【ぼうけん3:鳥居と影、軋む音】
廃れた街のショッピングモールを抜けて、地図を頼りに森っぽい道の中に入っていく。
沢山の木々が生えており、少し見にくい。
太陽が海の近くまで行っている時刻だ。
青々と広がっていた世界を赤やオレンジで塗るようにして染めていた。少しだけ風が冷たい気もする。
かき分けるように進んでいくと急に視界が開ける。
「零!あれ見て!なんか門がいっぱいあるよ!」
そう言って零の背中から降りて、鳥居の所まで駆けつけて指を指す。
「木がからまってて、緑のドレスを着てるみたい!待っててくれてたのかなぁ!」
「……あれは鳥居です。人間の信仰の象徴と言われていましたが……」
二人が協力してやってきた場所は、森の中にある神社が顔を覗かせていた。
植物が生い茂っており何かがいたような形跡はない。
赤い鳥居が複数あり、鳥居は蔦や木に沢山絡まって生えている。
鳥居の先には社殿があり、屋根が半分崩れており、中から大きな木が生えていた。
「お家がある!零が言ってた、かみさまって人のお家かな?入っちゃおっと!」
零が慌てて悠真の服の背中を持って静止する。
わあ!と叫ぶ悠真は、零の方向に引っ張られる。
「人様の家に入る時は何て言うんでしたか?」
「あ……!おじゃまします!」
よく出来ました そう言い悠真を離す。
社殿の中は家具等は置かれておらず、空っぽな空間がそこにあった。
仄かに木の香りと埃の香りがする。
「何もないんだね……」
「このような空間には家具等は置かないです。置く方が珍しいのではないのでしょうか?」
そうなんだねぇ なんて言いながら、楽しそうに床の上に寝転がる悠真を見る。
その姿は子供にしか見えなかった。
零はインベントリの中から、灯りが灯せる小型の瓶のような物を取り出し静かに置く。
置くと自動的に瓶を中心に、ポワッと光が灯された。
「零はさ……」
悠真がふと呟く。
「どうしてぼくを外につれていってくれたの?」
零も悠真と同じ所に座り、床を見つめながらポツリと呟く。
「……単純に、貴方にはあの場所で一生を終えてほしくなかったからです」
悠真は何も話さず、零をじっと見ている。
「ここまで来たからもう分かっていると思いますが、人類は滅んでしまっています。私はご主人様から貴方を守るように使命を頂きました。そしてこの目で滅んだ瞬間も見ました。その先は私も酷く混乱しながらも、私なりにどう守っていこうか……いつも考えていました……」
少しの間、二人の間に沈黙が流れる…
先に破ったのは悠真だった。
「零はぼくの事を……たくさんたくさん考えて……守ってくれていたんだね……」
悠真は泣きじゃくりながら、自分の気持ちを必死に伝えようとしている。
悠真の方に向き直り、静かに待った。
「あのね……ぼく、いつも零がそばにいてくれて……すごくうれしくて……グスン……」
考えるよりも先に身体が動いていた。
悠真を強く抱きしめていた。
「……大丈夫、悠真がいるから私は頑張れてきたのですから……どうか、泣かないで下さい……」
言葉だけはいっちょまえに大人だ。
2人はその場で抱きしめあっていた。
お互いがお互いの為に気持ちを伝えて、泣いたのはこれが初めてだった。
2人以外誰も居ないこの世界、泣き声が微かに社殿の中で響く。数分の出来事かもしれないが、2人にとってはもっと長い時間を感じていたかもしれない。




