始めてのダンジョン探索
昨日見つけた洞穴が、ダンジョンだった。
その事実を知ったアレンは、朝から落ち着かなかった。
「本当にダンジョンなんだよな……」
昨日拾った魔石を手の中で転がす。
普通のウサギなら、倒したあとに肉が残る。
しかし、あの洞穴にいたウサギは霧のように消え、魔石だけを残した。
このことから考えても、ここが普通の洞穴ではないことは間違いない。
「ダンジョンなら、もっと魔石が手に入るかもしれない」
魔石はマイルームの補充に使える。
それに、魔石そのものもお金の代わりになる。
ウサギを狩るより効率よく魔石を集められるなら、アレンにとって非常にありがたい。
「よし。今日はもう少し奥まで行ってみよう」
アレンは意気込んで、洞穴の中へ入っていった。
*
ダンジョンの中は薄暗かった。
昨日よりも奥へ進んでいく。
しばらくすると、前方に魔物の姿が見えた。
「……あれは何だ?」
村の周辺では見たことのない魔物だった。
魔物がアレンに気づき、こちらへ向かってくる。
アレンは落ち着いて手を向けた。
「ストーンバレット」
パシュッ!
石弾が魔物を撃ち抜く。
魔物はその場で霧のように消え、魔石だけを残した。
「……一発か」
アレンは魔石を拾い上げる。
ウサギから取れる魔石より大きい。
「やっぱりダンジョンってすごいな」
魔石が手に入る。
しかも、ウサギを一匹ずつ狩るより効率がいい。
アレンは嬉しくなった。
「これならマイルームの補充にも余裕ができそうだ」
魔石を持ち帰ることを考えながら、さらに奥へ進む。
*
次の魔物が現れる。
「ストーンバレット」
一撃。
また別の魔物。
「ストーンバレット」
一撃。
さらに奥へ進む。
「ストーンバレット!」
一撃。
「……」
アレンは少しずつ楽しくなってきた。
魔物が現れる。
ストーンバレット。
倒す。
魔石を拾う。
また魔物が現れる。
ストーンバレット。
倒す。
また魔石。
「魔石がどんどん増えていく!」
アレンは思わず笑った。
今までウサギを狩って集めていた魔石とは比べものにならない。
「ダンジョンって、こんなに魔石が取れるのか!」
魔物が現れるたびに、ストーンバレットで一撃。
アレンはすっかり調子に乗っていた。
「僕、結構強いんじゃないか?」
これまで戦った魔物は、ほとんど一発で倒せている。
他の人間がどの程度の魔法を使えるのか知らないアレンには、自分の強さを比較する基準がない。
ただ、今まで苦戦したことがない。
だから自然と、そんな考えが浮かんできた。
「このまま、もっと奥まで行けそうだな」
アレンは意気揚々と先へ進んだ。
*
階層が進むにつれて、魔物も少しずつ強くなっていった。
それでも――。
「ストーンバレット!」
ズドン!
一撃。
「これも!」
ズドン!
一撃。
「まだまだ!」
ズドン!
また一撃。
魔物が消え、魔石が残る。
「よし!」
アレンは魔石を拾い上げる。
「今日はかなり集まったな」
マイルームへ持ち帰れば、補充に使える。
さらに、いざというときにはお金の代わりにもなる。
「これはいい場所を見つけたかもしれない」
アレンは嬉しそうに魔石を眺めた。
そして、さらに奥へ進んでいく。
*
やがて、アレンは五階層へたどり着いた。
「ここまで来たのか……」
これまでの階層とは違い、広い空間になっている。
そして、その奥。
明らかに他の魔物とは違う存在が立っていた。
「……何だ、あれ?」
巨大な身体。
全身を金属のようなもので覆った、人型の魔物。
アレンが近づくと、その巨体がゆっくりと動き始めた。
「ゴーレム……?」
アレンは警戒しながら手を向ける。
まずはいつもの魔法。
「ストーンバレット!」
ズドン!
石弾がアイアンゴーレムに命中する。
「……!」
確かに命中した。
しかし――。
アイアンゴーレムは倒れなかった。
表面に小さな傷がついただけだ。
「え?」
アレンは目を疑った。
「もう一発!」
ズドン!
それでも倒れない。
「ストーンバレット!」
ズドン!
さらに撃つ。
しかし、アイアンゴーレムは止まらない。
「なんで……?」
今までなら一発で倒せていた。
何発撃っても、目の前の魔物には決定的なダメージを与えられない。
そしてアイアンゴーレムは、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「……まずい」
アレンは後退する。
アイアンゴーレムが腕を振り下ろした。
「うわっ!」
間一髪で横へ飛ぶ。
地面が大きな音を立てて砕けた。
「これは……無理だ!」
アレンはすぐに判断した。
もう一度ストーンバレットを撃つ。
しかし、やはり倒れない。
「逃げよう!」
アレンは全力で走った。
*
来た道を必死に戻る。
幸い、アイアンゴーレムは追ってこなかった。
やがてダンジョンの入り口が見える。
外へ飛び出したアレンは、その場で大きく息を吐いた。
「はぁ……はぁ……」
怪我はない。
そして、今日だけで大量の魔石を手に入れた。
本来なら喜ぶところだ。
けれど――。
「……」
アレンは振り返り、ダンジョンの入り口を見つめる。
ここへ来るまでは、楽しかった。
魔物は全部一撃で倒せた。
魔石もどんどん手に入った。
自分は結構強いのかもしれない。
そんなことまで考えていた。
しかし、五階層で完全に打ち砕かれた。
「五階層で……もう駄目なのか」
まだ先がある。
六階層も、その先もあるはずだ。
なのに自分は、階層主一体を倒せずに逃げ帰ってきた。
「……僕、全然強くないじゃん」
アレンは肩を落とした。
自分では結構強くなったと思っていた。
けれど、それはただの思い込みだったのかもしれない。
「もっと頑張らないとな……」
手の中には、今日集めた大量の魔石がある。
それを見ても、今は素直に喜べなかった。
アレンは魔石を大切にしまうと、重い足取りで村へ戻っていった。




