新しい収入源と洞穴
六歳になってから、アレンの日々は少しずつ忙しくなっていた。
秘密の畑では、じゃがいもの世話を続けている。
収穫したじゃがいもはマイルームに保管しておき、ある程度まとまったところで行商人に売る。
そして最近、行商人に販売する品がもう一つ増えていた。
――燻製肉だ。
「アレン、今日も持ってきたのか?」
「はい。じゃがいもと、これです」
アレンが差し出した袋を見て、行商人が笑う。
「ほう。今日は肉もあるのか」
「ウサギの肉です」
「お前さん、ウサギを捕まえられるのか?」
「たまたまですよ」
アレンは何食わぬ顔で答えた。
実際には、魔石を集めるために定期的にウサギを狩っている。
ウサギから魔石が手に入ることを知ってから、アレンにとってウサギはちょっとした収入源になっていた。
しかし、一つ問題がある。
――肉が余るのだ。
子供三人で食べられる量には限界がある。
そこでアレンは、余った肉を燻製にすることにした。
燻製にしておけば保存が利くし、食べきれない分は行商人に売ることもできる。
「これはいくらになりますか?」
「そうだな……これくらいなら、じゃがいもと合わせて――」
行商人から代金を受け取る。
アレンはそれを大事にしまった。
少しずつだが、確実にお金は増えている。
マイルームを維持するためにも、将来村を出るためにも、お金はいくらあっても困らない。
*
ただ、もう一つ問題があった。
肉をマイルームに保管していると、時間が経っても腐らない。
それ自体は便利なのだが――。
「……邪魔だな」
マイルームに積まれた燻製肉を眺めながら、アレンは呟いた。
食べても食べても減らない。
マイルームのおかげで腐る心配はないものの、保管する場所は必要だ。
「さすがに狩りすぎたかな……」
そう思いながらも、魔石が手に入るのでウサギ狩りをやめる気にはなれなかった。
マイルームのレベルアップには魔石が必要なのだ。
もっと効率よく魔石を集める方法があればいいのだが――。
「……まあ、そんな都合のいい場所なんてないよな」
このときのアレンは、そう思っていた。
*
ある日の朝。
いつものようにアレンは畑へ向かっていた。
隠して作った畑は村から少し離れた場所にある。
そこへ向かう途中、アレンはふと足を止めた。
「……あれ?」
茂みの向こう。
今まで気づかなかった場所に、黒い穴がぽっかりと口を開けていた。
「こんなところに洞穴なんてあったっけ?」
アレンは近づいてみる。
入り口はそれほど大きくない。
子供のアレンでも、少し身をかがめれば入れそうだった。
「……入ってみようかな」
好奇心には勝てなかった。
アレンは周囲を確認してから、洞穴の中へ入っていった。
*
洞穴の中は薄暗かった。
外から差し込む光が少しずつ遠ざかっていく。
「思ったより深いな……」
しばらく進んでいると――。
「……ん?」
前方で何かが動いた。
白い毛。
長い耳。
「ウサギ?」
アレンの顔が明るくなる。
「こんなところにウサギがいるのか!」
しかも一匹ではない。
少し先にも、別のウサギがいる。
「もしかして……」
アレンは周囲を見回した。
「ここ、ウサギの巣なんじゃないか?」
そう思った瞬間、アレンは嬉しくなった。
ウサギがたくさんいるなら、魔石もたくさん手に入る。
肉も手に入る。
しかも、ここなら村から少し離れている。
「すごい場所を見つけたかもしれない!」
アレンはさっそく一匹に狙いを定めた。
「ストーンバレット」
パシュッ!
石弾がウサギに命中する。
ウサギはその場に倒れた。
「よし」
アレンは近づいていく。
しかし――。
「……あれ?」
倒れていたはずのウサギの身体が、突然ぼんやりとした。
次の瞬間。
ウサギの身体が、霧のようにふわりと消えていった。
「え?」
アレンは目を丸くした。
そこに残っていたのは――。
小さな魔石だけ。
「…………」
アレンは魔石を拾い上げる。
「……ウサギが消えた?」
周囲を見回す。
肉もない。
毛皮もない。
骨もない。
ただ魔石だけが残っている。
「待てよ……」
アレンの頭の中で、これまでの経験が繋がっていく。
魔石。
倒した魔物が消える。
そして残る魔石。
これは――。
「……ダンジョン?」
アレンは呆然と洞穴の奥を見つめた。
ただのウサギの巣だと思っていた。
けれど違う。
ここは普通の洞穴ではない。
「まさか……」
アレンは手の中の魔石を握りしめた。
今まで知らなかった場所。
まだ見たことのない魔物。
そして、魔石を大量に手に入れられるかもしれない場所。
「……ダンジョンを見つけちゃった?」
アレンの胸が高鳴った。
村の近くに、誰にも知られていないダンジョンが存在していた。
そしてアレンは、その入り口に立っていた。




