↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/39

無限増殖

文章作成

ダンジョンから戻った翌日。

 アレンはマイルームの中で、棚に並んだ品々を眺めていた。

 ダンジョンで大量の魔石を手に入れたことで、以前よりもマイルームの品を使うことに余裕ができている。

 そもそも、補充に必要なものについては、すでに解決の目処がついていた。

 ウサギを定期的に狩るようになり、魔石を手に入れられるようになったからだ。

「これなら、今まで我慢していたものも少しずつ使っていけるな」

 アレンは棚から石鹸を一つ取り出した。

 白く滑らかな石鹸。

 村では石鹸そのものが普及していないため、今まで人前で使うことは避けていた。

 マイルームの中では何度も使っている。

 泡立ちもよく、洗い上がりもさっぱりする。

「これ、町で売ったらどうなるんだろう?」

 十歳になれば村を出る。

 その後は大きな町で生活することになる。

 冒険者として活動するなら、お金はいくらあっても困らない。

 そしてマイルームには、地球にあった品がたくさんある。

「せっかくだから、町で売れそうなものを今のうちに増やしておこう」

 アレンはそう考えた。

     *

 数日後。

 いつものように行商人が村を訪れた。

 アレンはいつもの品を売り終えたところで、少し迷ってから声をかけた。

「ねえ、これも見てもらっていい?」

「ん? 何だい?」

 アレンが差し出したのは、一つの石鹸だった。

 行商人は石鹸を受け取ると、珍しそうに眺める。

「石鹸……?」

「うん。自分で作ってみたんだ」

 もちろん、本当はマイルームから持ち出したものだ。

 だが、それを説明するわけにはいかない。

 アレンは自分で作ったということにした。

 行商人は石鹸を裏返したり、匂いを嗅いだりしている。

「ほう……」

「どう?」

「これは……かなり良いな」

「そんなに?」

「ああ。少なくとも、私がこれまで見てきた石鹸とは品質が違う」

 アレンは少し驚いた。

「売れるかな?」

「売れるどころじゃない」

 行商人は真剣な顔になった。

「これは庶民向けの商品じゃない。貴族に見せたほうがいい」

「貴族?」

「ああ。これほど品質の良い石鹸なら、高い値段でも欲しがる貴族はいるだろう」

 アレンは手元の石鹸を見つめた。

 村では石鹸そのものが普及していない。

 だから、これがどれほど価値のあるものなのか、今まで考えたこともなかった。

「……そんなに高く売れるんだ」

「ただし、量には気をつけたほうがいい」

「どうして?」

「こんな品質のものを大量に持っていたら、どこから仕入れたのかと聞かれるだろう?」

「……なるほど」

 アレンは納得した。

 自分の秘密を守るためにも、それは重要なことだ。

 町に出てから少しずつ売る。

 一度に大量に売らなければ、余計な疑いを持たれる可能性も低くなる。

「ありがとう。参考になったよ」

 行商人と別れたアレンは、すぐにマイルームへ戻った。

     *

 マイルームの棚の前に立つ。

「石鹸は貴族向け……か」

 アレンは腕を組んだ。

 そして、ふと別のものを思い出す。

「そういえば……シャンプーとリンスもあるよな」

 アレンは棚からシャンプーとリンスを取り出した。

 村ではもちろん使っている。

 髪を洗ったときの感覚は、普通の石鹸とはまったく違う。

「これも売れるかもしれない」

 シャンプーやリンスなら、石鹸以上に珍しがられる可能性がある。

 しかも、石鹸が貴族向けになるほどの品質なら、こちらも同じように高い価値を持つかもしれない。

「十歳になったら町に行くんだ」

 それまでまだ時間はある。

 だったら、今のうちに少しずつ準備しておけばいい。

「よし」

 アレンは石鹸を一つ持ち出す。

 続けて、シャンプーとリンスも持ち出した。

 補充の仕組みは、もう分かっている。

 持ち出した品は、決められた時間になればマイルームに補充される。

 そして、持ち出した品をマイルームへ戻せば、備え付けの数量を超えて手元に残すこともできる。

「これなら、少しずつ在庫を増やせる」

 無限に増やせることは、すでに分かっている。

 だからこそ、何を増やすのかが重要だった。

 村で目立つものを大量に持ち出すつもりはない。

 今は、十歳になって町へ出たときに売るものを準備しておく。

「石鹸、シャンプー、リンス……」

 アレンは三つを見比べた。

「これなら、冒険者になった後のお金の足しになるかもしれないな」

 そうしてアレンは、三つの商品の在庫を少しずつ増やしていくことにした。

 村を出る日まで、まだ四年ある。

 それまでに、将来必要になるものを少しずつ準備しておけばいい。

 アレンはそう考えながら、棚に並んだ石鹸を眺めた。

 十歳になって町へ出たとき、これらがどれほどの価値を持つのか。

 今のアレンには、まだ分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。