本当の戦いは、これから!
朝。空は、やけに青かった。
まるで何も起きていないかのように。 だが。
「……来たな」
音無シンが、空を見上げて呟く、遠くから、低い音が響く。ゴォォ、と。
重い回転音。ヘリ。それも一機じゃない。複数。
「……包囲」
楓が短く言う。
すでに、逃げ道は塞がれている。
ビルの上。
道路。
あらゆる場所に、黒い装備の部隊が展開している、銃ではない。魔力を帯びた装置。
完全に――“戦闘態勢”。
「……はは、マジかよ」
シンが乾いた笑いを漏らす。
「昨日まで仲間だったやつらがこれ?」
冗談じゃない。だが。現実だった。
前に、一人の男が出てくる。
あの管理局の男。
現場の指揮官。
「……白峰ルナ、音無シン、楓」
名前を呼ぶ。
そして。
「対象・神代湊」
視線が、湊に向く。
「全員に通達する」
空気が張り詰める。
「お前たちを、“危険対象”として認定した」
その一言で。
完全に線が引かれた。
「……は?」
シンが眉をひそめる。
「理由を聞いていいか?」
軽く言う。
だが、その目は鋭い。
男は、短く答えた。
「制御不能」
それだけだった。
「お前たちは、世界にとってリスクだ」
感情のない言葉、だが。そこに迷いはない。「……ふざけないで」
ルナが前に出る。
「そっちが全部始めたくせに!」
怒り、抑えきれない。だが。
男は、否定しない。
「その通りだ」
あっさりと。
認めた。
「だからこそ、終わらせる。
静かな決意。
「これ以上の被害を防ぐために」
その言葉に。
ルナは、一瞬言葉を失う。
正しい、理屈としては、でも。
「……違う」
小さく、呟く。顔を上げる。
「それじゃ、何も変わらない」
同じことの繰り返し。
犠牲を切り捨てるだけ。
「私は……認めない」
その瞬間。
空気が変わった。
男が、手を上げる。
それが――合図だった。
「―排除開始」
次の瞬間。
全方位から、光が放たれる。
魔力弾。
回避不能の弾幕。
「散れ!!」
シンが叫ぶ。
全員が一斉に動く。爆発。衝撃。ビルが崩れる。
地面が割れる。
完全な戦
「くっ……!」
楓が重力で防ぐ。
だが、数が多すぎる。
「これ、キリねぇぞ!」
シンが圧縮で撃ち返す。
数人を吹き飛ばす。
だが、次が来る。
無限に近い。
「湊!!」
ルナが叫ぶ。振り向く。
そこに、湊が立っていた、静かに。何も言わずに。
ただ、前を見ている。黒が、揺れる。
ゆっくりと。広がり始める。
「……やめて」
ルナの声が震える。
わかっている。これを使えば―
勝てる。でも、代償も、わかっている。
「……使うな」
小さく、言う。だが、湊は、答えない。
代わりに。前に、一歩出た。
「……効率」
それだけ。
ただの判断、その瞬間。ルナの中で、何かが切れた。
「違う!!」
叫ぶ。走る。
湊の前に立つ。
「それじゃダメなの!」
黒が、止まる。
ほんの一瞬。
「また、壊れる!」
涙が、こぼれる、それでも、
「もう、見たくない!」
叫ぶ。
その言葉に、湊の目が、わずかに揺れた。
ほんの一瞬。それだけで。十分だった。
「……はぁ、めんどくせぇな」
シンが笑う。そして、前に出た。
「でもまぁ、それがチームってやつか」
圧縮を構える。
「楓、抑えろ!」
「……了解」
重力が落ちる。 戦場が、わずかに静まる。
「湊は温存だ」
シンが言ってやった。
「ここは俺らでやる」
その言葉に。ルナが顔を上げる。
楓も、静かに頷く。 そして。 三人が、前に出る。
湊を、後ろに置いて、
「……行くぞ」
シンの声。その瞬間。
三人が同時に動いた。
光、重力、圧縮、ぶつかり合う。
管理局との、本当の戦いが始まった。
そして。
その後ろで。
湊は、ただ立っていた。動かない。だが。
その手は、わずかに震えていた。
―選ばなかった。初めて、自分で。
その意味が。まだ、わからないまま。




