↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/42

始めての狩り


 朝。

 アレンはリサと一緒に、村の外にある畑へ向かっていた。

「今日は天気がいいな」

 空を見上げる。

 雲も少なく、畑の世話をするにはちょうどいい日だった。

 隣を歩くリサも、いつものようにアレンについてくる。

 畑へ向かう途中、アレンは道の脇に何かいることに気づいた。

「ん?」

 足を止める。

 そこにいたのは、一匹のウサギだった。

 見た目は地球のウサギとそれほど変わらない。

 しかし、この世界の生き物は魔力を持っている。

 そのため、見た目だけで判断することはできない。

「ウサギか……」

 アレンはじっと眺める。

 そして、あることを思い出した。

 肉。

 村で生活していると、肉料理が食卓に並ぶことはほとんどない。

 野菜やパン、芋などは食べる。

 だが、肉は滅多に食べられなかった。

「……肉、食べたいな」

 思わず口に出る。

 リサがアレンを見る。

「肉……」

「そう。肉だ」

 アレンはウサギを見る。

「せっかくだし、捕まえてみるか」

 四歳の自分でも、魔法を使えば何とかなるだろう。

 少なくとも、アレンはそう思っていた。

「リサ、ちょっと待ってて」

 アレンがウサギへ近づく。

 ウサギがこちらを向いた。

「……」

 目が合う。

 次の瞬間――。

 ドンッ!

「うわっ!」

 ウサギが突然、アレン目掛けて突進してきた。

 アレンは慌てて横へ飛び退く。

 すぐ横をウサギが通り抜けていった。

「は、速っ!」

 想像していたより、はるかに速い。

 ウサギは少し先で急停止すると、すぐにこちらへ振り返った。

「……まさか、また来るのか?」

 ウサギの身体が沈む。

「来る!」

 ドンッ!

「うわっ!」

 アレンはまた横へ飛ぶ。

 今度もギリギリだった。

「ちょっと待て!」

 ウサギは止まらない。

 方向を変えると、再びアレンへ向かってくる。

 アレンは必死に避ける。

 右へ。

 左へ。

 後ろへ。

「速すぎるだろ、こいつ!」

 魔法を使えばいい。

 頭では分かっている。

 だが、ウサギの動きが速すぎて狙いを定める余裕がない。

 魔法を準備している間に突っ込まれてしまう。

「どうする……!」

 アレンは焦っていた。

 そんなアレンの後ろには、リサがいる。

「リサ、下がって!」

 アレンが叫ぶ。

 しかし、返事がない。

 振り返ると、リサはその場に立ち尽くしていた。

 顔が強張っている。

 ウサギのあまりの速さに、怖くて身体が動かなくなっていた。

「リサ!」

 アレンが呼びかける。

 それでもリサは動けない。

「くそ……!」

 アレンはウサギから目を離せない。

 どうすればいい。

 水魔法か?

 風魔法か?

 土魔法か?

 考えている間にも、ウサギは何度も突進してくる。

 アレンはただ避ける。

 避けるだけで精一杯だった。

 そして――。

 突然、ウサギの動きが変わった。

「……え?」

 今までアレンだけを狙っていたウサギが、こちらを見ている。

 だが、その視線の先にいるのはアレンではない。

「……リサ?」

 ウサギが向きを変える。

「まずい!」

 リサへ向かって走り出した。

「リサ、逃げろ!」

 しかし、リサは動けない。

 ウサギが迫る。

 アレンの身体が勝手に動いた。

「ストーンバレット!」

 手を前へ突き出す。

 頭の中に思い浮かべるのは、小さな石。

 それを拳銃の弾丸のように、一気に撃ち出す。

 パンッ!

 石が高速で飛んだ。

 ウサギに命中する。

 その勢いのまま、ウサギは地面へ倒れた。

「……」

 アレンは動きを止めた。

 間に合った。

 そう思った瞬間、全身から力が抜けていく。

「……倒せた」

 初めての戦闘。

 相手はウサギ一匹。

 それなのに、最初は避けることしかできなかった。

 もしリサへ向かわれていなかったら、まだどうすればいいのか分からなかったかもしれない。

「リサ……大丈夫か?」

 アレンが振り返る。

 リサの目には涙が浮かんでいた。

「怖かった……」

 リサは泣きながらアレンに抱きついた。

「うん……怖かったよな」

 アレンはリサの背中を優しく撫でる。

「怖くて漏らしちゃった」

「もう大丈夫だ。終わったから」

 しばらくすると、リサも少しずつ落ち着いてきた。

「今日はもう帰ろう」

 アレンはそう言って、倒れたウサギを見る。

 初めての狩りだった。

 思っていたよりずっと大変だった。

 それでも――。

「……これで肉が食べられる」

 アレンは少しだけ笑った。

「帰ったらお風呂に入ろう」

 リサが顔を上げる。

「お風呂……?」

「そう。温かいお湯に入れば、少し落ち着くだろ?」

 リサが小さく頷く。

 アレンはウサギを持ち上げた。

「それから、お風呂から上がったら一緒に肉を食べよう」

「……お肉」

「ああ。今日は肉料理だ」

 リサの表情が、少しだけ明るくなる。

「楽しみだな」

 二人はウサギを持って、村へ戻っていく。

 初めての戦闘は怖かった。

 けれど、今はもう大丈夫。

 二人は今日の夕食を楽しみにしながら、いつものように一緒にお風呂へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。