誕生日パーティー
カイニスと町で買い物をしてから数日が経った。
私は相も変わらず家から一歩も出ずにマルーンイーグル聖騎士団達と共に稽古をしつつ休憩がてらにお母様と紅茶を飲むという日々を過ごしている。
しかし今日はいつもと違い朝にすこし体を動かした後、汗がついた体を一度流してシンシーリアが持っている服の中でも動きやすそうなワンピースに着替え、ティナに髪の毛などをセットしてもらった。
そうするとあっという間にお昼になり、メイドからお客様がお見えになったと連絡をもらうと私は駆け足でお客様を迎えに向かう。
「みんなお久しぶりです!元気に過ごしていましたか?」
私の前にはリリィとポーテルド、ペペローメの3人が元気そうにこちらに笑顔を向けてくれる。
今日はシンシーリアの誕生日である。夏休みに入りすぐに3人に招待状を送ったところすぐに参加するという返事をもらえた。
「夏休みに入ってから一度も会えてなかったものね、シンシアも元気そうでよかったわ」
「お嬢様なのにこんなに焼けっちゃって・・・・シンシーリアらしいね」
「まだ人が集まってませんわね、私たち早く来すぎてしまいましたか?」
それぞれ声をかけてくれる3人を私は奥に案内する。
「いえ、元より3人しか呼んでおりませんので。」
「どうしてですの!?」
ペペローメが驚きを隠せずいつもの貴族らしくお高く留まっている雰囲気を崩す。
「だって話すことありませんし、仲の良いみんなしか呼びませんでした。」
「仲の良い」という言葉がうれしかったのか、ペペローメは小声で復唱しにやけそうになる顔を必死に隠しながらそれなら仕方ないと納得する。
その中でポーテルドが気になっていたことを聞く。
「3人てことはアルファランス様は今日来ないの?」
「はい。呼んでませんので。」
「ずっと気になってたんだけどシンシーリアとアルファランス様は婚約者同士だよね?
貴族だから政略結婚っておかしくないけどこうゆう大事な場面って呼ぶものじゃない?」
「そうなんですか?まぁ来年には婚約解消するので問題ありません。」
「え?」
「はい?」
ポーテルドとペペローメ2人そろって私に聞き返してくる。
事情を知っているリリィだけが驚きもせずただ軽くため息をついた。
「いらっしゃい、今日はわが愛しの娘、シンシーリアのお誕生日を祝いに来てくれてありがとう。」
「どうぞゆっくりしてらして、美味しいお料理沢山用意しましたの」
広いダイニングルームにはすでにシンシーリアのお父様とお母様がみんなを待っていた。
ちなみにお父様は昨日の夜、干からびた状態で家に帰ってきてお母様に泣きながら愚痴を言ってたが今日の朝にはいつも通りに戻っていた。
お母様はそんなお父様をみて笑いながらあやしていた。
「こちらこそ、今日は招待していただきありがとうございます。」
リリィが両親に丁寧に挨拶を返す。それに続いてポーテルドとペペローメも挨拶をする。
「おぉ!君がリリアン・バルトラか!シンシアからはもちろん、聖騎士団達からも話を聞くよ。君のところの団長にはよくお世話になってるよ。」
「こちらこそシューデン聖騎士団長のお話はよく聞いております。竜殺しの伝説は今も語り継がれています。こうして直接お会いできて光栄です。」
(へぇ、お父様そんなすごい伝説があるんだ、てかこの世界に竜なんているんだ)
ゲームの中でも怪物が出るシーンが何度かあったのでそのような生き物がいるのは知っていたとはまさか竜もいるとは、ゲームの中だけでは知らないことが数多くあるなと気づく。
「立ち話もなんだ、ご飯を食べながらゆっくり話をしようじゃないか」
豪華な食事がテーブルいっぱいに並んである。これらはすべて我が家で働いている料理人たちが昨日から準備してくださり食べきれないほどの数を作ってくださった。
できる限り食べつくしたいと思っているがいくら私でもこの量を食べきれる自信がなかったので今日我が家に来てたマルーンイーグル聖騎士団達を誘い予定より多くの人数でパーティーが開かれることになった。
私たちが席につき食事しようと思っていたところ、一人のメイドが私に話しかけてきた。
「お嬢様、お客様がもう一人いらっしゃいました。」
「え?誰かしら?」
招待した人はすでに全員そろっている。
私が知らないだけで本当はシンシーリアと仲の良い友人がいてその人が訪ねてきたのだろうか。
玄関に向かうとデジャヴ、そこにはカイニスがいた。
夏なので涼しくホワイトグレーのスーツを着て左胸には私が渡したエメラルドのブローチをつけている。
カイニスは私の姿を見つけると少し目線をずらし、遠慮気味に話しかける。
「呼ばれてないがどうしても今日祝いたくて・・・
シンシーリア、誕生日おめでとう。」
そういうと手に持っていた大きなひまわりの花束を私に差出す。
「この前、あなたと庭の花の話をした後、自分の家の庭の花を見た中でこの花が一番きれいに咲いていた。」
大きく花開いたひまわりが何本も重なっており花束は予想以上にズシリと重かった。
「それにあなたの笑った顔にとても似ていたので」
私は自分の耳を疑った。視線を花束からカイニスに向けるといたって真剣にカイニスがこちらを見ている。
主人公にしか心を開かない人間がこんな木っ端恥ずかしいセリフを悪役令嬢でもあるシンシーリアに向けて言ったのだ。
いくら仲のよい婚約者同士のアピールをするからってそこまでしなくてもいいのにと思うのは私だけだろうか。しかも今は私たちの他にいるのは我が家で働いている者のみだ。
まぁしかしカイニスが自分で考えて人にプレゼントを贈ることができるようになったのは私の助言のおかげだろう。一回言っただけで見事にできるとはやはり主人公だからだろう。
「ありがとうございます。きれいなひまわりですね。」
「・・・喜んでくれただろうか?」
カイニスが心配そうに聞いてくる。その姿はまるで褒められ待ちをしている犬のようでとてもかわいらしく見えてしまい私はつい笑ってしまった。
「アハハ、とっても嬉しいです!大事に飾りますね!」
そんな私につられてカイニスは優しく微笑む。
この世界に来て初めてカイニスの笑顔を見れた。主人公といる時でさえ、笑顔をあまり出さなかったのでとてもレアな瞬間である。
生のカイニスの笑顔はきっとすべての女性のハートを鷲掴みにできるだろう。
かくいう私も少しドキッとしてしまい話題を変える。
「えっと、せっかく来たのですからパーティーに一緒にご参加されませんか?ちょうど始まるところでしたので」
「あぁ、喜んで」
カイニスの回答は早く、二人でみんなが待つダイニングルームに向かった。
私が戻ってきたと思ったら大きな花束を抱えていてその隣にカイニスがいると気づくと皆、様々な表情で出迎えた。
「いやぁ、それよりカイニス君、久しぶりだね!今日は来ないとシンシアから聞いてたから驚いたよ!まぁ我が娘の誕生日より大事な用事があるはずがないに決まっているよな!いやでもしかしそれでも大事な用事があるのなら今すぐ戻ったほうがいいんじゃないかな?シンシアの誕生日は君の分も私が盛大に祝っとくから安心していいぞ!」
「いえ、用事はすでに終わったので大丈夫です。」
最初はみんなでたわいもない会話をしつつ食事をしていたが中盤にさしかかるとお父様がカイニスに声をかける。
カイニスが本当に今日大事な用事があったかは知らないが元から招待していなく、私の嘘ということがばれないかひやひやしながらお父様とカイニスの会話を聞く。
しかしお父様の口ぶりからするとカイニスを好んでいる雰囲気がないように思える。
来なかったら文句を言い、来ても文句を言っているようなものだ。
周りの人たちも気づいているのかお父様をたしなめる。
「団長、おやめください。みっともないですよ。」
「そうよ、あなた、忙しい中カイニス様もシンシアちゃんのために来てくださったのだからお礼を言わないと」
「婚約者なのだから来るのは当たり前だ!いいか!私の大事なシンシアを傷つけたら許さないぞ!」
どうしてシンシーリアはカイニスと婚約を結べたのだろうか、親が決めた政略結婚だと思ったがどうみてもお父様は私たちの婚約に賛成していない。
いつかさらっとシンシーリアとカイニスの婚約までの道のりを聞けるタイミングを作らないといけないな。
しかしこの調子であるなら来年する婚約解消は問題なく進められるとは思うがどうにかカイニスに非がない婚約解消にしないとお父様に殺されてしまうかもしれないという別の問題が起きた。
「はい、もちろんどんな時でも守ります。」
来年には婚約を解消をするっていうのにお父様の返事にサラッと嘘で返すカイニス。
あまり下手な嘘をいうと解消をする際にお父様から殺される確率が高くなるのだから出来ればそのような返答は控えてほしい。
お父様はそんなカイニスの言葉に更にむかついたのかギリギリと歯ぎしりをし椅子から立ち上がる。
「はっ!騎士でもないのにどうやってシンシアを守れるっていうんだ!俺と勝負をしろ!俺に勝ったらシンシアを守る権利を与えてやろう!」
婚約者、しかも数少ない公爵家の息子に対して伯爵家である我が家がこんなに盾突いていいものなのだろうか。私のせいで没落する前にお父様のせいで没落させられそうだ。
私とポーテルド、ペペローメはそんな二人の様子に内心ハラハラしていたが他の人たちはまたか、というように聖騎士団の方たちはお父様を押さえつけている。
「わかりました」
そんな中カイニスはお父様の態度には特に気に障ることもなく椅子から立ち上がるとむしろお父様の提案に乗っかった。
どうしてカイニスはこんなにお父様を相手にするのだろうか。公爵家としてのプライドか何かだろうか。
「では早速稽古場に向かうぞ!ついてこい!」
お父様は颯爽とダイニングルームから出ていくとカイニスもその後をついていく。
聖騎士団達も呆れながらぞろぞろと付いていき、お母様も面白いものが見れるとちょこちょこと付いていく。
ポーテルドはこの風景がおかしかったのかけらけらと笑い、ペペローメはどうすればいいのか戸惑っている。
リリィはというと聖騎士団長の戦う姿がみたいのかうずうずしながら私を見てくる。
(え、私はそんなことよりご飯食べたいんだけど)
しかしリリィの視線には敵わず私たちも後を付いていくことにした。
その際に何個か料理を皿にのっけて持ってった。
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