!」
キャッチしたにおんがそのまま全力投球し、白球が一直線にホットへ迫る。
「うわっ!」
しかしホットは身を捻り、紙一重で回避した。弾かれたボールはそのまま外野のろきはんの元へ渡る。
「オラァまず一人目ぇ!」
「やばっ!」
――これは取るしかない……!
態勢が崩れている状態で剛速球が再び飛んでくる。ホットが歯を食いしばって覚悟したその時。
『バシィッ!』
「えっ……えんりさん!」
「こらぁ!ウチのホットを寄ってたかって狙うんじゃないよ!」
えんりが割り込むようにキャッチするというファインプレーを見せた。
「助かりました!」
「ナイスカバー!」
「よーし!次こっちの番!」
ボールがこれプロチームの外野へ渡った瞬間、ヒルトの頭上に巨大なルーレットが出現する。
「来たぁ!イベントルーレットだ!」
『デスドッチボール』名物――ランダムでフィールドに妨害イベントが発生する危険システム。効果範囲は内野全員。ライフが0になった場合は外野へ送られる。
「頼みますヒルトさん!」
「変なの引かないでください」
「うおおおおおお!!」
ヒルトが気合任せにルーレットを停止すると――
『パサッ』
「は?」
「え?」
「ッ」
「クッ!」
――これプロチームの内野全員の頭上に、ギャルが履くようなパンティーが降ってきた。
失笑して困惑するこれプロと、初っ端からこれが来たかと笑いを堪えるロクラメン。ホットはボールの所在を目で追いつつ、タンドリーの傍に寄った。
「俺ヒョウ柄のTバックもらった」
「紫のレース……何でデザイン違うんだよ。てかこれなんだよ」
「え、パンティーだけど?当たり枠」
えんりは笑いながらそう答えたが、ホットの困惑は深まるばかりだった。
「効果とかあるの?」
「ないよ。パンティーはパンティーだから。もらったらヤッタァ嬉しい!ってなるだけ」
におんは笑いながらポケットへしまう。
「うわ初手パンティーかよ」
「いいなー。俺ピンク色のパンティーがいい」
「ろきはん俺らにもパンティーくれ!」
「ゲーム開始一分でどんだけパンティー言うんだ」
「言い回しがオッサンだ……」
だがこの意味不明なイベントが、後に彼らを救うことになるとは――この時のホットとタンドリーは、まだ知る由もなかった。
続いてルーレット権を得たのはロクラメンチーム外野のろきはんだった。
「っしゃ!当たり来い!」
先ほどはパンティーが降ってきただけの平和なイベントだったが――
「ギャ―!」
――今回はこれプロチームの内野上空に、異様な大きさのカボチャが出現した。
「うわっ!?」
「危ねぇ!!」
『ドォォォン!』
そして容赦なく内野へ落下し始め、ホットとタンドリーは反射的に飛び退く。
「よし避けた!」
「セーフ」
「何っ!やるではないか!」
地面を砕きながら着弾するカボチャを見て、初見の二人は思わず顔を引きつらせた。
「ちなみに直撃すると体力半分飛ぶから!僕がそうなんだけど」
「「えんりさん……!」」
「あはははは!」
時に笑いも交えながら、試合はさらに激しさを増していく。ホットとタンドリーは初プレイながらもどうにか内野に残り続けた。
「……ホット。次のルーレット決めろ」
「オッケー!さぁ来いよノックスさん!」
タンドリーは竹を避けながらホットの背中を押すと、丁度ボールを持っていたノックスが正面にいた。
「よし!バトルだ!」
ここで外野へパスするのは盛り上がらない――そう判断したホットは全力で勝負を仕掛けた。
「ほっ……えっ!?今の当たった!?」
回避したと思ったボールが足先に当たる。光に包まれ、ホットは外野へ転送されてしまった。
「アウトか……おっ?」
だがその直後。ホットとヒルトの間にイベントルーレットが出現する。
「やっぱりな」
――ルーレットが出現するタイミングはボールが外野に行ったタイミングか……!
タンドリーは予想通りの展開に口元を緩め、ホットは力強く拳を握った。
「ホット行け!」
「よーし!唸れ俺のミラクル!」
ホットが勢いよくボタンを叩いた直後――
「「うわーーっ!?」」
――ロクラメンチーム全員の姿が巨大ピーマンに変わった。
「ブハッ!えっ凄!ちゃんとメンバーカラー再現されてる!」
「着ぐるみかこれ……デカすぎんだろ!」
「ホットほんまナイス!これも大当たり枠」
「やっちったなぁ!」
ロクラメンチームが等身大のピーマン人間に変身し、全員腹を抱えて笑う。もっとも当事者達にとっては笑い事ではない。このイベントの効果は当たり判定の拡大。つまり一定時間、回避性能が著しく低下するということだった。
「今だ今だ!」
「ぎゃあああ!」
「ヤメテー!」
ヒルトが嬉々として回り込み、ボールを投げ始める。そして試合終盤。残り五分になった瞬間コート中央に新たなボールが出現した。
――タンドリーはノーコンとか言って煽ってたけど……敵チーム全員このゲーム上手い枠だろ!
ホットの読みは当たっていた。ピーマンと化したロクラメンチームは不利な状況にも怯まず、キャッチに専念して積極的に攻勢へ転じていく。
こうして相手の弱体化中に決めきれず、ロクラメンチームはばたえるとにおん。これプロチームはタンドリーのみとなった。
「何でこっちが劣勢になってんだよ!」
「遥か彼方へ飛んでけぇぇ!」
ばたえるが大きく振りかぶると、放たれたボールが黄色く発光した。
「何あれ!?」
「速っ……」
タイミングと運が噛み合うことで発生する威力倍増エフェクト。その想定外の一撃にタンドリーは反応すら間に合わず――『ドゴォン!』と派手に吹き飛ばされてしまった。
「ぐおわーーっ!」
「「タンドリーーー!」」
こうして大混戦となった第一試合は、惜しくもロクラメンチームの勝利で幕を閉じたのだった。
「はいEasy win~」
「お前等ザコかよ!」
「信じられないくらいヌーブかましてんじゃねーか!」
「よっわよっわよっわー」
「うぜええええええ!」
「ワンモアワンモア!」
「ホント黙っとけー!」
「辱めてやるよ……!」
完全に火が付いた四人は、再び同じチームで挑むことを決める。全員実況歴や登録者数といった立場の違いなど忘れ、ひたすら『デスドッチボール』に夢中になっていくのだった。




