価値がないけど価値がある
「すごいわ・・・すごいわティナ!まるで星から舞い降りた天使のようよ!」
私は自分の姿を鏡で見ながら感動する。
試験も無事終わった後に行う終業パーティ。
朝からティナが寝ぼけた私を起こして念入りに手入れをしてくれ、私はなすがままその至福の時間を楽しんだ。
終業パーティが始めるぎりぎりになってやっと支度が終わりリッティがその出来栄えに鼻息を荒くする。
動くたびにキラキラと光る紺色のドレスはまるで夜空の一部を盗んだように綺麗で、ハーフアップにした赤い髪はそのドレスのおかげでより明るさが増す。
毎日運動を欠かさないため良い形のしたデコルテをあらわにし、一等星のように光るダイヤを首に着ける。
今のシンシーリアは誰もが目を奪われるほど素敵な女性となった。
「ありがとう!こんなに綺麗になれたはティナのおかげよ!」
「なにを言っておりますか!お嬢様はいつでも美しいのです!私などそのお手伝いを少ししたまででです。」
「いいえ、ティナだからこそ、こんなに私を綺麗に出来たのよ、ティナは私よりも私の事を知ってるのね!私、ティナに出会えてよかったわ!」
「お嬢様・・・!わ、私もですぅ~!」
そういうとティナは感極まって泣き出してしまう。私は慌ててティナをなだめた。
少しすると扉をノックする音が聞こえ、返事をすると聖騎士団の隊服をきたリリィが入ってくる。
リリィは私を見ると紳士的に微笑む。
「いつも綺麗だけど今日は一段と綺麗だね、シンシア。」
「ありがとう、リリィ。これもリッティのおかげよ。」
そういうとリリィは私に手を差し出す。私もリリィの手を合わせて、ティナに行ってくるねとお別れの挨拶をする。
二人で女子寮を出て歩いていると門に一人の男性が待っていた。
「お待たせしました、カイニス様。」
「いや、平気だ。そのドレス、良く似合っている。」
私たちはカイニスのそばに近寄るとリリィはカイニスに私へのエスコートを譲る。
試験が終わった日、カイニスは私にパーティのエスコートを約束した。
前回は勝手に待ち伏せして勝手にエスコートしてきたが今回はちゃんと約束をしてくれたため私も断ることはしなかった。
リリィも誘って三人でパーティ会場に向かった。
パーティ会場に入ると前回同様、中にいた人々の視線をすべて集める。
しかし今回は少し意味が違う。聖騎士団見習いと互角とは言えないがそれに匹敵するほどの剣技を持ち、冷徹で完全無欠の公爵家の跡取りを夢中にさせている、まるで人が変わったような伯爵令嬢にすべての集中が集まった。
そしてその美しい見た目に女性達は悔しがり、男性達は嘆息した。
そんな事気づくはずもなく、私シンシーリアはカイニスと一緒に会場の中央まで行く。
私とカイニスは一度おじぎをしあい、再び手を取り合う。
ゆったりとしたメロディーが会場に響き、私たちはそれに合わせて踊る。
まだまだぎこちない踊りではあるもののぎりぎりカイニスの足を踏まないでいられる。
するとカイニスが話しかけてくる。
「ダンス、上手になったな」
「え?ありがとうございます、でも少し話しかけないでくれませんか?集中しないとカイニス様の足を踏みそうで・・・!」
カイニスはそれを聞くと少し口角をあげる。
「そういえば試験無事に補習グループから抜け出せたな。」
「え?あぁそうですね、これもカイニス様のおかげです。」
「そうか、ならそのお礼をしてくれないか?」
「お礼ですか?」
私は足元を気にしつつ、カイニス様の話を聞く。
「あぁ、明日町へ行かないか?デートしよう。」
「え?あ!」
私は驚いてカイニスの顔を見てつい気を緩めてしまった。リズムを崩して思いっきりカイニスの足を踏んでしまう。
せっかく上手にいってたのにカイニスが何故かずっと話しかけてきたからだ!
するとカイニスは堪えてきれなくなったのか声を出して笑う。
「なんで邪魔するんですか!」
私は文句をいうもカイニスはまだ笑いを抑えきれない。
カイニスが笑うことを知っていたのはここいる会場ではシンシーリアただ一人だ。
初めて見る彼の姿に皆驚く中、そんな人たちを気にも留めず二人は楽しくダンスを踊るのだった。
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パーティも無事終わり今日から冬休みとなったが私はすぐに家に帰らなかった。
寮を出て門の前には昨日と同じでカイニスが待っている。
勉強を教えてもらったお礼として町に行きたいというカイニスの願いを叶えるのだ。
馬車に揺られてる間私は今日の予定を聞く。
「今日はどうしますか?町で何かやりたいことでもあるのですか?」
カイニスはすぐには答えず私の様子を伺ってくる。
「?カイニス様?」
「いや、なんでもない。今日はそうだな、新しくケーキ屋が開いたのでそこでお茶でもしよう、その後はゆっくり町を見れたらいい」
カイニスが町の情報を知っているとは驚きだ。
新しくできたケーキ屋はどれほどの種類があるのか今から楽しみだ。
昨日もパーティで沢山のケーキを食べたが一日経てばリセットしてしまうのが女の子だ。
新しいケーキ屋さんは多くの女の子達で賑わっていたが私達は奥の二階の仕切りのあるところに案内される。
他のお客さんに見られないように隔離されてるため、カイニスを見ようとする女の子達からの視線から逃れられる。
私はいちごのタルトとモンブランをとりあえず頼み、カイニスは二人分の紅茶をスタッフにお願いした。
やっと二人になったところで私は話しかける。
「すごいですね、ここ、周りから見えないようになってるので人の目が気にならないです」
「ああ、昨日手紙を出して二人きりになれるような席を用意してくれと頼んだのだ」
なんとこの席はカイニスがわざわざ予約してくれていたという事だ。
いつの間にそんなスマートなことを出来る様になったのか、私はカイニスの成長に感動した。
そこのケーキ屋も大変美味しく、あの後追加で二つまた頼んだがカイニスは呆れることなくじっと見つめてきた。
私達はケーキ屋を出て、とりあえず散歩しながら町を見て気になるところがあればその都度お店に入ろうということになり、歩き始めようとしたらカイニスが手を差し出してくる。
「離れたら危ないから手を繋ごう」
「今日人そんな多くないから離れないですよ」
「わからないだろ、また迷子になられたら心配する」
「ちょっと待ってください。この間のは私が迷子になったんじゃなくてカイニス様が迷子になったんですよ」
どちらが迷子になったのかというくだらない口論は結局お互い譲らず、なら今回手を離していなくなった方が迷子だったということで話は決まり、私達は手を繋いで町を歩いた。
町に来たのはこれで3回目。
1回目はシンシーリアの誕生日プレゼント探しにカイニスに連れられ、2回目は建国祭でお祭りを楽しんだ。そして3回目である今日はただ町をぶらぶらする。
服もドレスではなく、動きやすいスカートを履いて護衛も連れて来ていないためのんびりと町を見ることができた。
しかしやはりカイニスは人々から惹かれやすい見た目をしているため女性達がチラチラとこちらを見るも彼の手は私と繋いでいるのに気づくと渋々諦める。
私は初めて町をゆっくり見ることができてとても楽しかった。
何か見つけるたびにカイニスに話しかけ、カイニスもちゃんと相槌を打つ。
すると日もすっかり暮れ始めた。
オレンジ色に染まる景色に名残惜しさを感じるも私達は馬車の所に戻ろることになった。
その時カイニスが話しかけてくる。
「今日は一緒に町を回れて楽しかった。良い誕生日を過ごせた」
「え?カイニス様、今日誕生日だったのですか!?」
一日が終わるころに衝撃の事実を聞かされ驚いてしまう。
「やはり覚えてなかったか」
カイニスそんな私の反応が分かっていたのか無表情を崩さない。
乙女ゲームのカイニスのプロフィールに確か誕生日が書かれていたと思うがそんなところまで覚えていなかった。
私は何も準備していなかったため慌ててプレゼントを探そうとする。
「本当にすみません、よければ今から探しませんか?何か欲しいものとか、、、」
ふと、カイニスに欲しいものなどあるのだろうかと思ってしまった。
貴族のトップである公爵家に買えないものがあるとしたら私も買えるはずがないのだが。
私はなにがいいか悩んでいるとカイニスが提案してきた。
「一つだけ欲しいものがあるんだ。モノではない。」
「え?そうなんですか?なんですか?」
私がそう言うとカイニスは真剣な表情でこちらを見つめる。
「どうかあなたの事を愛称で呼ばせてくれないか」
いったいどんな無理難題を突きつけてくるのかと思ったら予想外のものに拍子抜けしてしまう。
だがカイニスは至って本気のようだ。
「それは、構わないのですがそれでいいんですか?」
「あぁ、これがいいんだ」
「・・・そうですか、改めてカイニス様、お誕生日おめでとうございます!」
「あぁ、ありがとう。シンシア」
そう言って私たちは笑い合った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
もう少しで中等部編が終わります・・・




