レベルアップ
アレンが七歳になった。
六歳の一年間で、アレンの生活はずいぶん変わった。
ダンジョンを見つけてからというもの、四階層までの探索はすっかり日課になっていた。
五階層にいるアイアンゴーレムだけは別だ。
あれだけは何度挑んでも倒せない。
だから今のアレンにとって、ダンジョン探索とは四階層までを安全に進み、魔石を集めて帰ってくることだった。
「今日も結構集まったな」
倒したウサギやダンジョンの魔物から手に入れた魔石を確認する。
魔石はマイルームの補充に使える。
そして、石鹸やシャンプー、リンスなど、将来町で売るつもりの品を増やすためにも必要だった。
そのため、
ダンジョンで魔石を集める。
↓
マイルームの商品を増やす。
↓
増やした商品の一部を将来のために保管する。
という流れが、いつの間にかアレンの日課になっていた。
「十歳まで、まだ三年か……」
アレンは小さく呟いた。
村を出られるのは十歳。
それまでは、できることを少しずつ増やしていくしかない。
*
畑のほうも変わっていた。
以前はアレンも一緒に世話をしていたが、最近ではリサが中心になっている。
「アレン、今日は私がやっておくから、ダンジョンに行くなら行ってきていいよ」
「本当に?」
「うん。もう慣れたから」
リサはそう言って畑へ向かっていく。
アレンはその背中を見送りながら、
「助かるなぁ」
と呟いた。
リサは魔法の訓練も続けている。
とはいえ、彼女が魔法を覚えた目的は戦闘ではない。
畑を耕したり、農作業を楽にしたりするためだ。
アレンもそれを分かっているので、無理に戦闘魔法を教えようとはしなかった。
*
その日の夕方。
アレンはいつものようにマイルームへ入った。
「よし。今日の魔石は……」
いつものように確認しようとして――
「……ん?」
足を止めた。
「……あれ?」
何かがおかしい。
いつもなら、見慣れた家具や棚がすぐ近くにある。
ところが今日は、妙に距離がある。
「……広くない?」
アレンはゆっくりと周囲を見回した。
壁が遠い。
家具を置いている場所も以前より離れている。
部屋全体が、明らかに広くなっていた。
「えっ?」
アレンは慌てて部屋の中を歩き回る。
隅まで行って確認してみる。
間違いない。
今までよりも明らかに広い。
「なんで?」
昨日まではこんな広さではなかった。
何かを持ち出したからでもない。
新しい家具を置いたわけでもない。
それなのに、マイルームそのものが広くなっている。
「……もしかして」
アレンの頭に、ある言葉が浮かんだ。
「レベルアップ……?」
ゲームなどでは、一定の条件を満たすとレベルが上がることがある。
そして、このマイルームも女神から与えられた特別なスキルだ。
ならば――
「マイルームにもレベルがあるのか?」
アレンはそう考えた。
以前より明らかに広くなっている。
ならば、これをレベルアップと考えるのが一番自然だった。
「……でも、どうやって?」
そこでアレンは首を傾げる。
レベルアップした原因が分からない。
魔石を集めたからなのか。
お金を貯めたからなのか。
マイルームの商品を増やしたからなのか。
あるいは、それら全部なのか。
「分からないな……」
アレンは腕を組んで考える。
いろいろ思い当たることはある。
だが、これだけでは条件を特定できない。
「まあ、広くなったのは嬉しいけど」
アレンは改めて部屋を見回した。
以前よりも収納に余裕がある。
商品の備蓄場所にも困らなくなりそうだ。
「これなら、もっといろいろ置けるな」
アレンは少し嬉しくなった。
けれど――。
なぜレベルアップしたのか。
その答えは、まだ分からない。
そしてアレンは、この先もマイルームを使い続けながら、その条件を探していくことになるのだった。




