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アイアンゴーレム再戦


 アレンが身体強化を使えるようになったのは、カレンの攻撃手段を考えていたことがきっかけだった。

 ライトとライトシールドしか使えないカレンでも、魔物と戦えるようにしたい。

 そう考えて、魔力を身体に巡らせる方法を試した。

 そして、カレンは身体強化を覚えた。

 その結果は、アレンの予想以上だった。

 ウサギと対峙したカレンが、突っ込んできたウサギを殴る。

 すると――。

 ウサギが吹っ飛んだ。

「……」

 アレンは、その光景を見て固まった。

 カレンでも、ウサギを一撃で吹っ飛ばせる。

 ならば、自分が使ったらどうなるのだろう。

 アレンも身体強化を試してみた。

「……すごいな」

 身体が軽い。

 走れば、今までよりずっと速い。

 跳べば、高く跳べる。

 カレンでもあれだけの力が出せるのなら、自分が使えばもっと強いはずだ。

 身体強化の強化倍率がどれくらいなのか、アレンには分からない。

 ただ、カレンがウサギを倒せるほど強化されることは分かった。

 けれど――。

「これ、何に使えばいいんだ?」

 アレンは首を傾げた。

 普通の魔物なら、ストーンバレットで倒せる。

 わざわざ身体強化で殴る必要はない。

 それに、硬いものを殴れば自分の拳が痛くなる。

 特にアイアンゴーレムなんて、全身が鉄だ。

「ゴーレムを殴るのは無理だな」

 そう考えると、アレンにとって身体強化の使い道は一つしかなかった。

「速く動ける」

 それだけでも十分便利ではある。

 魔物の攻撃を避けたり、移動したりするのには役に立つ。

 けれど、それ以上の使い道は思いつかなかった。

     ◇

 そして、アレンが八歳になった。

 ある日、アレンは久しぶりにダンジョンへ向かっていた。

 目的は決まっている。

 五階層を守るアイアンゴーレム。

 以前は、まったく歯が立たなかった。

 ストーンバレットを二発撃っただけで、ほとんどダメージを与えられなかった。

 そして反撃を一度受けただけで、

「これは無理だ」

 と逃げ帰った。

 だが、今のアレンには身体強化がある。

 これなら、もう一度挑戦できるかもしれない。

 アレンはダンジョンへ入り、魔物を倒しながら階層を進んでいく。

 そして、ついに五階層へたどり着いた。

 その奥にいるのは、以前と変わらない巨大な鉄の魔物。

 アイアンゴーレム。

「……今度こそ」

 アレンは気を引き締める。

 アイアンゴーレムが動き出した。

「身体強化」

 アレンは身体に魔力を巡らせる。

 ゴーレムが拳を振り下ろす。

 しかし――。

「遅い」

 アレンは軽く横へ動いた。

 拳が目の前を通り過ぎる。

「これなら、攻撃が当たる心配はなさそうだ」

 以前は、ゴーレムの動きが速く感じられた。

 今は違う。

 身体強化によって身体能力が上がったアレンには、ゴーレムの動きが遅く感じられる。

 攻撃を避ける。

 距離を取る。

 また避ける。

 これなら大丈夫だ。

「ストーンバレット!」

 アレンは石の弾丸を撃ち出した。

 ゴッ!

 ゴーレムに命中する。

 しかし――。

「やっぱり、これだけじゃあまり効かないな」

 ストーンバレットの威力そのものは変わっていない。

 遠距離から撃つだけでは、大きなダメージにはならない。

 アレンはゴーレムを見ながら考えた。

 今までは、遠くから攻撃することしか考えていなかった。

 でも、今なら近づける。

 ゴーレムの攻撃は当たらない。

 だったら――。

「近くから撃てばいい」

 アレンは身体強化で一気に距離を詰めた。

 ゴーレムが拳を振り下ろす。

 横へ避ける。

 そのまま懐へ入り込む。

「ストーンバレット!」

 ゴッ!

 同じ場所に命中した。

 アレンはすぐに離れる。

 ゴーレムが攻撃してくる。

 避ける。

 また近づく。

「ストーンバレット!」

 同じ場所。

 また避ける。

 また近づく。

「ストーンバレット!」

 何度も同じ場所へ石の弾丸を叩き込んでいく。

 遠距離からばらばらに攻撃するのではない。

 同じ場所だけを狙う。

 少しずつ。

 確実に。

 やがて、ゴーレムの身体に亀裂が入った。

「もう少し!」

 アレンはさらに接近する。

「ストーンバレット!」

 ゴッ!

 亀裂が広がる。

「もう一発!」

 ゴッ!

 そして――。

 ピシッ。

 アイアンゴーレムの身体に大きな亀裂が走った。

 その身体がぐらりと揺れる。

 ドォン!

 巨大な鉄の身体が、地面へ倒れた。

「……」

 アレンはしばらく動かなかった。

 そして、倒れたゴーレムを見つめる。

「……勝った」

 以前は、まったく歯が立たなかった。

 それが今は倒せた。

「やった……!」

 アレンは嬉しそうに拳を握った。

 ついに、先へ進める。

 五階層の守護神を倒したのだから、その先にはまだ見たことのない階層がある。

「行ってみよう」

 アレンは先へ進んだ。

 階段を下りる。

 そして――。

「六階層……」

 新しい階層へ足を踏み入れた。

 そこは、今までとはまったく違う場所だった。

 薄暗い。

 静かだ。

 そして、そこかしこに墓が並んでいる。

「……」

 墓地だった。

 風が吹く。

 ひゅう、とどこからともなく音が聞こえる。

 アレンは黙って周囲を見回した。

「……」

 しばらく考える。

 そして――。

「よし、帰ろう」

 アレンは踵を返した。

 せっかく五階層の守護神を倒したというのに、六階層へ進んだ直後の撤退だった。

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