私のために戦わないで!
レバートリー家は屋敷よりも外にある稽古場のほうが面積が広い。
聞くと昔はそんなものはなくお父様の代で稽古場を新たに作ったということらしい。
それはきっとお父様がマルーンイーグル聖騎士団の団長でその部下たちがお父様から教えをならいに来たりで使うからだろう。
本日もお日柄がよく、セミの声がうるさい中、それに負けじとお父様がうるさい。
「いいか!俺から一本でも取ってみせろ!そしたら俺が駆けつけるまでの間シンシアを守れる権利を与えよう!」
そんな権利誰がいるのだろうか、それにそれだとお父様がいいところをすべて搔っ攫っているだけではないか、なんと大人げない。
カイニスもお父様も動きやすいようにブレザーを脱ぎ、シャツの腕の部分をまくる。
お父様のブレザーはお母様が預かり、カイニスのブレザーは私に持ってもらおうとカイニスが近づこうとしてきたがお父様がブロックした。
仕方なく自分のブレザーは簡単に畳んで地面に置いたがその際、私のあげたブローチが汚れないようにと一番上になるように畳んである。
私とお母様とペペローメはパラソルが付いているテーブルで日焼けしないように椅子に座らされた。
聖騎士団はともかく、リリィとポーテルドも私たちの隣に立って見物をしている。
カイニスとお父様は練習用の長剣を手にもつ。
もちろん刃は付いていないため大きなケガを負うことは少ないだろう。だが運が悪ければ骨が折れたりするかもしれないが。
「俺は今回魔法を使わないがお前は使っていいぞ。そうしないと勝負にならないからな。」
カイニスの魔力は7と聞いている。今でさえ魔力が7あるのはすごいことだが彼はまだ成長途中なので今後も魔力が上がる可能性は十分にある。
そんなカイニスとでさえ魔法を使うと圧勝できるという騎士団のトップのお父様の魔力はいくつくらいなのだろうか。
「お母様、お父様の魔力はいくつですか?」
「あら、シンシアちゃん、忘れちゃったの?いくらカイニス様の事しか興味ないからってお父様の事も覚えてなくちゃあの人悲しむわよ。」
「アハハ・・・気を付けます。」
「あの人の魔力は10ですよ、現在この国では5人しかいないレベル10の火魔法所有者の1人よ。」
この世界では魔法が使えるがもちろんすべての人間が使えるわけではない。
魔力をうまく開花出来ず魔法が使えない人間は人口の半分ほどだ。
その中で魔法が使える者たちは魔力を1から10順でレベル付けされる。
もちろん1から4までの魔力持ちが多く、大きい数字になるほど数は少なくなる。
魔力トップである10となるとそれぞれの属性で10人もいない。
魔力10の持ち主で一番人数の多い属性は風の魔力の9人であり、主人公が所有している光の魔力は0人だ。
しかし光の魔力の持ち主自体そもそもの人数が少なく、一番重宝されている。
ちなみにゲームの中での主人公の魔力は7であったが主人公補正で将来は10になるかもしれない。
「さぁかかってこい!」
お父様が剣をあげ、カイニスを挑発する。
カイニスは走り出しお父様に剣を振るう。
剣が重なり合うがお父様はそれを片手で余裕で防ぐ。
「はっ、魔法も使わないとは、それで俺に勝てると思ったか!」
お父様はカイニスを弾き飛ばし、今後はお父様から攻撃を仕掛ける。
カイニスはギリギリ剣で防げることが出来たが、足に力をつけれていなかったため軽く飛ばされ地面に膝をつける。
「俺の勝ちだな」
お父様はその隙を見逃さず、カイニスを見下ろすようにカイニスの首に剣をかざす。
「やっぱ団長の圧勝だな。」
「俺たちでさえ誰も団長に敵わないってのに無理な話だよ。」
カイニスも学生の中ではトップレベルで強いがやはりこの国を守る聖騎士団のトップのお父様の前では手も足も出ない様子だ。
しかしカイニスは立ち上がるとまた剣を構える。
「一回勝負だなんておっしゃってませんよね。」
「ほう」
お父様もカイニスの根性が少し気に入ったのかにやりと笑う。
2人は再び剣を構え今度もカイニスから攻撃を仕掛ける。
今度はカイニスは初めから魔法を使い鋭くとがった水がお父様に向かって飛んでいく。
そのスピードは速く、とがってもいるため当たったら余裕で体を貫通する勢いである。
「やっと本気をだしたな!しかしこの程度の魔法が俺に通じると思うか!!」
お父様はすべての脅威のある水攻撃をすべてよけ、懐に忍び込んできていたカイニスをとらえ、思いっきりお腹をける。
カイニスは一瞬苦しそうに顔を歪ませ、迫りくるお父様を水の盾で防ごうとするがあっけなくその盾はお父様の強い一振りでけえ去りそのままカイニスにあたり大きく吹っ飛んでいく。
2度目もお父様の圧勝であった。
しかしカイニスは諦めることなく立ち上がりまた挑んだ。
「・・・・大丈夫ですの?」
我慢できなくなったのかペペローメが心配そうにつぶやく。
あれからカイニスは何度もお父様に負け、何度も勝負を挑んでいた。
カイニスの服はかなり汚れており、大量に汗を流し体のいたるところにはかすり傷が出来ている。
しかしそこはやはりお父様がすごいのか、すんでのところで力を抑えみねうち程度にしている。
「まぁ大きなケガはさせてないのですから大丈夫じゃないですか?」
レバートリー家の貴族爵位として大丈夫かという意味で聞いているのであれば大丈夫じゃないかもしれない。
しかしお母様も聖騎士団の方たちも止めるそぶりがないのできっと大丈夫なのだろう。
「こんなの元から無理な勝負なんですよ!止めさせたほうがよろしいのではなくて?」
ペペローメが私に反抗してきたが元より私も勝負をしろなんて頼んでないしカイニスに守られる気もない。あの二人がただ単に勝負をしたいだけでやっているのであって満足したら勝手にやめるんじゃないのだろうか。なぜそんなに心配しているのかが分からない。
すると一人の聖騎士がこちらに話しかけてくる。
「それは野暮ってもんですよ。男は大事なもののために頑張るもんですから。アルファランス家のご子息は今大事なものをかけているのですから」
大事なものというのは公爵家としてのプライドだろうか、しかしこうもぼこぼこにされているカイニスを見れるのはとても貴重だ。
ゲームの中ではカイニスが誰かに負けているシーンなどなかった。
お父様の素敵な剣さばきは見る価値があったので私としてもまだまだ見物をしていたいところであったが他の人たちと比べペペローメが顔を真っ青にしているので私は立ち上がる。
「あら、シンシアちゃんどうしたの?」
立ち上がった私にみんなの視線が集まりお母様が代表して声をかけてくる。
野暮であるが2人の勝負がいつ終わるのか目途が付かないしカイニスがこれ以上のケガをするのもよくないので私はたくさんある練習用の剣を手に取る。
「すこし婚約者のお手伝いをしてきます。」
-----------------------------------------------------------------------------------------
何十回も勝負をしてその度にぼこぼこに倒す。
あちらが勝つことなんてありえないのにそれでもあきらめずにあいつは勝負を挑んでくる。
その理由が俺がこの世で一番大事にしているもののためとわかるため俺も譲れるはずがなくむしろ腹立たしさが増す。
あいつがまた剣をふるってくるが疲れてきたのか始めほどの威力はもうなく、余裕で受け止める。
騎士でもない護身用のためにすこし剣をふるっているだけの男に愛しの娘を守れるはずがない。
昔、愛しの娘にある公爵家の息子の婚約者になりたい、なれなければお父様の事なんか嫌い、一生許さないと言われたため渋々同級生でもあった公爵家の当主に私の愛しの娘とそちらの息子の婚約を持ち掛けた。
俺は深く考えなくていい、少しでも釣り合わないと思っているのなら今すぐに断ってくれと、必死に断ってくれることを願っていたがあいつはそんな俺の気持ち無視し、
「聖騎士団の団長でもある娘のどこに断る理由がある、ぜひ我が息子との婚約を結ぼう。今すぐに。」
とありえないほどのスピードで愛しの娘とあいつの息との婚約は決まった。
愛しの娘を取られたくないと必死に思っている俺をおちょくるようなあいつの顔は今でもよく覚えている。
俺は必死に二人の婚約に反抗したが宰相たるゆえんの賢くちまちまと正論を述べられもう後には引けなかった。
そんな男の息子だ、結婚した後もあれやこれやと反抗できないような小言を言い愛しの娘を困らすに違いない。
愛しの娘を不幸にするのであればすぐにでも婚約など解消してくれる、娘は一生我が家で俺と妻の3人で過ごしていけばいいのだ。
俺は決着をつけるべく目の前のガキに剣を振りかざし終わらせようとしたところに一本の別の剣が俺の剣を防ぐ。
いつの間にかわが愛しの娘が俺たちの勝負の場に乱入し、ぎりぎりのところで俺の剣を防ぎ婚約者であるあいつを守る。
「し、シンシア・・・」
俺が驚き力を緩めたところ見逃さず、娘が剣をはじき切りかかる。
いつの間にこんなに強くなっていたのか、油断していたらこちらがやられてしまうと瞬時に判断した俺は娘の剣を抑えたがもう一本の剣が俺の首筋に当たる。
「こちらの勝ちですね。」
場の空気を壊すように愛しの娘がにっこりと笑い、剣を下す。
すっかり忘れていたカイニスの剣が自分の首筋に当たって勝負はあっさりと終わった。
すると愛しの娘はカイニスの手を取りさっさと屋敷に戻ってしまった。
娘が見ない間に強くなっていたことに驚きはしたがそれより俺じゃなく婚約者であるあいつの見方をしたことにショックをうけ泣きながら愛しの妻の元に向かい慰めてもらった。
いつも読んでいただきありがとうございます。




