【ぼうけん2:色褪せた約束の玩具箱】
廃ビルたんけんを終えて、地面に足をつけて歩いていく。二人は近くに見えた廃れたショッピングモールにやってきた。
そこは2階まで商業施設が沢山入っている場所でありながら、1階も負けず劣らずで沢山の商業施設がある大きな場所だった。
また1階には高さ15m、横幅30mの噴水が名物として置かれている。今では水が枯れて無くなり、苔やツタなどが巻きついて、形だけを残している。
「わぁ!なにこの大きいの!零より大きい!」
悠真は干からびた噴水を見て、興味津々だ。
「これは噴水と言うものです。昔はこれに水を貯めたり観光スポットとして訪れる人もいましたね。今は水が枯れてしまって大きな飾り物になっていますが」
「へぇー、これはそんなにすごいんだ!」
「なんせ、ここは沢山の人が買い物をする為に訪れていた場所なのです。大型ショッピングモールでしたから、遠くの街から訪れた方もいる程です」
うんうん!と聞きながら、キラキラした目で店をあちこち見ている悠真を見ていた。
壁にはあの時に流行っていたポスターや、子供が描いた絵が貼られていたりしている。
床には沢山の瓦礫や、チラッと見えるところには骨が見えたりする。
「わぁ!すてきな絵がたくさんだね!」
「えぇ、そうですね」
「あれ?これは食べ物の絵?美味しそうだなぁ!」
「これはお店のポスターですね、これで何が売られているかが一目見て分かるようになっています」
「へぇ〜!こういうのも食べてみたいなあ」
悠真は今にもヨダレが垂れそうな顔をしている。
そうは言っても、周りは廃墟と化した建物だらけだ。
作る人もいなければ、売ってくれる人もいない。
自分がこういうのを作れたら良かったのだが、生憎そこまでの力はなかった。
「あ!これおもちゃ屋さんかなあ?」
もう次の事に興味が移っていた悠真は、気になったお店に指を指して聞いてきた。
中はボロボロだったが、面影は残っていた。
おもちゃ屋というよりかは雑貨屋にも近い気がする。
「でしょうか?せっかくですし入ってみますか?」
「たんけん!たんけん!」
悠真に手を引っ張られながらおもちゃ屋か雑貨屋か分からない建物に入っていく。
中に入ると沢山の商品の残骸がそこにあった。
感情ドール…カスタム生態系テラリウムキット…思い出再現キット…等色んな物が売られている。
悠真は、本の中でしか娯楽系の雑貨(玩具を含む)を見た事がなかった。
そこにある残骸も、まるで昔から大切にしてきた宝物が山のように積まれている状態にも見えるのだ。
「すご〜い!ここはお宝の山!?」
「確かに子供から大人まで、ここは宝の山が沢山ありますね……」
あっちこっちに目移りしながら店内を見て回っている悠真の姿を見ると、まるで好きなものを見つけて嬉しそうに駆け回る犬の姿が思い浮かぶ。
悠真は地面のガラクタ達を掻き分けていく。
何かを見つけたようで声をかけてくる。
「これなんだろう?」
手に持っているのは、青と水色のグラデーションの少し欠けたスマートグラスのような物だ。
テンプル部分は透明であり1つの小さなボタンがある。かけるとスッキリした印象が残りそうだ。
誰かの物だろうか?
「解析します。貸していただけますか?」
うん!と元気よく渡してくれた悠真に感謝しながら、物の解析を始める。
悠真の期待するような目が刺さる。
「これは……ARグラスですね。それも常時装着型の……ユーザー登録はなし……成程、使い方は分かりました」
「AR?なにそれ?」
「簡単に言えば、これをこうして……」
実際に悠真にかけて説明をする。
「このようにかけてここにあるボタンを押すと……」
フレーム横にある小さなボタンを押すとホログラムが出てきて、周辺の地図を映し出し始めた。
「ご覧のように地図が見えるようになります。再度ボタンを押せば、直径10km範囲内で場所案内検索が出てきます。目的地設定も出来るので近くなら他に行ける所があるかもしれません。また他の人には地図は見えません」
「すごーい!かっこいいー!」
こんな便利な物が出来上がっているのも、滅びる前の世界なら当たり前だったのだが、悠真は精神が幼いままで時が止まっている。
こんな近未来な物を目の前で見たら興奮してしまうのも無理はない。
もし自分が幼き子供だと想像したら、同じように興奮するだろう。ARグラスをかけながら零の周りをうろちょろしている。
にぱーっと笑顔になった悠真を見て、零はどこか胸が苦しくなる。
キャッキャッとはしゃぎながら店内を回る。
ARグラスは機能を使用しない場合はメガネと同じように使用出来る。
危険な事もないだろう。
ふと悠真の動きが止まる。
「ねえ零、地図を見てたらここから遠くない所になにか建物があるんだけど…おしろ?ぼく分かんないんだ。教えて?」
空間に映すボタンを選択して地図を映してもらうと、そこには案内図に簡略な説明と共に神社の写真のホログラムが映し出される。
「こちらは神社という建物です。今は時間経過と共に管理する方がいないので、草が生い茂っていたり等はありますが……ここに住んでいる神様にお祈りをして願い事をするという風習がありました」
「ぼくもお願いしたら、かなえてくれるかな?」
「悠真のように純粋な心を持っている人なら、きっと神様は叶えてくださるかもしれませんね」
「えへへ、そうかなー?ぼく、ここに行きたいな!」
目的地までは3km程と遠くはないようだ。
行こうと思えば歩いて行ける。
「なるほど、分かりました。では神社に目的地を設定して行きましょうか」
「やったー!ねえ、これぼくがまだかけてていい?」
「良いですが、道はそこまで詳しくないので一緒に行きましょうね」
「もちろん!ぼうけんには零が大切だもん!」
そう言って零に抱きつく。
零は目を逸らしながら、悠真の頭を撫でる。
「でもちょっと歩きつかれちゃった。零、おんぶしてよー」
「……全く、貴方という人は」
溜息をつきながらも、悠真をおんぶして歩く姿には、どこか家族の面影が重なっていた。
悠真の道案内と共に、神社に歩いて向かっていく。
悠真はぎゅっと零の背中に抱きついた。
背中に伝わっている温もりを、何度も抱きしめたかった。




