三人が、管理局侵入成功!それと、空白の本当の事実
空気が、重かった。戦闘の後、仮設の拠点となった管理局の施設内。
白い壁、無機質な廊下、どこか―冷たすぎる。
「……なんか、落ち着かねぇな」
音無シンが、頭をかきながら言った。
「助けに来てくれてるはずなのにさ」
軽い口調で、言った。いつもどうりだ。
だが、その奥に違和感が滲んでいる。
「……同意」
楓も短く頷く。
「ここ……人の気配が薄い」
ルナは黙っていた。視線は、ベッドに向いている。
そこには、神代湊が横たわっていた。まだ目を覚まさない。
呼吸はしている。でも。その姿は、あまりにも静かだった。
「……大丈夫、だよね」
小さく呟く。誰に向けたわけでもない。
答えは、返ってこない。その時。ピッ、と小さな音がした。
「……?」
楓が反応する。視線を壁へ向ける。そこに、小さなパネルがあった。
わずかに、開いている。
「……不自然」
楓が近づく。指先で、そっと押す。カチ、と音がして――
隠し通路が現れた。
「おいおい……映画かよ」
シンが苦笑する。だが、
誰も笑わなかった。
嫌な予感が、強すぎる。
「……見る」
楓が言う。止める理由は、なかった。むしろ。
見なければならない気がした。三人は、静かに中へ入る。
狭い通路。奥に、小さな部屋。そこに端末があった。
電源は入っている。画面が、光っている。
「……これ」
ルナが近づく。震える手で、画面を見る。そこに表示されていたのは―
「被験体データ」
その文字だった。
「……嘘でしょ」
思わず、声が漏れる。スクロールする。名前が並んでいる。
番号。状態。結果。そして
「……これ」
指が止まる。一つの名前。見覚えのある文字。
「被験体No.27 神代湊」
空気が凍った。ルナは、驚く、他は、なるほどと、
「実験体ってやつね」
だが、それだけじゃない。
ルナは、さらにスクロールする。
その下に、別の項目があった。
「……何、これ」
小さく、読む
「“空白誘発実験”」
その瞬間。背筋が、冷たくなる。説明欄。
そこには、こう書かれていた。
『感情遮断処置後、対象に対し外部干渉を実施 結果、周囲存在の消失現象を確認』
呼吸が、止まる。 驚きを隠せない状態になってしまった。
「……これって」
声が震える。
「空白……最初から、作られてたってこと……?」
沈黙。誰も、すぐには答えられない。だが、答えはもう出ていた。
「……管理局が、やってる」
楓が、静かに言った。事実だけを。感情を乗せずに、それが、逆に重かった。
「おいおい……」
シンが、頭を押さえる。それが自分達に対しどれだけ重いのか。
「敵どころじゃねぇじゃん」
空白は、自然発生じゃない。“作られたもの”そして。
湊は、その延長線上にいる。
「……ふざけないでよ」
ルナの声が、低くなる。今までで一番、怒りがこもっていた。
「人を……こんなふうに使って」
拳を握る。震えている。でも、それは恐怖じゃない。怒りだ。
「湊は……道具じゃない」
はっきりと言う。自分は、そう決めることにしたから。
「絶対に、そんなの認めない」
その時だった。ガチャ、と音がした。
全員が振り向く。入口。そこに―管理局の男が立っていた。
無言。ただ、こちらを見ている。ただ、ばれたかのように。
「……見たか」
静かな声。怒ってはいない。だが、逃げ場はない。
「……これ、どういうこと」
ルナが、まっすぐに聞く。逃げない、目を逸らさない。
男は、数秒沈黙した。そして。
「……事実だ」
否定しなかった。それが、すべてだった。
「空白は、管理局の研究の副産物だ」
空気が、完全に変わる。もう。味方ではいられない
「……じゃあ、なんで」
シンが低く聞く。当然の疑問だった
「なんで俺らに戦わせてる?」
男は、短く答えた。毎回だ。冷たい言葉だった。
「止めるためだ」
だが。その言葉は、軽かった。
「自分たちで作ったものを?」
ルナの声が鋭くなる。
男は、少しだけ目を伏せた。
「……制御できなかった」
その一言。それが、すべてだった。
沈黙。誰も、すぐに言葉を出せない。だが。
ルナは、一歩前に出た。
「……もう、信用できない」
はっきりと言う。それが信じられないからだ。
「でも、止める」
強い目で、男を見る、それが自分にしかできない。でも怖かった。
「あなたたちじゃなくて、私たちが」
男は、わずかに目を細めた。何かを考えるように、そして。
「……好きにしろ」
止めない。拘束もしない。それが、逆に不気味だった。
「ただし」
一つだけ、付け加える。
「お前たちも“観測対象”だ」
その言葉を残して。男は、部屋を去った。
静寂。残された三人。そして。ベッドで眠る、湊。
「……どうする」
シンが聞く。軽く。でも、その目は真剣だった。
ルナは、迷わなかった。
「決まってる」
湊を見る。まっすぐに。
「全部、壊す」
管理局も、空白も、全部、その先に。
“本当の答え”があると信じて。




