表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉ぼうけん譚  作者:
PR
3/9

【ぼうけん1:最後の蓋を開けて見た残骸】

下からハッチのような扉をゆっくり開ける。

長年開けられなかったせいか、埃や錆びた鉄の匂いがブワッと漂う。軽く咳をしながら外の世界に出る。


自分が想像していた世界とは違っていた。

目の前に広がる世界は、沢山の植物が何棟か残っている高層ビルを支柱代わりに、ビルを生い茂るような形で生えており、足元には短い草がずっと遠くまで生えており、まるで草原の絨毯が敷かれているようだ。

空は灰色の空だが、隙間から青空が顔を覗かせていたり、太陽の光が差し込んできている。

草の香りがして、風がいろんな所を吹いて2人を迎えてくれるだろう。


「すっごーい!世界ってこんなにもキラキラしてるんだ!」


悠真は大喜びで零を見ながら笑顔を向ける。


「そうですね……私も正直ここまで綺麗だなんて思いませんでした」


自分が教えた世界よりもずっとずっと、そこは綺麗な景色があった。

すぐ近くには自分が生まれた廃れた研究所があり、形は何とか残ってはいるが姿はボロボロになっていた。

そんな廃研究所を眺めていると、悠真が興味を示したように廃研究所を指差して聞いてくる。


「零、これ何?」


「これは私が生まれた場所の名残です。ここは賢い人達が集まって研究していた施設なのですが……この中は倒壊しているので、中に入らないで下さいね、危険なので」


悠真が産まれた場所でもあったが、それは口に出さずにいた。


「そうなんだ!すごい所で生まれたんだねえ!」


キラキラした目で、廃研究所や景色をあちこち眺める悠真を後ろから見守っている零は、何を思っているのだろう。


「ねえ!あそこ行けるかな?」


悠真が指を指した場所には、大きく倒壊したり、窓があちこち割れているが建って残っている高層ビルが何棟もあり、生命力が強い植物が生い茂っている場所であった。


「あそこですか、倒壊しているので瓦礫や毒性の強い植物等が生えているかもしれません。足元や周りに気をつけて行きましょうね」


はーい!と返事と共に悠真は目的地に行こうとする。


「あ!コラ!何があるか分からないから、勝手に1人で行かないでください!」


悠真の後ろ姿を追いながら倒壊したビル街に向かう。

何があるかこの先は分からないが、自分が動ける限りは悠真を守らなければ。



零の足の関節から、微かな錆びた音が聞こえる。



――――――――――――――――――――――



廃研究所から近い廃れた倒壊ビル街にやってきた。

ここはダウンタウンエリアとも呼ばれていた場所。

色んな商業施設やオフィスビルが盛んだった場所だ。

今ではどこも崩れて倒壊しており、見る面影も消えて無くなっている。


「ここは大きい石や草がたくさんあるんだね!」


悠真と手を繋ぎながら歩く。

世界が崩壊する前に来たら、ここで沢山悠真の好きな食べ物や流行りの物を買ってあげられたのかな、なんて思いながらその悲惨な光景を見ていた。


悠真は近くの建っていた廃ビルを、見上げながら眺めていた。


「こーんな大きなものが、本当にあるだなんて目をうたがっちゃう!ねえ零、これ入れるのかな?」


「んー……行く手段があればですが……」


少し近づいて見ると、入口があったであろうところの扉が壊れて中に入れるようになっており、瓦礫も壁になる程積まれてはいない為、行く事は出来そうだ。


「崩れている箇所があるので、中に入る事は出来そうです。ですが何があるか分かりませんから、ゆっくり行きましょう」


うん!行こう!と零に握られた悠真の手がギュッと握ってくる。

思っていた以上に、ぼうけんという物は楽しいのかもしれない。



確認した廃ビルの近くまで来た。

入口だった扉は壊れており、そこから中に入る事が出来そうだ。


「入ろうよ!ぼく気になる!」


「よく気をつけて行くんですよ、それに暗いと危ないですから、ライトを点けましょう」


インベントリを開き、零が持ってきたライトを2つ取りだし、悠真と一緒につける。

頭に巻いてスイッチでライトをつけるタイプだ。

工事現場等でヘルメットにライトがついているのがあるだろう。あれを想像してもらうと分かりやすい。


「よーし!ぼうけんスタートだ!」


悠真がどんどん前に行くのを、周囲に気をつけながら後ろから守れる位置で零がついていく。

オフィスビルなのもあり、必要最低限以外の物は置いていなさそうな場所だ。

受付カウンターがあり、案内図や待合用の椅子があったりしたが、どれもボロボロになっていた。


「なんだかおちつかない所だねぇ」


「ここは仕事の為に訪れる場所ですね。普段私達はあまり縁がないので、こういう場所にも訪れませんからね。ボロボロなので埃が舞うかもしれません……」


薄暗いせいか少しヒンヤリする。

暗い中を歩くのはやはり危険だ。

ライトを持ってきたのは正解だった。


「階段がありますね、あれで行ける所まで上ってみましょうか」


「うおー!進め進めー!」


行けるところまで階段をひたすら上っていく。

何階あるかは知らないが、どんどん上る。

途中休憩しながら屋上まで目指して行く。


「ハァハァ……まだてっぺんに行けないね……」


「ええ……そうですね……」


お互い息を切らして話す。

久々に沢山動くと、アンドロイドであっても疲れは感じるらしい。


「もっとこう……ロボットのようにいっぱい動けたりするようなものないかなぁ」


「そうですね……エレベーターなどがあれば……」


どうしようか悩んでいた。


「零〜、あれ何?」


あれの方を見ると、そこにエレベーターシャフトがあった。近づいてボタンを押すと稼働して足場が上に上がって行った。


「悠真、貴方は素晴らしい物を発見しましたね」


「え、そうなの?」


「階段で行かなくても、これに乗っていけば上に行けるかもしれません」


「おおー!ぼくってもしかしてすごいことした?」


「これが正常に動けばの話ですが……」


二人を乗せたエレベーターシャフトは、ゆっくり上へと上がっていく。

カタカタと音を立ててはいるが、正常に動いている。


「少しずつ空を飛んで……まるで、うちゅうにいるみたいだね!」


「(戻る時、普通に降りれるのだろうか……)」


この景色を見てどう思ったのか、はたまた何も考えずに来たか。不安もあるが行ける所まで行ってしまいたい気持ちもあった。


エレベーターシャフトは最上階まで運んでいく。

風が強いがそれが逆に心地良く二人の間を抜けていくのを感じとれる。

最上階に着くまでの間、悠真はキャッキャッと騒ぎながら景色を眺めていた。

今まで外に出た事がなかったのだ。


エレベーターシャフトはやがて最上階に着き、屋上の地に足をそっと置く。

地上から見た時と景色は同じはずなのに、高い所に登ったからか、別の姿をヒョコッと見せてくれる。


「わぁー!すっごくキラキラしてて……どこを見ても感動しちゃう!このおっきい緑色のは大きいまものなのかな?おひるねしてるのかな?」


「……高さ1つ変えるだけでも、この世界は見えるものが違うんですね」


二人が同じ世界をもう一度見ているだけなのに、どうしてこんなにも違って見えるのだろう。

滅亡なんてまるでなかったかのような美しくて綺麗で……新たに命が生まれそうな神秘的な雰囲気さえも感じ取れた。


「すごい!すごい!ずっと遠くまで見える!」


また走り出しそうな悠真を抱き上げて、柵の近くまで歩いた。


「零〜、はなしてぇ〜」


手や足をジタバタしながら抵抗するが、アンドロイドの力にかなうはずもなく、あっさり抵抗をやめて項垂れた。


「仮に落ちたら危ないです」


「零〜、ぼくもう子供じゃないのにぃ……」


「……私の言葉忘れましたか?」


頬を膨らませて怒る悠真を見てると、抱っこされて身体が伸びる猫の姿と重ねてしまう。

零は呆れながらもどこか楽しそうにしていた。


遠くには青く輝く海があり、あそこがぼうけんの最終地点になるかもしれない。

少し遠くにまた大きな四角い建物がある。

あそこには確か大きな商業施設も入ったショッピングモールが建っていたはず。


「悠真、あそこに見える大きな四角い建物が見えますか?かつて大型ショッピングモールが建築されていた場所なのです」


「前の方に見えるあの四角いのかな?ショッピング……もおるってのはなあに?」


「買い物が出来る場所です。お金を払って食べ物を買ったり服を買ったり、暮らしに必要な物を買う事が出来た場所です」


「てことはあそこに行けば、誰かいるのかな?」


「それは分かりませんが、いた形跡は残っていると思いますよ」


「昔の人の歴史が見られるんだね!」


どこまでも続く灰色の空(チラッと顔を覗かせる青空)

時が止まったかのようにそこにあり続ける建物

必死にもがいて生きようとする新たな命

この世界をずっと見守ってきた海


これが悠真と二人で体験した、たんけんの最初の思い出だ。これからどんな事が始まるのだろう?

そうワクワクするのだろう、少なくとも悠真は。


「風気持ち良い〜、世界ってきれいだね!零!」


「そうですね……」


零の稼働音が微かに聞こえる。

手の人工皮膚が薄く剥がれ落ち、人差し指から少しだけ金属骨格が姿を見せていた。


「(本当は違うのに……)」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ