↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
30/39

恋のかけひき



 建国祭からずいぶん経ち、私は必死に座学にしがみつき、ぎこちなくなりながらもマナーを覚え、相変わらず成長しない魔法学に奮闘し、放課後のリリィとの特訓に汗水たらしながらも毎日楽しく過ごしていた。


 そんな中、最近の学校の雰囲気がいつもと違うように感じるようになった。

 男はソワソワしだし、女の子は照れながらも急いでいるように見える。

 私はそんな様子に前世で言うバレンタインの時期のようだなと思った。

 前世の私は彼氏などいたこともなく、好きな人にあげようと思うけども恥ずかしくてあげれなく、チョコなど友達にあげるだけだったがそれでも充分楽しかったなとふと昔を思い出す。


 私は他の女の子と同様になにやら急いでいるペペローメに声をかけた。


「最近忙しそうですね、ペペローメ様。他の女の子もなにやら忙しそうですし。何されているんですか?」


 そう聞くと、ペペローメは驚いたようにこちらを向く。


「なにを仰っていますの、シンシーリア様、来週は健闘祭ですわよ?」

「けんとーさい?」


 意味が分からなく私はのんきに首を曲げ、乙女ゲームで起こった出来事を思い出す。

 健闘祭は男同士が戦い合う祭りの事を言う。魔法を使うのは禁止で剣のみを使った真剣勝負だ。

そのため女は好きな男へ健闘を祈り、ミサンガを贈るのだ。

乙女ゲームでもヒロインが攻略対象にミサンガを贈っていた。

 だから男たちは好きな女の子からミサンガをもらいたくてドキドキして、女の子は好きな男の子に無事に建国祭までに渡せるようミサンガが作れるか違う意味でドキドキしているのだ。

 好きな殿方に贈るのだからそれは勿論10分、20分で作れるような簡単なミサンガではなく、それぞれ凝ったミサンガを作っているのだ。


「あー、こんな時期にやるんですね。」

「去年も同じ時期だったではないですか?」


(知らん)


「あー、確かに、そうでしたね。」


 私には関係ない祭りなので特に興味もわかない。

 ペペローメからの問いにいつもより適当に答えてしまう。


「というか、シンシーリア様は大丈夫なのですか、そんなのんびりしてらして。カイニス様へのミサンガはもう用意できているのですか?」

「え、用意してないですけど?」

「何ですって!」


 驚いたペペローメは大きな声をあげてしまい周りからの視線を浴びる。

 ペペローメは少し恥ずかしいように顔を赤め、コホンと咳払いすると話を戻す。


「カイニス様にミサンガを作ってないとはどういうことですの?」

「だってカイニス様、私のミサンガなんていらないですから。」


 乙女ゲームの世界ではカイニスは婚約者であるペペローメからのミサンガをもらう事すらせず、主人公が作ったミサンガを腕に着けて挑んだ。

 勿論その大会はカイニスが優勝した。

 もらわれないと分かっているミサンガを何故私が作らなくてはならないのだろうか。


「だったらシンシアのミサンガ私にくれない?」


 すると横で聞いていたリリィが会話に入ってきた。


「え、リリィも建国祭に参加するの?」

「うん、私、聖騎士団見習いだからみんなに混ざって参加できるんだ。」

「えぇ~いいなぁ!私も参加できないかな?」

「うーん、無理だと思うな。やっぱり女の子は男たちと混ざるのは危ないと思っているから。」


 やはりこの世界は前世でいた世界より女性と男性が平等に出来ていない。

 自分が参加できないことを改めて知るとつまらなそうに机に突っ伏す。


「それでどう?私のために作ってくれない?」

「えぇ~、私、ミサンガ作りなんて出来ないよ?器用じゃないし、時間ももうほぼないし。」

「それでもいいよ、シンシアのミサンガってのに意味があるから。適当でも下手でも文句は言わないよ。」


 紳士的なセリフに素敵な笑顔を向けられ私は少しリリィに惚れてしまった。

 これで頭が良ければ完璧なのに。

 そこでふと、疑問に思ったことがある。

 聖騎士団見習いであるリリィが出るとしたら来年に行われる建国祭にも出ていたはずだ。若くして聖騎士団見習いになれるほどの腕を持つリリィがカイニスに何故負けたのだろうか。

 カイニスも確かに強いがリリィがカイニスを剣技で褒めたところなど聞いたことないとみると実力はリリィのが強いはずではないだろうか。

 いつの間にか眉間にしわをよせて考えいると、ミサンガを作るのが嫌だと思われたのかリリィが落ち込んだ顔でこちらを見つめてくる。


「やっぱりだめかな?」


 その顔がまるで捨てられた子犬のようで見る人の心を奪った。 

 私は諦めてリリィのお願いを叶えることにした。


「分かったけど、ほんとに下手だからね?」

「やった!シンシアのミサンガ楽しみにしてる」


 リリィは満面の笑みを作ったためこちらもつい笑ってしまう。

 部屋に戻ったらティナにミサンガの作り方を教えてもらわなきゃな。


-----------------------------------------------------------------------------------------------


「それでミサンガはいつもらえる。」


 それは同じ日の昼の話だった。

 いつも通り食堂でご飯を食べているとカイニスが私に聞いてくる。

 私は食べていたものが変な所にはいってしまい、慌てて水で流し込む。


「え・・いるんですか?」


 カイニスからそんな話がされるとは思わなかったためつい聞き返してします。


「婚約者なのだから当たり前だ。」


 答えになっていない。

 私は正直にミサンガを準備してないことを伝える。


「すみません、いらないと思ってたので作っておりませんでした。」


 そう言うとカイニスは表情こそ変わっていないがどこか寂しそうであったため私はすかさずフォローをいれる。


「でっ、でもカイニス様なら他の方からミサンガ沢山貰っていますよね?一つ数が減ろうが問題ないのでは?」


 カイニスは多くの女性から今も変わらずアプローチを受けている。

 婚約者がいるというのにこの世界の女性たちは遠慮がないと思うのだがそれはカイニスとシンシーリアの関係が冷めきっているからなのだろうか。

 カイニスが他の女性を相手にしてないからシンシーリアもそこまで他の女性に嫉妬することはなかったがそこに主人公が現れたため彼女は変わってしまった。


「あなたのじゃないと意味がない。それにあなた以外のミサンガなど貰わない」


 そうはっきり言ってくるカイニスに本来は嬉しいと思わなくてはならないのに素直に喜べない。

 カイニスはどうせ私以外の人からのミサンガを貰うから。

 彼が悪いわけではないのは知ってる。その未来を知っているのは私だけなのだから。

 だけでどうしても胸のもやもやが拭えない。


「・・・簡単なものでいい。作ってくれないか?」


 捨てられた子犬のようにこちらを見てくるカイニスに私は断ることが出来ない。

 そこで今まで黙って聞いていたリリィが口を挟む。


「ダメです!シンシアは私に作ってくれると約束してくれたのです!カイニス様の分を作っている暇などございません!」

「そこは婚約者である私に譲るべきではないか?」

「はっ!そもそも婚約者であるというのに準備されていなかった仲を疑った方が良いのでは?」


 二人はなぜか火花を散らし始め、周りの人たちがこちらを心配そうに見始めたため私は慌てて暴れ犬達を抑え込めた。


「分かりました!分かりましたから!二人分のミサンガ用意いたしますから!」


 そういうと二人は争いをやめたが牽制し合う目つきは変わらない。

 一体どうしてこの二人がこんなにも仲が悪いのかは分からないがそんなことより、正直この一週間寝る時間が減ってしまうことに私はため息をついた。


いつも読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。