健闘祭
カイニスとリリィから健闘祭でお守りとして作るミサンガをねだられて私はリッティに作り方を教えてもらい毎夜毎夜遅くまで作りあげていた。
そのため授業は集中できずうたた寝をしてしまうことが増えた。
リリィから心配されたが自分が作るといったため最後まで頑張ろうと建国祭の前日まで必死に作り上げた。
そしてついに健闘祭の日。
私は無事にミサンガが完成し、緊張が解けてぐっすり眠ってしまったため大会に遅れてしまった。
勝負に参加しない生徒と教師は上の階ですでに集まって好きな殿方をより良い位置で見れる場所に陣取り、参加する生徒たちは下の待機場所を体をほぐしている。
私は上には行かずカイニスとリリィがいるところに向かう。
大会に参加する男子生徒たちが多いため探すのに苦労しているとリリィ達が気づきこちらに手を振ってくれたため私はあまり困らずに済んだ。
「遅れてごめんね!寝坊しちゃって」
「全然!大会には間に合ったんだから!それにシンシアが寝坊したのはきっとミサンガを作ってくれたからでしょ?」
リリィはこれから自分の勝負が始まるというのに私の心配をしてくれる。
隣にいるカイニスも何も言わないがずっと私の顔を見つめてくる。
私は目の下にあるくまが化粧でちゃんと隠せているか心配になってきた。
「あ、そうそう、これ二人に。あまりうまく作れなかったけどいいかな?」
そういってミサンガを渡す。
カイニスには青色のミサンガでリリィには緑色のミサンガをあげた。
他の男性生徒の腕を見ると素晴らしいほど緻密なミサンガでがつけられてあったが私にはこれが限界だった。
皆より劣っているミサンガをみて少し恥ずかしくて今更ながら返してもらおうかと思ったが二人は随分と喜んでくれた。
「ありがとう、シンシア!これで今日の試合勝てるわ!」
「一週間で二人分も作ったのだ、良く出来ている。」
文句も言わず褒めてくれるのが嬉しくて私はつい顔を緩めてしまう。
「ありがとうございます、二人とも今日は頑張ってください、上から応援します!」
「うん、あ、待って、これ腕に着けてくれる?」
そういってリリィは自分の腕を差し出す。
「ミサンガを渡す際に、渡した相手が渡す相手の腕にそのミサンガを着けてあげるの。」
「そうなんだ、分かった」
私は試合中ほどけないように強く結ぶ。
リリィの分を結び終えると次はカイニスが手を差し出してくる。カイニスの分もきつく結びつけるとカイニスは私の手を掴み手の甲に軽くキスをする。
「ありがとう、大事にするよ。」
「なっ!」
いきなりの事で頭がパニックになる。
私たち以外にも沢山の生徒がいるというのに大胆なことをされて恥ずかしくて顔を真っ赤にしてしまう。
私 が驚いて口をパクパクしているのが面白いのかカイニスは少し笑う。
「何するんですか、カイニス様!」
「ミサンガの礼だ。」
「礼って・・・」
サラッと答えるカイニスに私はもうこれ以上何も言えない。必死に手で顔をあおいで顔の熱さを減らす。
「必ず優勝する。」
「何言ってるんですか、カイニス様、優勝するのは私です!」
カイニスのキスを防ぐごとが出来なかったリリィが反抗するように突っかかる。
「そういえば無事に勝ち続けていったら二人はいつ当たるの?」
「そうね、もしカイニス様が無事に勝ち続けることが出来るのなら私と当たるのは決勝ね。」
ということは二人は別の組に入ったということだ。
すると試合が始まる合図が始まり私は二人と別れて急いで上の階に向かった。
上の階で空いている席を探しているとツンデレちゃんのペペローメが私の席の分まで取ってくれていた。
そういえばペペローメも誰かのためにミサンガを作っていたのでカイニスに渡したのか聞くと、最近仲の良くなった貴族男子にあげたと顔を赤らめながら話してくれた。
私の知らぬ間に仲良くなっており、ついつい子離れできない親のような気持ちになってしまった。
その男の子が一体どんな人なのか気になりながら健闘祭が始まった。
健闘祭は聞いていた通り、男子生徒達が剣のみで戦っていった。
カイニスとリリィは順調に勝ち進んでいく中、私は少し退屈そうに試合を観戦していた。
確かに他の人の試合を観れるのは楽しいことだが私としてはリリィと同様、男子生徒達と加わって剣を交えたかった。
やはりあの試合に入るには聖騎士団に入るしかないなと私の死刑フラグを少しでも減らすためにも再度心に刻んだ。
考え事をしていたらすでに試合は佳境となっていた。
最終試合に残ったのはリリィとカイニスだ。
二人ともファンが多いため、会場から二人が出てきた時はものすごい応援が聞こえる。
カイニスにいたっては婚約者も見ているのに堂々たるその歓声に隣に座っているペペローメは不快感を露わにする。
「全くカイニス様には婚約者がいるというのに皆様一体なんなのかしら!」
きっと本来のシンシーリアの時だったらこんな事は起きなかっただろう。
最近異常に変わった私のせいで皆何をしてもいいと思ったのか、なりふり構わずだ。
でもこんなに女性達のアピールがすごくなったということは私が婚約者のふりをする価値がなくなっているのではないだろうか。
カイニスは婚約者の空きを狙う女性達のアピールから逃れたくて私とまだ婚約しているのだから。
「大丈夫ですよ、ペペローメ様、私は特に気になりませんので」
「しかし!」
「人を好きになる気持ちを私が止めていいとも思いませんしね、それより二人を応援しましょう!」
二人が舞台に上がり、周りも静かになる。
審判が始まりの合図を鳴らすと再び歓声が轟く。
カイニスの剣捌きもすごいがやはりそれを得意としているリリィの方が優勢な感じがする。
リリィは少し余裕なのか笑みを浮かべながらカイニスの剣を受けてばかりで攻撃を仕掛けない。
カイニスもそれがわかっているのかリリィの隙をくまなく探す。
試合は長く続き、観客達も興奮が冷めない。
カイニスが少し息が乱れているもののリリィはまだまだ余裕そうな顔をしている。
この試合はリリィの勝ちだろうと私は見込んでいたがそこで状況が一変する。
カイニスの太刀を受けたリリィの剣が折れたのだ。
確かに健闘祭で使う剣は学校が用意したもので皆同じだ。
何度も使い回しているのにそれなりにしか手入れされていないので多少のボロはあるだろう。
だがこれは一体なんだ、
リリィなら自分の剣ではなくても剣がどのような状態か確かめて使っている。
私にも剣の状態を常に確認するように言ってたのだからこのような試合でそれをやり忘れることなどない。
もし剣が危ない状態なら試合前に取り替えるだろうし、この試合中から違和感を感じていたのであればリリィはあんなに余裕を見せてはいなかっただろう。
誰かが見えない圧力をかけている気がする。
これはレール通り、物語通り進まないと許さないという圧力が。
リリィは膝付いて悔しそうにカイニスを見上げる。
カイニスはリリィの首元に剣を突き出し、試合は終了した。
どちらが勝っても素晴らしい試合だったと周りの人達が絶賛する中、私だけは素直に喜べなかった。
「シンシーリア様…?」
ペペローメが声をかけてきたが途中で言葉を止める。
私はペペローメが話しかけていたことなど聞こえておらず、視線は健闘した二人を見下ろしていたが考えていたことは別だった。
この時の私は一体どんな表情をしていたのだろう。
私はこの世界に来て初めてここがゲームの世界であることを強く憎んだ。
いつも読んでくださりありがとうございます!
今回は少し暗めに終わらせていただきました。
ですが次からはいつも通りの明るいお話となりますので引き続き読んでくださると嬉しいです。




