始めての光
リサに魔法を教えるようになってから、俺の毎日は少し忙しくなった。
家では妹のカレンに魔法を教え、家の外ではリサに魔法を教える。
どちらもまだ魔法を使えるようになったわけではない。
だから俺は、それぞれに合った方法で少しずつ練習を続けていた。
まずは家での練習。
「カレン、今日も魔法の練習する?」
「うん!」
カレンは嬉しそうに頷いた。
俺たちが練習しているのは、光を生み出す魔法――ライトだ。
火を使わずに明かりを作れるなら、生活にもかなり役立つ。
それに、光は魔法の基本としても分かりやすい。
「まずは魔力を手のひらに集める感じで」
「こう?」
「そうそう」
カレンは一生懸命に集中する。
しかし、なかなか魔法は発動しない。
「……できない」
「焦らなくていいよ」
俺はカレンを励ました。
魔法は簡単には使えない。
俺だって最初から何でもできたわけではない。
それに、この世界では魔力を持っているからといって、すぐに魔法が使えるとは限らないようだった。
だからこそ、俺は何度でも繰り返す。
「もう一回やってみよう」
「うん!」
カレンは諦めずに練習を続けた。
そして家での練習が終わると、今度は外へ向かう。
待っているのはリサだ。
「アレン!」
俺を見つけると、リサが駆け寄ってくる。
「今日も魔法の練習?」
「もちろん!」
リサも魔法を覚えようと頑張っている。
最初は俺が魔力を流してやらないと、自分の魔力を感じることすらできなかった。
今では少しずつ、自分の魔力を意識できるようになってきている。
「今日は自分の魔力を手の先まで動かしてみよう」
「分かった!」
リサは目を閉じて集中する。
「……こう?」
「うん。ゆっくりでいいよ」
少しずつ魔力が動いていく。
まだまだ練習が必要だけど、確実に前へ進んでいる。
そして練習が終われば――。
「アレン、お風呂!」
「はいはい」
畑のそばに作った露天風呂へ向かう。
すっかりリサのお気に入りになってしまった。
「今日も気持ちいい!」
「魔法の練習で疲れたからね」
「うん!」
そんな毎日を過ごしていた。
家ではカレン。
外ではリサ。
二人に魔法を教えながら、俺自身もこの世界の魔法について少しずつ理解していった。
そんなある日のことだった。
「アレン!」
家でカレンと魔法の練習をしていると、カレンが突然俺を呼んだ。
「どうしたの?」
「なんだか……今日はできそうな気がする!」
「本当?」
「うん!」
カレンは両手を胸の前に出した。
そして目を閉じる。
集中する。
身体の中にある魔力を感じ、それを手のひらへ集めていく。
「……ライト」
その瞬間――。
ぽっ。
小さな光が生まれた。
「……!」
俺は思わず目を見開いた。
カレンの手のひらの上に、小さな光が浮かんでいる。
それは豆電球くらいの明るさしかない。
部屋全体を照らすほどではない。
けれど――。
「できた……」
カレン自身も驚いたように光を見つめている。
「カレン!」
「お兄ちゃん……できた!」
「うん! できたよ!」
俺も思わず笑ってしまった。
ついに成功した。
初めての魔法。
小さな小さな光。
それでも、俺にとっては大きな一歩だった。
カレンは嬉しそうに光を眺めている。
「これ、もっと明るくできるかな?」
「できるようになると思うよ」
「本当?」
「うん」
俺はカレンの小さな光を見ながら考える。
物事というのは、最初の一歩が一番難しい。
何もない「0」を「1」にする。
それが一番大変なんだ。
でも、一度「1」にすることができれば、そこから「2」にすることは、それほど難しくない。
もちろん簡単というわけではない。
けれど、少なくともカレンはもう「魔法が使えない」という状態ではない。
今日、カレンは魔法を使えるようになった。
ならば、これから練習を続ければいい。
「これからもっと練習すれば、もっと明るくできるよ」
「頑張る!」
カレンは嬉しそうに笑った。
手のひらの小さな光が、部屋をほんの少しだけ照らしている。
豆電球ほどの小さな明かり。
だけど――。
俺には、その光がこれから大きく成長していくように思えた。
そして同時に、リサのことも思い出す。
リサも少しずつ魔力を扱えるようになってきている。
二人ともまだ始まったばかりだ。
でも、最初の「1」を作ることができたのなら、これから先はきっともっと成長できる。
「二人とも、頑張っていこうな」
俺はそう呟いた。
小さな光を見つめながら、これから始まる二人の成長を楽しみにするのだった。




