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異世界で奴隷ハーレム作って悪役令嬢を嫁にもらうまで  作者: まゆな


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地震と水不足



 アレンが九歳になったある日のことだった。


 夜もすっかり更け、村の誰もが眠りについていた頃――。


 ゴゴゴゴ……。


 突然、地面が揺れた。


「……ん?」


 眠っていたアレンは、揺れによって目を覚ました。


 家そのものが大きく揺れるほどではない。


 けれど、ベッドの上に寝ていたアレンには、はっきりと地面が揺れたことが分かった。


「今の、ちょっと大きかったな……」


 前世で地震を経験したことのあるアレンにとっては、そこまで珍しいことではなかった。


 感覚的には震度三くらいだろう。


 大したことはない。


 そう判断したアレンは、もう一度眠ろうと布団をかぶった。


 すると――。


「……うぅ……」


 近くから、小さな泣き声が聞こえてきた。


「カレン?」


 アレンが声をかけると、カレンが涙を浮かべながらこちらを見た。


「お兄ちゃん……怖いの……」


 そう言って、カレンはアレンに抱きついてきた。


「地震が怖かったのか?」


「うん……。地面が揺れた……」


 カレンにとって、地面そのものが揺れるという経験は初めてだった。


 それなら怖くて当然だ。


「じゃあ、一緒に寝ようか」


「いいの?」


「ああ」


 アレンが布団を少し持ち上げると、カレンがその中へ入ってくる。


 アレンの隣にぴったりとくっついたカレンは、しばらくすると少しずつ落ち着いていった。


「お兄ちゃんと一緒だと、怖くなくなったよ」


「そうか」


「お兄ちゃん、すごい」


「何が?」


「地震があったのに平気だから」


「まあ……慣れてるからな」


 アレンは小さく笑った。


 家の外では、村人たちが騒いでいる声が聞こえていた。


「大丈夫か!」


「家は壊れてないか!」


「子供は無事か!」


 そんな声があちこちから聞こえてくる。


 けれど、アレンは特に気にしなかった。


「もう大丈夫だろ。寝よう」


「うん」


 カレンも安心したのか、アレンにくっついたまま目を閉じた。


 二人はそのまま眠りについた。


 翌朝。


「アレンー!」


 家の外から、聞き慣れた声が聞こえてきた。


「リサか?」


 アレンが外へ出ると、そこにはリサが立っていた。


「昨日の地面が揺れたの、怖かったよ!」


「そんなに?」


「すごく怖かった! 布団から出られなかったよ!」


 昨日もおねしょしたらしい。


 リサは昨日の恐怖を思い出したのか、身振りを交えながら話している。


「カレンは大丈夫だった?」


 リサが家の中にいるカレンへ尋ねる。


「うん。お兄ちゃんと一緒だから大丈夫だったよ」


 カレンは胸を張って答えた。


「えっずるい……」


 リサがアレンを見る。


「どうしてアレンは大丈夫なの?」


「どうしてって……」


 アレンは少し考えてから答えた。


「よくあることじゃん」


「「初めてだよ!」」


 アレンとリサの声が、見事に重なった。


「……あれ?」


 アレンが首を傾げる。


「そういえば、ここでは初めてだったか」


「初めてだから怖かったんだよ!」


 リサが呆れたように言う。


「そういうものか」


 アレンにとっては前世で何度も経験した地震だったが、この村の人々にとってはそうではない。


 アレンはその違いを改めて実感した。


 そのときだった。


「なんか今日は騒がしいね」


 アレンが村の方を見る。


「昨日、地面が揺れたからだよ」


「でも、あれから揺れてないし、大丈夫だよ」


 アレンがそう言った直後――。


「アレン! 大変だ!」


 父親が慌てた様子で家へ駆け込んできた。


「どうしたの?」


「井戸から水が出なくなった!」


「え?」


「みんなで川に水を汲みに行くぞ!」


 父親は急いで準備を始める。


「僕一人で大丈夫だよ」


「そうか?」


「ああ。水を汲んできたら、樽に入れておくよ」


「分かった。頼んだぞ!」


 父親はそう言い残して、村の大人たちと対応策を考えるために村長宅に向かった。

 アレンは父親の姿が見えなくなるのを確認する。


「さて……」


 誰も見ていないことを確認すると、アレンは水魔法を使った。


 川から水を運ぶより、魔法で済ませた方が圧倒的に早い。


 あっという間に樽を満たすと、アレンは村の様子を見に行った。


 すると、村人たちは畑の前で頭を抱えていた。


「どうやって水を撒けばいいんだ……」


「井戸が使えないんじゃ、畑まで水を運ぶのは大変だぞ」


「川まで何度も往復するしかないのか……」


 どうやら飲み水だけではなく、畑の水やりも問題になっているらしい。


「水路を作ればいいのに」


 アレンが何気なく呟くと、カレンがアレンに聞く。


「水路って何?」


「川から村まで、水の通り道を作るんだよ」


「そんなものが作れるの?」


「作れば、川から水を引いてこられるでしょ」


 アレンが説明すると、リサが村人たちの様子を見て言った。


「アレン、お父さんたちが困ってるよ。助けてあげて」


「そうだな……」


 アレンは少し考えた。


 自分なら水路を作ることもできる。


 土魔法を使えば簡単だ。


 しかし、魔法で水路を作ったことが村人たちに知られれば、色々と説明しなければならなくなる。


 それは避けたい。


「ちょっと川を見に行くか」


「うん!」


 三人は川へ向かった。


 川まで来ると、アレンは周囲を確認する。


「さて……どうするかな」


 水路を作るのではなく、川そのものを村の近くまで持ってくればいい。

まだ村人は川をみにきてない、今なら何をしてもばれない。


「ここなら……」


 アレンは土魔法を使い、川の土手を削った。

 本流を大きく変える必要はない。分流を作って、村の近くを通せばいい。


 村の近くまで川の水を通す。


「これくらいなら……」


 アレンは満足そうに頷いた。


 あとは村の大人たちが、必要なら水路を掘ればいい。


 そう考えて村へ戻った。


 村に帰ると、ちょうど父親が戻ってきた。


「アレン、今年の収穫はまずいかもしれない」


「昨日地面が揺れて、井戸の水が出なくなったけど……川が村に近くなってたよ」


「……そんな馬鹿な」


 父親は半信半疑だった。


「川が近くなるなんて、そんなことがあるわけ――」


 そこまで言って、父親は川の方へ走っていった。


 しばらくして――。


「大変だ!」


 川から戻ってきた父親が、大声で叫んだ。


「川が近くなってるぞ!」


「えっ?」


「これなら水を汲みに行くのが楽になる!」


 その声を聞いた村人たちが集まってくる。


「本当か?」


「川までの距離が短くなってる!」


「これなら毎日水を運べるぞ!」


「助かった!」


 村人たちは一気に喜び始めた。


 アレンはその様子を見ながら、ぽつりと呟いた。


「……水路作らずに、汲むのかよ」


 もっとも、川までの距離が短くなっただけでも、以前よりはずっと楽だ。


 その後、村では水の確保が以前より簡単になったことで、少しずつ畑を広げていくことになった。


 水を十分に確保できるようになれば、それだけ作れる作物も増える。


 やがて村の畑は、以前より広くなっていった。


 村が少し豊かになっていく。


 そのきっかけを作ったのが誰なのか――。


 村人たちは誰も知らない。


 アレン自身も、それをわざわざ教えるつもりはなかった。


 こうして、アレンの唯一ともいえる村への貢献は、誰にも知られることなく終わったのだった。

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