アルファランス家
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お昼にさしかかるころ、生まれた時から大事に時には厳しく育て今では立派に育ったここ、アルファランス公爵家の跡取りであるおぼっちゃまが返ってくる。
「おかえりなさいませ、おぼっちゃま」
「あぁただいま」
おぼっちゃまは羽織ものを脱ぎそれを私に渡す。
お母様に似た黒い髪と濃い青の瞳は周囲の目を引き付けるほどの魅力がある。
公爵家の跡取りのため幼いころから寝る間も惜しみ勉学に励み、血と汗を流しながら武術を学んだ。
それゆえ彼は劣る部分がなく周りから一目置かれる存在となりえた。
しかし子供のころから遊ぶことなく跡取りとしての日々を過ごしていたのであまり感情がないまま育ってはいたが、ある事故を機に少しはあった子供らしさも皆無となってしまった。
それが最近、そんなおぼっちゃまの悩んでいる姿を見かけることが増えた。
庭に興味を示したことなど生まれてこの方一度もなかったのにある日、業務の合間に庭を散歩していると思いきや庭に咲いてるやひまわりで花束を作ってほしいと言い出した。
私は特に理由を聞くことなく花束を作り上げるとそれを持っておぼっちゃまは出かけてくると馬車に乗って行ってしまった。
夜になっても帰らないおぼっちゃまを心配しているとマルーンイーグル聖騎士団の1人が訪ねてきた。
なにか事件に巻き込まれたのか恐る恐る聞くとおぼっちゃまはレバートリー家におり、本日は泊っていくとのことだった。
レバートリー家のお嬢様からお手紙が届いた際、お嬢様のお誕生日パーティーの招待状かと尋ねたところ招待されなかったと言っておったのにやはり招待されていたということだろうか。
しかしおぼっちゃまからはレバートリー家のお嬢様のプレゼントを準備するように言われていない。
プレゼントは一体どうしたのだろうか。
私ははっと思い出す。
まさかひまわりの花束だけを渡したわけではないだろう、と。
「夜遅くになっても帰ってこられないので心配いたしました、まさかレバートリー家におりましたとは、しかしなぜあちらでお泊りになられたのですか?」
「あぁシンシーリアが少しな・・・・」
おぼっちゃまの婚約者であるシンシーリア・レバートリーお嬢様。
赤い髪とエメラルドの瞳を持つ彼女はとても美しく女神のようであるが、貴族ゆえか高慢でわがままなところがある。
おぼっちゃまが5歳になるころ、いきなり公爵様が婚約者が決まったといいレバートリー伯爵のご令嬢を紹介された。
おぼっちゃまは特になにも思うことがなくその婚約を受け入れて今になるがレバートリー伯爵家のご令嬢に好意を持ったことも興味も持つこともなくご令嬢がどんなに距離を縮めようと手を伸ばしても二人の仲が縮まることがなかった。
休暇になるとレバートリー家のご令嬢はたびたびアルファランス家に足を運びおぼっちゃまを呼ぶがおぼっちゃまは関心もなく自室に閉じこもったまま出てこない。
私がそのことを告げる度にレバートリー家のご令嬢は顔を真っ赤にし、喚き散らす。時にはお茶をいれたコップも割る始末である。
公爵様もそんなお二人の婚約を破棄すればよいのに見てみないふりをしているのか二人の行動をただ見ているだけだった。
「そうだ、来週シンシーリアが我が家にくるから準備をしてくれ。」
おぼっちゃまの口から思いがけないことを聞き、私は聞き返す。
「し、シンシーリアお嬢様がこちらに来るのですか?」
「あぁ」
「なんのご用件で?」
「特にない、私が招待しただけだ。」
一体二人に何が起きたのだろうか、レバートリー家のご令嬢が家に来ても一度も顔すら見せなかったおぼっちゃまが自ら家に招待したというのだ。
「それと、彼女にお茶を入れるときは紅茶をだしてくれ。」
お坊ちゃまは紅茶よりコーヒーを好んで飲んでいる。理由はただ眠気覚ましのためだ。
「彼女はコーヒーが嫌いらしいからな」
そういうお坊ちゃまの顔は少し微笑んでいらした。
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「ようこそおいてくださいました、シンシーリアご令嬢。」
ここの執事であろう老人の男性が丁寧に私を出迎えてくる。
「お早い到着でしたね。」
「あ、そうですか。すみません、それじゃあ私少し馬車の中で待っときましょうか?
それか一度家に帰って夕方ごろくるとか・・・」
早いと言われたがそちらこそ人が寝ている時間帯から我が家に馬車をよこしてきたではないか。
そのためにティナにたたき起こされて急いで準備してきたのだ。
「いえ、そのようなことは、失礼いたしました。
カイニスおぼっちゃまはまだ仕事が終わっておらずお待たせしてしまいます。」
「そうなんですね、全然大丈夫です。もしお仕事が終わらなそうなら本日は帰りますので言っていただけますと助かります。」
帰らせてくれるはずもなく私は応接室に案内される。
その間にすれ違ったメイドたちから腫れ物を見るような視線をいただいたので肩身が狭かった。
きっとシンシーリアがこの家でなにかやらかしたのだろう。
やっと応接室に着き一息付けたがすぐさま執事が紅茶を持ってきて戻ってくる。
「どうぞ」
「ありがとうございます。」
氷の入った紅茶を一口飲み、渇いた喉をひとまず潤してくれる。
すると執事がずっとこちらを見ていることに気づく。
「・・・・あの、なにか?」
「いえ、シンシーリアご令嬢はコーヒーが苦手なのですね。そうとも知らずいつもコーヒーを出してしまい申し訳ありません。」
シンシーリアがコーヒーを嫌いだったかは知らない、それは私の話だがなぜ知っているのだろう。
シンシーリアが出されたコーヒーを一口も飲んでなかったからだろうか、それで紅茶には口をつけたからコーヒーが苦手という風に認識したのだろうか。
「いえ、お気になさらずに」
余計なことをいうと墓穴を掘りそうなため簡単に済ます。
「それでは私はこれで。なにかありましたらお呼びください。」
「はい、ありがとうございます。」
執事が扉の奥に行き、私はソファにもたれかかる。
あの執事からは品定めされているようで生きた心地がしなかった。
それにすれ違ったメイドたちの様子も気になる。
私は一緒に来ていたティナに声をかける。
「ねぇティナ、私ここの人たちに嫌われている気がする」
「失礼な方達ですよね、そもそもカイニス・アルファランス様がお嬢様に失礼な態度を取っていたのにそれを棚にあげてお嬢様だけを悪者のようにして・・・」
シンシーリアもなにかよくないことをしてしまったのだと理解し、私はため息がでる。
カイニスが来るまではこの部屋から動かないでおとなしくしていよう。
それから暫くして紅茶に入っていた氷が全て溶け、やっと薄くなった紅茶を飲み干しなにもすることなく応接室でカイニスを待つ。
疲れるだろうからティナにソファに座るよう言ったが丁重に断られた。ずっと後ろに立たれのは少し迷惑なのだが仕方ない。
眠くなってきてウトウトし始めてきたところで扉がノックされる。
「すまない、待ったか?」
仕事が一区切りついたのかカイニスがやっと姿を現した。
「いえ、大丈夫ですよ、お仕事は平気なのですか?」
「あぁ、今日のところはもうない。一緒に昼食をとらないか?その後に我が家を案内する。」
私とカイニスは応接室をでてダイニングルームに向かう。
すでに食卓に昼食の準備がされており、私とカイニスは向き合って席に座る。
公爵家の料理はどれも美味しく食べることをやめられないほどだ。
「とてもおいしいですね、公爵家様はいつもこんな素敵な料理を召し上がれているのですね」
もちろんレバートリー家の料理人も一流だからご飯は美味しい。
「それはよかった。これから食べていくことになるのだから合わなければ別の料理人を手配する予定だった。」
「・・・・?」
とりあえずここの料理人が解雇されずに済んでよかった。
十分にご飯を食べ終えると私はカイニスに案内されて屋敷を見て回ることにした。
「ここが私の部屋だ」
(え、カイニスの部屋!?)
ゲームの中では一度も出たことがないアルファランス家のお屋敷にこれただけでもファンとしては最高だったがまさかカイニスの部屋にも入れるとは。
しかし自分のテリトリーがしっかりありそうなカイニスが自分の部屋を見させてくれるとはどういう心境の変わりなのだろうか。
中はイメージしていた通り必要最低限のものしか置いていなく、白とブラウンで統一されていた。
部屋の真ん中に業務をするために大きな机が牛耳っておりその上に大量の書類と本が置かれていたがしっかり整理されている。
「しっかり整理整頓がされておりますね。カイニス様らしいお部屋ですね」
「シンシーリアのお部屋はどのような感じなのだ?」
カイニスは我が家に泊まった際、私の部屋には入らなかったようだ。
「そうですね、服とかアクセサリーがいっぱいありますね。それに全体的に濃い青で統一されてます。お部屋のベッドがとてもふかふかで毎日寝るのが幸せで日差しがよく入り・・・カイニス様?」
カイニスはなぜか口元を抑えて私を見つめてくる。気分でも悪いのだろうか。
「いや、なんでもない。屋敷は一通り回ったし少し外を歩かないか?庭を見せたいのだ。」
日差しが強いので私はティナから日傘をもらいそれを差してカイニスと共に庭に向かう。
レバートリー家ほどではないが沢山のお花が綺麗に咲いている。
花のいい香りが風にのって私の鼻腔をくすぐる。
「とてもいい香り、あ、もしかしてこれ、私にくれたひまわりですか?」
「あぁ、」
ひまわりは今が時期なのかすべて元気よく咲いており、その何本かは花束にしたためか切り取られている後を見つける。
「元気に咲いていますね!私もカイニス様からもらったひまわりも花瓶に入れ替えてまだ元気に咲いていますよ!」
「気に入ってくれてよかった。庭で少しお茶をしないか?最近人気の紅茶を仕入れたのだ。」
庭には専用のテラスがあった。
大きな屋根の下にテーブルとイスが置いてある。
「ここはお母様のお気に入りの場所だったんだ。」
カイニスのお母様はすでに亡くなっていることはゲームの中で知っていた。
カイニスが幼いころカイニスのせいで事故にあい、そのせいで父親である公爵と仲が良くないと言っていた。
主人公はそんなカイニスに自分を責めないで、お母様はカイニスが生きていることを嬉しく思っているというと二人にいい雰囲気が流れるようになっていたが今考えると安いシナリオである。
知り合って間もない他人が勝手に人の重い思い出を語ろうとするな。いや、まぁそれで本人がいいのであれば勝手にしろだがなぜカイニスはあんなに周りと距離を置いていたのにそんなことで心がほだされるのか、やはり主人公補正か。
「シンシーリア?」
「え?はい?」
「ここは気に入らないか?」
私が黙り込んでいたのがこのテラスが気にいらないからだと思われたらしい。
カイニスはお屋敷に戻ってお茶にしようと言い出したので私は慌ててそれを否定する。
私とカイニスはテラスに座ると屋根が日陰を作り涼しい風が肌に当たる。
そこからメイドが氷の入った冷たい紅茶と軽いデザートを用意してくれる。
さっぱりとしたミントの香りがし夏にうってつけの飲みやすい紅茶であった。
今日はドレスを着ているため暑かったため一気にそれを飲み干してしまうとメイドが新しく淹れてくれる。
「美味しいか?」
「はい、ミントのおかげで夏でも飲みやすいですね、あれ、カイニス様も紅茶ですか?」
いつもカイニスはコーヒーを飲んでいるイメージがあったた紅茶は嫌いなのかと思っていた。
「もうコーヒーは飲まないことにした。」
「なぜですか?」
「あなたがコーヒーを嫌いと言ったからな。」
まさかカイニスが私の言ったことを覚えているとは。
主人公以外に他人に興味を持ち始めたことはいいことだ、うんうん、もっと成長しろよ、少年。




