これは偶然か、必然か
リリィ達の元に帰ろうとしたのだが町は人が多く、慣れてない道のため私はどこに向かえば分からなくなってしまった。
そして最悪なことに人ごみに紛れてカイニスと離れてしまい、絶賛一人で迷子中である。
きっと今頃リリィ達が心配しているだろうなと思いながらも、私も必死に歩き回っていたがその時、私は足に痛みを覚え見てみると慣れない靴のため少し靴擦れを起こしてしまっていた。
ひとまず私は休憩して痛みが引いてからまた歩こうと近くにある長椅子に座る。一呼吸し、景色を眺めていると行きかう人々は楽しそうに顔を緩ませ祭りに参加している。
私もそんな人々を見て幸せな気持ちになっていたところ視界の片隅でなにやら気になるものが目に入った。
見るとガラの悪そうな男たちが数人で一人の女の子を囲って路地裏に誘い込んでいる。
女の子は誘い込まれているのに気づかず逃げるように路地裏に走っていってしまったため、私は痛む足を我慢してその後を付いていった。
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「おいおい、お嬢ちゃん、どこまで行くんだよ?」
「俺たちとあそぼーぜー」
ゲラゲラと下品のない笑い声をあげながら男たちは人が少ない路地裏に女の子を追い詰めた。
女の子は逃げ場を失い、顔を真っ青にしてどんどんと近づいてくる男たちに恐怖する。
一人の男に腕を掴まれもう終わりだと思った瞬間、男たちの後ろで凛とした気高い声が響いた。
「こんなところで何をしていますの?」
そこには私と同い年ぐらいの女の子がいた。綺麗な赤い髪を腰まで伸ばし、宝石のような緑の瞳は男たちを鋭く睨みつける。
しかし男たちはそんな女の子におびえるはずもなく余裕な態度を見せる。
「おっと、いい上玉釣ろうとしたらもう一匹かかったぜ。」
「しかもこっちも上玉とみた、俺たちゃついてるな。」
「何をしていると聞いているのです。」
気高い女の子は変わらず聞く。
「何ってちょっとこのお嬢ちゃんと遊ぼうとしていたところだよ。」
「嫌がっているじゃありませんか。その手を離しなさい。」
「じゃあ代わりにお嬢ちゃんが遊んでくれるか?」
男たちはその女の子を舐めまわすように見るが女の子はそんなの気にせずむしろ余裕そうに笑って見せる。
「いいでしょうか、遊んであげます。」
そういうと近くに行った角材を手に取り、男たちに向かって構える。
「私に勝ったらどうぞ好きにしてくださって構いません。」
「ハハハ!そりゃいいな!乗ってやる、お前ら行け!」
男たちはか弱い小さな女の子に一斉に襲い掛かる、私は止めることも出来ず、ただ怯え目を閉じてしまう。すると鈍く、重い音が沢山聞こえると男たちの悲鳴が聞こえてくる。
恐る恐る目を開けるとそこには巨大な男たちに屈することなく果敢に挑んでいる女の子がいた。
男たちは女の子に触れることさえできずに一方的に殴られて、次々地面に伏していく。
私の目は女の子に釘付けで一瞬たりともその姿を逃したくなく瞬きをするのを止めた。
あっと言う間に女の子の周りには打ちひしがれた男たちが地面を這いずり苦しんでいる。そして最後の1人、私の腕を掴んでいる男に近づいていく。
初めの余裕は男にはなく、怯えるような目つきで女の子を見つめ後ろに下がっていく。
「く、来るな、来るなよっ!」
へっぴり腰な男はもう女の子にしか気にしていなかったため私はその隙を狙って思いっきり男性の急所を蹴り上げた。
男は変な声を出しあそこを抑えて悶絶しているところを女の子が最後にと思いっきり角材を頭に振り落とした。
気絶して倒れている男たちを置いて女の子は私の腕を掴んで人目があるところまで無我夢中で走った。
息も切れ切れになりやっと呼吸を整えられると女の子は大きく笑い出した。
「アハハハ!まさか最後にあなたがあんな事してくださるとは!驚きました!手伝ってくれてありがとうございます!」
「お礼を言うのはこちらの方です!私を助けてくださり本当にありがとうございました。あなたがいなかったら私は・・・」
そう言おうとした私を女の子は優しく強く抱きしめてくれた。そして耳元で優しく伝える。
「あなたが無事で本当に良かったです。でもこれから気を付けてください。あなたはとても綺麗なのでまた変な輩に狙われてしまうこともあるかもしれませんので。」
そう心配してくれる女の子に私は顔が熱くなり、次に出す言葉が浮かんでこない。
そんな私を見かねた女の子はそっと私の頬に手を当てる。
「大丈夫ですか?顔がとても熱いようですが・・・どこか怪我でもされたのですか?」
「あっ、いえ、違います!大丈夫ですので気にしないでください。」
「そうですか」
「お嬢様!」
すると誰かが呼ぶ声に女の子は反応する。
「あ、サンドリックじゃない」
みるとマルーンイーグル聖騎士団の1人が女の子の元に駆け寄る。
どうやら私を助けてくれた女の子はどこかのお嬢様であり、聖騎士団とも親しい間柄を持っているのだ。本来の私なら話しかけることすらできない女の子だったのに助けてまでもらい、一体どうやってお礼をすればいいのだろうか。
女の子は先ほどの恐ろしい出来事などなかったようにケロッとした顔で聖騎士に話しかける。
「そっか、ここの警備はマルーンイーグル聖騎士団の仕事だもんね、さっきあそこの路地裏で危ない奴らに襲われかけたから捕まえてきてくれる?まだあそこで伸びてると思うから。」
「襲われたって・・・大丈夫でしたか?」
聖騎士は顔を真っ青にして女の子を心配する。よほど大事にされているのが分かる。
「えぇ、私は大丈夫。襲われたのはこの子、サンドリック、危ないからこの子を家まで送って行ってくれない?」
「分かりましたがお嬢様はどうされるのですか?」
「私は今日カイニス様達と一緒に来ているから探しに行かないといけないの。カイニス様はお坊ちゃまだからきっと今頃一人で泣いているわ。だからこの後の事よろしくね。」
女の子はそういって引き留める間もなく人ごみの中を駆けて行ってしまった。
私は彼女の名前を聞くことすらできずただ彼女の姿が見えなくなるまで目で追いかけた。
いつかまた彼女とどこかで出会え、もし可能であれば仲良くできることを祈って。
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私は再び人ごみの中を歩き、3人を探す。
女の子を救った後、運よくサンドリック達にあったため、あの悪い奴らはお縄に着き、女の子は無事に家に帰っているだろう。
襲われた女の子は近くでみるととても可愛らしい子だった。
ふわふわの金髪を腰まで伸ばし、快晴のような水色の目はとても大きくまるで人形のようだった。
声もかわいいソプラノでシンシーリアとは真逆といえる男が好きそうな女の子であった。
きっとすごくモテるのだろう、見る限り平民でありそうな気がしたが貴族のお眼鏡にかなうのも時間の問題だろう。
大人になった時、どこかの社交場で出会うかもしれない、それはまぁ自分が逃亡しない場合であるが。
そういえばこの恋愛ゲームの主人公はどんな姿なのだろうか。
ゲームでは姿が描かれていなかったが他の女の子達も嫉妬するぐらいであったのだから美少女に決まっている。
まぁあんなイケメン三人の隣に立てるぐらいなのだからそうじゃなきゃおかしいだろう。じゃなきゃゲームの趣旨が違ってくる。
そんなことを考えながらも町中を探しているが3人は見つからない。
しかしその時、後ろから手を掴まれ声をかけられる。
「シンシーリア!」
「!カイニス様!」
息を切らしたカイニスが探してくれていたのか私を見つけてくれた。
「心配したぞ」
「すみません、まさか離れてしまうとは思わなくて。大丈夫でしたか?」
「あぁ、あなたも何もなかったか?」
「えぇ、大丈夫です。」
カイニスとはぐれてしまった後、輩を退治したとは面倒くさいから言わないことにした。
「さぁ、急いでリリィ達の場所に戻らないと!きっと戻るのが遅くて心配しているはずです。」
そうして歩こうとするもカイニスが掴んだ腕を離さない。
何をしているのだろうかと不思議にしているとカイニスが私に手を差し出す。
「また迷子になってしまっては危ないから手をつなごう。」
よく理解が出来なくて私はお手の意味がわからない犬のようにカイニスの手を見つめてしまった。
(カイニスが私を心配?いや、そんなはずがない。彼は冷徹な人だ、何か別の意図が・・・そうか!初めての人ごみの中一人で迷子になって怖かったのか!確かに、カイニスはこんなところ来たこともなかったからね、子供のような気持なのだろう)
カイニスにもかわいいところがあるのだな、とついゲームのファンとしてにやけてしまいそうになったが気を引き締めてお嬢様らしく微笑む。
「そうですね、では行きましょう。」
私はカイニスの手を握る。
ダンスで手を重ねたことはあったが手を繋ぐのは初めてだ。
まだ子供であるがシンシーリアよりも大きい手に少し緊張してしまう。
カイニスは本当に離れるが嫌なのか、私の手を強く握ってくる。私も離さないぐらいに握り返してリリィ達の待つ場所に向かった。
「あ!やっと帰ってきた!」
私たちはカイニスのおかげでリリィ達が待つ場所まで戻ってこれて、遅くかった私たちを見てリリィは心配してくれてた。
「もう肉まん買いにいっただけのはずなのにどれだけ時間かかったの!なにか危ないことに巻き込まれてるのかと思った!」
「ごめんね、リリィ。肉まんじゃなくて他の所に行ってたの、そしたらカイニス様とはぐれちゃって。」
「そうだったのかい、なにも起きなかった?シンシーリア」
ポーテルドも心配して聞いてくれる。
「うん、大丈夫よ、心配かけてごめんね。」
「それはいいけど・・・なんなのこの状況。」
するとリリィが異変に気付く。視線の後を追うとカイニスと私が繋いでいる手を険悪な目つきで見ている。
「あぁ、迷子にならないように手を繋いでたの、カイニス様、もう大丈夫ですよ。」
4人集まったためもう迷子になることはないと私が手を離そうとしてもカイニスはその手を緩めない。
「カイニス様?」
「・・・人はまだまだ多いだろう。」
「何おっしゃっているのですか、カイニス様。みんな集まったのですからもうはぐれませんよ。そんなに心配ならこの男がこれから歩く中、カイニス様だけを見ておきますよ。」
リリィはそういってカイニスのお目付け役としてポーテルドを指さす。
「え、それ本気で言ってる?」
勝手に決められたポーテルドは困ったように笑う。
それでもカイニスは私の手を離さない。なので私はリリィにこっそり耳打ちした。
「カイニス様は初めての人ごみというものを経験したのに迷子にまでなってしまったから心配なのよ。それにほら、カイニス様とポーテルド様が迷子にならないためだからといってこんな町の中、二人が手を繋いだりなんかしたら噂されちゃうわ」
「確かにそれはそうね・・・シンシアまで悪い影響持たれちゃうし・・・しょうがないわね。」
リリィも納得したがどこか不服そうに私たちの握った手から目を離す。
それからは4人でいろんな箇所を巡り、馬車の中で眠ってしまうほど楽しい建国祭を過ごした。
いつも読んでいただきありがとうございます!




