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ホワイトローズ聖騎士団団長



 私はあれから二日寝込んだが、徐々に回復していき今ではどこも体調が悪くなくなり、いつも通り動きまわれるようになった。

 二日間も動かずベッドで横になっていたため体がなまってしまっため、朝から剣を振るう。

 お父様やお母様、それに使用人たちもが心配したがそれとは反対に私はいつもより軽快に剣を振るうことが出来た。

 私は驚いて一緒についてきたチェリートにそのことを伝える。


「寝込んでいたのにいつもより体が動きます!」


 するとチェリートは呆れながらも教えてくれる。


「当たり前でしょ、私と契約を結んだのだから魔力以外の身体能力も上がっているわ。」

「そうなんですね!」


 まさかのこんなところでチート能力を手に入れてしまうとは、そこでふと気になることがあった。


「そういえば魔力が向上したと言ってましたがどれぐらい上がったのでしょうか?」


 元のシンシーリアの魔力は3、私は魔力をうまく扱えておらず1程度の魔力となってしまったがチェリートのおかげで3どころか5、いや欲をはってカイニス達と同じの7までいってるかもしれない。


「私と同じぐらい使えるわよ」

「そうなのですか!チェリート様の魔力の数値はどのぐらいなのですか?」

「なによ、数値って?」


 魔力を数値化しているのは人間の世界だけのようでチェリートは自分がどれぐらいの魔力量かよく分かっていないらしい。

 私もその基準がよく分かっていることが出来ないのでチェリートに説明することが出来なかった。


「では一度チェリート様の恩恵の魔法を試していいですか?」

「別にいいわよ、もうあなたのものなんだし。」

「ありがとうございます、このレイピア、実は魔剣なのですよ。私は今までうまく魔法を使えなかったのでただのレイピアとなってしまってたのですがこれで魔法を放ってみようと思います!」

「そう、じゃあそのレイピアに自分の魔力を流し込めて。その時どのぐらいの強さの魔法にしたいか調節をしなさい。後は勝手に魔法が起こるから。」

「分かりました!やってみます!」


 私はレイピアに魔力を流すよう集中する。体に流れる熱い魔力が手先からレイピアに流れ込んでいくのが分かった。するとレイピアにはめられている小さな赤い魔石達がいつもより輝きを増していく。


(そうだなぁ、チェリート様の魔力だし結構強いはずよね、最大魔力を試してみたいけどもしものことがあったら怖いしそれなりぐらいでいいかな、こう、あまり魔力を奪われないぐらいのこんな感じで!)


 私はちょうどよいぐらいの魔力を流し込めると思い切り縦にレイピアを振るう。

 すると巨大な炎が一直線に飛んでいく。けたたましく炎は何百メートルも先まで続き木々を焼き払っていく。

 炎が起こった場所には真っ黒に焦げ、塵と化す。地面はひび割れ伯爵家の練習場は半壊する。

 そんな様子を見た私は顔を真っ青にして震える声でチェリートに話しかける。


「チェ・・・チェリート様・・・これは一体・・・」

「ふぅん、まぁまぁね、まだうまく私の魔力使えきれてないのかしら?」

「これがまぁまぁですか・・・?」

「当たり前でしょ、私を誰だと思ってるの?精霊王に次ぐ強さである私よ?町の一つや二つぐらい簡単に崩壊できる強さに決まってるでしょ。」


 ただのしがない悪役令嬢であったはずの私が魔王にジョブチェンジした。

 私がまだこの状況をうまく吞み込めないでいると莫大な魔法に気づいた屋敷の者たちが駆けつけてくる。


「今のは何事だ!あそこにはシンシアがいるんだ、早く・・・ってあれシンシア?」


 誰よりも先に駆けつけたお父様が私に気づき、そして私のとこから発生された焼き後を見る。

 他の聖騎士団達も駆けつけてきてこの事態に呆然とする。


「ご、ごめんなさい、お父様、私・・・」

「シンシア、もしかしてこれはシンシアの魔法かい?」


 お父様は私とその手に持っているレイピアを交互に見つめる。


「こんなことをするつもりはなかったんです!ただチェリート様の魔力がどれぐらいか知りたくて・・・お父様、私の魔力は一体どれぐらい上がってしまったのですか?」

「私たちの魔力は元より精霊たちによって作られたものだ。魔力の根源たるものが精霊なのだ。ましてやシンシアが契約を結んだのは精霊姫。私たちの測りえる魔力ではないよ。」

「それは、つまり私の魔力は10ということですか?」

「いいや違う、でも人間の数値で表すとするならばシンシアの魔力値はいま25ぐらいかな。」

「に、にじゅうごっ!?」


 ありえない数字に私は驚愕する。25などこの世で一番高いと言われている10の倍以上ではないか。精霊姫が人間達の間で敬服されている存在だとは分かっていたがその理由の一つが尋常な魔力量というわけだ。

 私はひとまず焼け払った訓練場についてはおとがめなく、お父様と一緒に今後どうするかを考えるため屋敷に戻った。


 屋敷に戻りお父様の部屋のソファに座ると使用人が紅茶を出してくれる。

 チェリートも一緒についてきたため彼女には紅茶とケーキが出される。人間用のフォークでは大きくてチェリートは持てなかったため至急彼女用の小さいフォークが用意された。

 チェリートはそのフォークで大きくケーキを切り、口に運ぶとそのおいしさに堪能する。

 私の目の前にはお父様が座り、考え込むように黙る。私はいたためれなくなりお父様に話しかける。


「私、どうするべきでしょうか・・・?」

「うぅむ、それがな私も悩んでいるんだ、精霊姫と契約した者などここ数百年見たことがない。そして精霊姫と契約した者は必ず英雄となっているんだ。英雄はな、呼び名はいいがそんな大層なものではない、世の終焉といわれる最大危機に対して誰よりも前にでて戦う、人々を危機から救うが自分は犠牲になるただの生贄だ。私はシンシアをそんな英雄などにしたくはない、ただ一人の可愛い娘を人類のために渡すぐらいなら世界が滅びた方がましだ。」


 私だってそんな英雄などごめんだ。前世で生涯短く人生を歩んだのだ、今世の目標は幸せに生きることだ。自分の起こりえる残酷な未来を逃れるために生きているのになぜ結局残酷な未来を選択しようと思うか。


「だが国王がそれを許すかどうか・・・それどころか各国がこの状況を黙っていないだろうな、シンシアを巡り戦争になる恐れも・・・」

「そ、そこまでですかっ!?」

 

 どの国もあり得るかもしれない終焉の危険に自分の国を守ってくれる人が欲しいに決まっている。そのためなら少ない犠牲など可愛いものだと。

 私がこんなにも焦っているというのにチェリートは他人事のように聞いている。それどろかケーキ一個じゃ物足りずお代わりを催促する。

 そんなカオスな雰囲気を壊すように扉をたたく音が聞こえた。

 そして許可を待つまでもなく入ってきた一人の女性をみてお父様が嫌そうな顔をしながら驚く。


「ルノーアルア!なぜここに!」

「やぁシューデン聖騎士団長、邪魔するよ」


 その女性は薄水色の髪をウェーブさせながら腰まで伸ばし、その長身で抜群のスタイルに切れ長の目は世の女性を虜にしてしまうほどだ。

 そんな美しい女性は白い隊服に左胸には白いバラの胸章が付いている。リリィと同じ、ホワイトローズ聖騎士団である。

 その聖騎士団は私をみると紳士的に笑い、膝をついて挨拶する。


「こんにちはシンシーリア・レバートリー嬢。私はホワイトローズ聖騎士団団長、ルノーアルア・コメロットと申します。どうぞお見知りおきを。」


 なんと私が入りたかったホワイトローズ聖騎士団の団長様であったのだ。

 私もルノーアルアに慌てて挨拶する。


「こ、こちらこそ!シンシーリア・レバートリーでございます。」 


 ルノーアルアは私ににこっと笑いかけてくるとお父様が忌々しくルノーアルアの方を向く。


「お前なにしに来たんだ。聖騎士団長の仕事はどうした?忙しいだろ」

「私は毎日そつなくノルマをこなしているんだ、人の旦那をこき使うようなどこぞの聖騎士団長と違ってな。」

「ふんっ、副団長が団長のフォローをするのは当たり前だろ。」

「あれはフォローというのではく世話をしているんだ。まるで赤ん坊の世話のようにな。」


 目には見えないが二人の背後から淀んだオーラがあふれている。

 リリィから二人の話を聞いた時仲が良いわけではないと言っていたがこれは真反対ではないか。

 二人の関係性が気になるもひとまず黙って事を見過ごす。


「おっと、お前とくだらない話をしにここに来たわけじゃないんだ。今日はシンシーリア・レバートリー令嬢に話が合ったんだ」

「シンシアに話だと?」

「あぁ、シンシーリア令嬢が精霊姫と契約を結んだというのは町中が噂している。そちらの可愛らしい方が妖精姫ですね」


 ルノーアルアはチェリートに丁寧にお辞儀をする。しかしチェリートは興味がないようにそっぽを向いてケーキを食べる。

 私は慌ててルノーアルアに非礼を詫びる。


「すみません、ルノーアルア聖騎士団長。チェリート様は今ケーキに夢中のため・・・」

「気にしていませんよ、元より火の精霊姫には我々人が迷惑をかけてしまいました。私たちが謝っても謝りきれません。」


 ルノーアルアは紳士的に対応してくれ事なきを得た。そして再び話を戻す。


「率直に言います。残念ですがシンシーリア令嬢が今まで通りの生活をすることは難しいでしょう。精霊姫と契約を結んだ今、どの国もが令嬢を手中に収めたいでしょうから。」


 それは先ほどもお父様に言われた。

 チェリートと契約を解除する気は毛頭ないため今後どうするか悩んでいたところだ。


「ですのでシンシーリア令嬢、ホワイトローズ聖騎士団に入りませんか?」

「はい?」

「どういうことだ、ルノーアルア。」


 いきなりの展開についていけずお父様が質問するとルノーアルアは説明する。


「今の現状でなにが問題かというとシンシーリア令嬢がどこの加護も入っていないということです。シンシーリア令嬢がフリーな今、どこの国も令嬢を狙います。なので彼女がすでにどこかの加護を得ているという印が必要です。」

「シンシアは私の娘だ。すでにマルーンイーグル聖騎士団の加護がある。」


 ルノーアルアはお父様の意見に否定するように首を振る。


「それはシンシーリア令嬢の意志ではありません。彼女が自分の意志で加護に入ることでもし彼女を奪うために他国が襲いにかかった時、対抗するという意思表示が伝わるのです。」

「どういうことだ」

「精霊姫と契約を交わした今、彼女はもう守られているだけではいられないのです。自分を守るためには自分で戦う覚悟があるということと、それを助ける仲間がいるということを分からせるべきです。この世界でシンシーリア令嬢を相手に敵う者などもうほとんどおりません。そうすれば無鉄砲にこちらにけしかけてくることは少なくなるでしょう。」

「・・・・」


 お父様は理解が出来たのか黙る。


「それにシンシーリア令嬢はホワイトローズ聖騎士団に元から入りたかったと聞いてます。」

「そうなのか?シンシア」


 初めて聞かされたことにお父様は驚き私を見る。


「えぇ、いずれかは言おうと思っていたのですが・・・」

「私の部下、リリアン・バルトラから話は聞いておりました。そして彼女はシンシーリア令嬢を守るためなら自分も戦うと言っておりました。」

「リリィが・・・」


 ここにはいない友達想いのリリィを思い浮かべ感極まって涙が少し浮かぶ。


「だがそれだともし最悪な場合、この世の危機に陥った時シンシアがいの一番に犠牲になるのではないか、それだけは誰がなんと言おうと反対だ。」


 お父様が一番懸念していることを言う。

 ホワイトローズ聖騎士団に入るということは人々を守るために行動しなくてはならないのだ。


「それは私も思います。もちろん、聖騎士団に入った以上、人々を守るのは義務となりますが生贄になれとまでは団長である私でも言えません。生贄になるのが当たり前だという奴は他人事だから簡単に言っているのです。そのため、今のこの状況を変えましょう。シンシーリア令嬢が火の精霊姫と契約したということを誤情報だと流しましょう。令嬢が契約を交わした精霊は精霊姫ではなく高位精霊と、そのため情報が大げさになり精霊姫と契約したと流れてしまったと。人々が何を言ってこようと私たちは高位精霊と言い張る。」

「国王も騙すというのか?」

「私たち聖騎士団は国ではなく人々を守ることであり、それを決めたのは歴代の国王です。シンシーリア令嬢も私たちが守るべき国民です。それにお前は娘のためにそんなことも出来ないというのですか」

「・・・・・・」

「今のところ精霊姫を見たものはこの屋敷の者とマルーンイーグル聖騎士団の少数です。他言無用にすることは可能でしょう。」

「あぁ、魔法の誓約書を書かせ死ぬまで言えないように出来る。」


 お父様はさらりと答える。


「後は今後、精霊姫が人々の姿に映らないようにしていただきたいのですが・・・」


 そこでルノーアルアはちらりとチェリートの見る。

 するとチェリートはフン、と威張るように胸を張る。


「そんなの簡単よ、元よりシンシアとスイーツしか興味ないもの。私の姿は契約者であるシンシアにしか見えないようにするわ。」

「ありがとうございます。ですがたまには私の前でもそのお美しい姿を見せていただけると幸いです。」

「ま、まぁたまになら」


 甘い言葉に弱いチェリートは簡単にルノーアルアの口車に乗ってしまう。

 ルノーアルアはチェリートに微笑みかけ、続いて私の方をむいて言う。


「ホワイトローズ聖騎士団に入るということは国王の加護、つまりはこの国の加護を得られることが出来ます。シンシーリア令嬢を守るには一番いい案かと思いますがいかがでしょうか。」


 私はふとお父様の方を見るもお父様も後は私の意志だというように静かにこちらを見つめる。

 私の覚悟もすでに決まっており、真っすぐとルノーアルアを見て言う。


「わかりました、私をホワイトローズ聖騎士団に入れてください。」

 

 元よりホワイトローズ聖騎士団に入りたかったのだ。

 前回よりも簡単な気持ちで聖騎士になることは出来なくなるがチェリートと契約した今、私は自分の置かれている状況に納得し受け入れる。


「もちろんです、これからよろしくお願いします。」


 ルノーアルアは私に微笑むとこれからの手続きをするためお父様と話すことになった。

 その際、私が精霊姫と契約を交わしているということを誰にも教えないという誓約書をどうするかという話が出た時、チェリートが提案する。


「それなら契約書には私の印を使いなさい、もし喋ったら消し炭になるように契約させるわ」

「あ、ありがとうございます・・・」


 可愛い顔で恐ろしいことをいうチェリートにルノーアルアも若干引き気味である。

 何はともあれホワイトローズ聖騎士団に入ることは出来た、それに国の加護も加えられた。

 しかし私のバッドエンドはまだ回避できていない。

 それを回避するために今できる最後の対応をしなければならない。

 私はお父様の部屋を出ると急いである人に手紙を書いた。




いつも読んでいただきありがとうございます!

今日は暖かい日ですね・・・

中等部編も次で最後となりますので読んでくださると嬉しいです。

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