第101話『ロックなメンズ』
◆所属メンバー
ノックス
挨拶順は4番目。愛称はノック、ノッ君。メンバーカラーはワインレッド。好きな食べ物は鶏白湯ラーメン。苦手な食べ物はつけ麺。立ち絵・レゾンクラフトのスキンはサブカル風の黒い長袖フーディーにダメージジーンズを着用。首元にはロクラメンのロゴ入りネックレスを下げている。赤髪に紫色の瞳を持つ男性。
レゾクラに関する知識やスキルはメンバーで最も高く、環境理解やギミックの扱いに長けている。一方でその知識を罠や誘導といった仕掛けに活用する場面が多い。
撮影の内外を問わず、ドッキリの仕掛け人や首謀者になることが多い。中でもヒルトが個人雑談を配信している最中に自宅へ突撃し『総銀歯ドッキリ』を仕掛けた一件は、SNSでトレンド入りを果たした。
そのため、グループ内でも特に予測不能かつ危険人物として認識されている。
ろきはん
挨拶順は5番目。愛称はろっきー、はん太。メンバーカラーはグリーンフロス。好きな食べ物は芋あん団子。苦手な食べ物はみたらし団子。立ち絵・レゾンクラフトのスキンは英字ロゴが入った白と緑のマウンテンパーカーに黒のワイドパンツを着用。緑色の髪にアンバーの瞳を持つ男性。左目はロクラメンのロゴが刺繍されたバンダナで隠している。
本人も認めるほどの人見知りで、多人数配信ではまともに会話へ入れない。しかし他実況者はそんな反応を面白がり、積極的に話を振っては彼を更にどもらせていた。まさに北風と太陽状態。
左目を隠している理由については、高校時代にばたえるが披露したうろ覚え英語ラップに大笑いし、笑い泣きのあまり溶けたと語られている。
におん。
挨拶順は6番目。愛称はにお、にょん。イメージカラーはランプブラック。好きな食べ物は松茸。苦手な食べ物は椎茸。立ち絵・レゾンクラフトのスキンは錬金術師をイメージした黒基調のスーツにプレイシーズを着用。ネクタイにはロクラメンのロゴ入りネクタイピンを付けている。ミッドナイトブルーの髪に赤い瞳を持つ男性。
グループ内ではツッコミ役のポジションに立つことが多く、暴走しがちなメンバーに対して軽快な言葉で場を整える役割を担う。
また、最も花を好む人物として知られており、メンバーが死亡した際には必ず花を手向けるという独特の習慣を持つ。彼が死亡すると決まって食料より多く持ち歩いている花が辺り一面にばら撒かれるのが恒例となっている。
――以上、インターネット百科事典サイト『ウィキバンク』の該当項目から一部を中略して引用。
☆彡
「……後半クセ強ぇな」
「ノックスさん赤なんだ。タンドリーと色被ってる」
ホットは事前に動画で残りのメンバーのスキンと声は把握していたが、ネットのプロフィールで文字化されるとまた違った味があると感じた。
「ただ人物紹介流し読みするだけじゃおえんで」
すると通話に入って来たシェンが、いつもより一段低い声で続ける。
「もういっぺんチャンネル登録者数と活動歴を見比べてみ。芸人でもピンよりコンビやグループの方が売れやすいって言われとるよーに、ゲーム実況界も同じじゃ。ソロよりグループ実況の方が伸びやすい傾向にある」
「まぁ……でも十一万人って十分凄い部類なんでしょ?俺らがシェンの加護ってチート使ってるだけで」
「他は血涙流しながら伸ばす工夫凝らしてんのにな」
「そ。俺のお陰で一年先輩のロクラメンに数字で十倍以上の差をつけとる……ここまで言えば、向こうがお前らをどう見てる可能性があるか分かるな?」
ホットとタンドリーは同時に口を噤んだ。
普段なら登録者数だの再生数だのを気にする性格ではない。だが『同じ事務所の後輩芸人が自分たちより先に大ブレイクしている』と置き換えると、ロクラメン側の複雑な感情を理解できた。
「でもロクラメンさん初対面の時からずっと丁寧で優しかったよ」
「登録者数のことで嫌味とか言われたこともないしな……表に出してねぇだけか」
「思っとるに決まっとるじゃろ。数字気にせんゲーム実況者なんか存在しねーわ。一応これプロはロクラメンと完全に同ジャンルって訳じゃねーけぇそこまで露骨にバチバチしとらんけど。もう気にするレベルにならんくらい差ぁ開いとるしな」
シェンはそこで一度区切り、続ける。
「ロクラメンと初コラボした時点で既に登録者数は追い越しとった。しかもテディは当時ソロ実況者だった上、おっさん設定でやっとる。あれのお陰で向こうのファンも必要以上に荒れんかったんよな」
「あぁー。同じジャンルでも実況スタイルが違うから、ニッチだか需要だかが差別化されてたってこと?」
「そうじゃな」
「ソロ実況者もグループ実況者も同じ土俵だろ。そんなポジショニング違うか?」
「ファンは思考にニトロエンジン積んどるけーな。自覚無しにライバル視しとる奴等は一定数おる」
「「はぁ……」」
ホットとタンドリーは、ようやく感覚的に理解し始めていた。
「しかもテディ初共演の収録で『いつかこれプロも六人組実況グループにして、レゾクラ企画もバンバンやっていきたい』って宣言しとる」
それは彼が以前から掲げていた目標に過ぎなかった。だがその発言を境に、一部ファンの間では密かに想像が膨らんでいった。
『これプロが本格的にグループ実況へ移行したら、歴が近いロクラメンと真正面から比較されるんじゃないか』――そんな勝手な物語が、視聴者側で一人歩きし始めていたのだ。
「えぇ。じゃあ俺ら、実は裏で結構色々言われてたりすんのかな」
「どうでもいい。他人が勝手に対立構図作って盛り上がってるだけだろ。こっちは別に戦ってるつもりねぇし」
ホットが微妙な顔でぼやくが、タンドリーの声音は驚くほど淡白だった。
「向こうも好感度気にしてんなら収録中は良識あるだろ。人数も今回俺とホットだけ……お前は向こうが持ってきた企画でメタボコにされないことだけ考えろ」
「分かった……アクションゲームだといいな」
「だからって俺に全部押し付けんなよ」
露骨に不安そうな声を漏らすホットに、タンドリーが呆れ半分で突っ込む。軽口を叩き合いながらも、二人の表情にはどこか緊張が滲んでいた。
今回は単なるコラボではない。
数字、知名度、ファン同士の空気感――表面上は穏やかでも、その裏には様々な感情が渦巻いている。
それを知ってしまった以上、以前のような気軽さだけでは臨めなかった。
「おまけにテディ抜き……『干支組』にやれんのか?」
「「やったらぁ!」」
こうしてホットとタンドリーはシェンの忠告を胸に刻み、コラボ収録当日を迎えることになるのであった。
おまけ『ユイガの初ブログ』
ユイガ加入後、これプロチャンネル有料会員向けブログの件も着々と話が進んでいた。
「来週からユイガも書いてくれない?」
「はぁ……ハイ」
「呼吸が嫌そう……木曜日ね」
「あーい」
テディにそう頼まれると、ユイガは深いため息と共に机へ突っ伏した。
――俺も文章書くの別に好きじゃないんだけど……。
ユイガも月額百円の会員に入っており、テディとタンドリーのブログは毎週しっかり読んでいる。だからこそ『俺はSNSアカウント作るんで許してください』などと流石に言えなかった。
――前三人が初回から自由だったし、逆に俺はちゃんとしてみるか。
彼はいらなくなったプリントの裏を下書き代わりに使い、何度も書いては消してを繰り返す。
そうして三十分以上格闘した末――齢十二歳のユイガが、生まれて初めて書いたブログがついに完成した。
☆彡
初めまして。
このたび新しく活動に参加することになりました。木曜日担当のユイガです。
せっかくなので初回ブログらしく先輩方の印象でも書こうと思います。
(前三人のブログ何の参考にもならなかったんだけど)
まずはこれプロのリーダーであり、この前同居人のライアンにお姫様抱っこで寝室に運ばれたテディ。
動画だと結構ほにゃほにゃしてるお兄さんイメージあると思うんですけど、裏では普通にホガフガしたお爺ちゃんです。
二人目はツッコミの化身タンドリー。いつも真顔で怖い印象があると思うんですが、撮影外ではよくその顔でホットをしばき倒してます。(俺はされたことないけど)
ゲームに関しては僕の方が得意なジャンル多いので、そこも今後見せていけたらと思います。
殿を固める先輩方の存在が非常に心強いです。
改めてよろしくお願いします……え?『一人足りない?』あぁそういえば。
一緒にやってるソシャゲで俺が天井で迎えたキャラを初回10連で当てた怨敵のホットがいました。マジアイツカス。
☆彡
「――オイこの暴露猫ぉぉ!通話出ぇやコルァ!」
シェンのバチギレ怒号がボイスチャットを揺らしたのは言うまでもなかった。




