得意属性と苦手属性
リサが初めて水魔法を使えるようになってから、しばらく経った。
あの日以来、リサは魔法の練習を以前にも増して楽しむようになった。
「ウォーター」
リサが手を前に伸ばす。
ぽたり。
小さな水滴が生まれた。
「おお、もう失敗しなくなってきたな」
アレンが笑う。
まだ大量の水を出せるわけではない。
それでも、最初に魔法が発動したときと比べれば、明らかに安定していた。
魔力操作の訓練を一年以上続けてきた成果もあるのだろう。
「じゃあ、今日は別の魔法を試してみるか」
アレンはそう言った。
リサが首を傾げる。
「今まで水しか試してなかったからな」
リサが魔法を使えるようになった。
カレンもライトの魔法を使える。
ならば、二人が他の魔法を使えるか試してみる価値はある。
アレン自身は複数の属性を使える。
だから、魔力があれば複数の魔法を使えるものだと思っていた。
「まずは火……かな」
アレンは自分の手のひらに小さな炎を浮かべた。
「こういう感じ」
リサはじっと炎を見る。
「同じように、手のひらに火が出るところを想像してみて」
リサは頷いた。
目を閉じる。
魔力を集中させる。
「……」
しばらく待ってみる。
しかし――。
何も起こらない。
「もう一回」
リサは何度も試した。
けれど、炎は出ない。
「じゃあ、風はどうだ?」
アレンが風を起こしてみせる。
木の葉がふわりと舞い上がった。
リサも同じように試してみる。
しかし、やはり何も起こらない。
土。
火。
風。
そして光。
いくつか試してみたが、水以外の魔法は一度も発動しなかった。
「うーん……」
アレンは腕を組んだ。
「全然できないな」
リサは少し残念そうにしている。
「まあ、今日はここまでにしよう」
アレンはそう言って、リサの頭を軽く撫でた。
「水が使えるんだから、それだけでも十分すごいよ」
リサは少し嬉しそうに笑った。
その後、今度はカレンについても試してみることにした。
カレンが使えるのはライトの魔法。
最初に発動したときは、本当に小さな光だった。
例えるなら、豆電球くらいの明るさ。
しかし、それから少しずつ魔力を扱う練習を続けてきたことで、その光は確実に成長していた。
「ライト」
カレンの手元に光が生まれる。
以前とは比べものにならない。
今では、白熱電球くらいの明るさがある。
「おお……」
アレンは思わず感心した。
最初は豆電球程度だった。
それが少しずつ明るくなり、今では白熱電球ほどになっている。
「これ、俺の成長と同じだな」
アレンは自分が初めて魔法を使った頃を思い出した。
最初は小さな魔法しか使えなかった。
けれど、魔力が増えるにつれて、魔法も少しずつ強くなっていった。
カレンのライトも同じだ。
魔力量が増える。
それに合わせて、使える魔法の威力も上がっている。
「じゃあ、カレンも他の魔法を試してみよう」
アレンはリサのときと同じように、いくつかの魔法を見せた。
水。
火。
風。
土。
そして、もう一度ライト。
結果は――。
ライトだけだった。
「……やっぱり、他は駄目か」
カレンはアレンの真似をして魔法を使おうとする。
しかし、水も出ない。
火もつかない。
風も起こらない。
ライトだけは、しっかりと発動する。
「うーん……」
アレンは腕を組んだ。
リサは水。
カレンは光。
二人とも魔法を使えるようになった。
けれど、使える魔法には明らかな違いがある。
「もしかして……」
アレンは二人を見比べた。
「人によって、得意な属性とか苦手な属性があるのか?」
それなら説明がつく。
リサは水なら使える。
けれど、火や風などは使えない。
カレンは光なら使える。
けれど、他の魔法は使えない。
ただし、まだ二人とも練習を始めたばかりだ。
単純に他の魔法を使うには、もっと練習が必要なのかもしれない。
「まだ決めつけるのは早いな」
アレンはそう考えた。
自分は複数の魔法を使える。
だからこそ、二人との違いが気になって仕方がない。
「もう少し試してみる必要があるな」
アレンはそう呟いた。




