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誤解はその場でとかないと時すでに遅しだよね




私とカイニスは武器屋を出ると近くにあったおしゃれなカフェに入った。


ガラス張りにおいしそうなケーキがいくつも並んであったがじっくり見ることは出来ず、2階の席に案内される。

かわいいデザインの服装を着た店員がメニューを持ってくるがカイニスは見ることなくコーヒーを頼む。

私はじっくりとメニューを見てどのケーキを食べるか悩んだ。


(どれもおいしそうなケーキだったなぁ、やっぱり初めてだし定番のショートケーキがいいかな?

いやでもタルトもおいしそうだったしティラミスもおいしそうだったなぁ、限定の柑橘ゼリーも夏らしくていいし・・・)


メニューが決めらず悶々とメニュー表にかじりついて見ている私の様子にカイニスが気づく。


「悩んでいるのか?」


「え?あぁ、そうなんです、どれもおいしそうで・・・」


「すべて頼めばいい。」


「いえ、食べきれないですし」


「一口ずつ食べて残せばいい。」


「は?」


私としたことがカイニスの前でうっかり素を出してしまった。

すべてにおいて完璧だと思っていたカイニスの口から予想だにしないことを発したと思ったがやはり貴族としては当たり前なのだろうか、高橋 果奈としてはありえないことを言ってきたので思いっきり顔を歪めてしまった。


カイニスは初めて見たであろうシンシーリアのその姿をみて無表情ではあったが少し焦りの様子が見えた。

私は空気を戻すため軽く咳ばらいをし、なかったことにして店員にショートケーキと限定の柑橘ゼリーと紅茶を頼んだ。

ちなみに注文を受けた店員はカイニスに釘付けだったため注文を2度行わなければならなかった。


「こちらコーヒーと紅茶、そしてショートケーキと柑橘ゼリーでございます。」

しばらくして注文をうけた店員ではなく店長であろう男の人が商品を持ってきた。

私は店長にお礼を言うとまずはショートケーキに手を付けた。

生クリームは甘すぎずくどくなく、中に入っている苺も少し酸味があり生クリームとよくマッチしている。

黙々とケーキを食べていたところにコーヒーを飲んでいたカイニスから話しかけれらる。


「先ほどの聖騎士とは仲が良いのか?」


「サンドリックのことでしょうか?仲がいいというかこの夏休みに私に稽古をつけてくださっています。」


「2人でか?」


「いえ、他の聖騎士からも教えてもらってます。お父様の部下の方たちなので我が家の護衛をしてくださっているのです。」


「稽古中は聖騎士しかいないのか?」


「いえ、お母様がよく見に来ていますよ。休憩する際はお母様のいるところでお茶をみんなで飲みますし。」


「そうか。」


そう言うとカイニスはコーヒーにまた口をつける。

今日はいつも、というほど一緒にいたことはないがよく話しかけてくる。


(武器屋の時もなぜか一緒に見て回ったしどういうことなんだろ・・・

あ、周りの目が気になるのね!私たちが仲が悪いと思われないようにカイニスも頑張っているのね。)


この店にも年がちかい貴族たちが何人かいる。周りを見るとこちらをちらちらと見て興味を持っているものがいた。

今日のカイニスの行動がやっと理解した私はカイニスの頑張りを無駄にしないように周りに仲の良い印象を持たせるため話を作る。


「カイニス様はこの夏休み何してましたか?」


「父の仕事を手伝っていた。」


「アルファランス公爵はこの国の宰相ですもんね、そのお仕事のお手伝いなんてすごいですね」


アルファランス家は代々続くこの国の宰相を担っている。

そのため将来カイニスもその座に就くことは明白である。

聡明なカイニスが宰相に就くのであればこの国の将来はこれからも安泰だろう。


「シンシーリアはなにをしていた?」


「私ですか?私はずっと聖騎士の方達に稽古をつけてもらってました。夏なので肌が結構焼けましたね。」


私は健康的な色になった腕を見せるようにカイニスの前に出す。

シンシーリアの肌は色白すぎてずっと不健康に見えていた。採血なんてしようものならきっと血管をみつけるのに苦労するだろう。

焼けにくい肌ではあったがそれでも毎日暑い中外にでて体を動かしているので筋肉もついて健康的な体つきになってきた。


「最近のあなたは人が変わったようだ。」


「え?」


正解を言われドキッとし手に持っていたフォークを落としそうになる。


「以前なら稽古をつけてもらったり聖騎士団に入りたいなどと言うような人ではなかった。今まで親しかった貴族の友人と関わることもせずリリアン・バルトラと行動を共にし、学校指定の制服をきたり食堂を使っていたりしている。ここ最近ではパーティーにも顔を出していないな」


私はシンシーリア・レバートリーとしての記憶を一つも持っていない。

彼女がこれまでどのような行動をしてきたか、どのような交友関係を持ってきていたかも全然知らない。

それでもここにきて彼女のことを少なからず分かることはある。


「親しい友人なんていませんでしたよ。私の初めての友達はリリィです。今一緒にいる人たちと過ごす時間が楽しいので前関わっていた方々と今更関わる時間なんてありません。

パーティーは昔から散々顔を出して疲れたので出席してないだけです。」


リリィと出会う前、シンシーリア・レバートリーに転生して一人で行動していた頃、私に親しげに声をかけてくる人などいなかったし私の変わった様子に気が付いた人もいない。

たまに話しかけてくる人といえば遠回しに嫌味を言ってくる貴族だけだった。


シンシーリアは特に誰かと仲良くなることもせず、むしろ周りから距離を置いて行動をしていたらしい。

リリィから平民と貴族として境界線を作っていたと聞いてはいたがそこだけではなかったのだ。

しかしそのおかげで私が特に昔の関係で困ることもなく新しい関係で日々楽しく過ごせている。


「というかカイニス様、私のことなのによくそこまでご存知ですね。」


ゲームではカイニスは婚約者であるシンシーリアに興味を持っていなかった。

ゲームの中でも彼女のことを全く知らないし興味がないと言っていた。


「・・・・婚約者だからな。」


私の勘違いなのか、全く知らないとは言ってもこの程度の情報ぐらいは最底辺として気づくということだろう。

私は納得したように首を何度かたてに振る。


「そうですか、ちなみに私は食べ残しとコーヒーが好きではありません。」


コーヒーを持っていたカイニスの腕が止まる。


「・・・・そうか、覚えておく」


そうしてる間にショートケーキは全て私の胃の中に収まったので紅茶で少し口直しをして柑橘ゼリーを食べ始める。

こちらは甘さが控えめで柑橘の味を引き立たせており夏にうってつけだった。


顔をほころばせながら食べる私を見ながらカイニスは残りのコーヒーを飲み切った。




「お嬢様、商品が出来上がったとのことです。」


あれから食べ足りずケーキを2つ追加して食べ終わったころに侍女のティナから声がかかる。


「そう、教えてくれてありがとう。あ、ティナ、ここのお店のケーキをお持ち帰りできないか聞いてくれる?」


かしこまりましたとティナは速やかに店員に聞きに行った。


「まだ食べるのか?」


「いえ、聖騎士団と我が家で働いてくれている者たちに買って帰ろうかと。ここのケーキ美味しかったので。」


前に聖騎士団達に稽古をつけてもらっている休憩中のデザートをほぼ私が食べてしまい呆れられてしまったのでいつもお世話をしてくれている人たちにもお礼もかねて買って帰ろうと思った。

ティナからお持ち帰り可能と聞けたので人数分買っといてほしいと告げて私は先にオーダーしていた宝石店に向かう。


宝石店にはカイニスには待ってもらい私一人でオーダーしていた宝石を確認すると依頼通り完璧に仕上がっていた。

お店の方々にお辞儀をしてお礼をすると驚かれ頭をあげてくださいと言われたが気にすることなくお礼を言ってカイニスと一緒に店を出る。


店の前にはすでに馬車が準備されており、私たち2人は馬車にのり家路に向かう。

すでに時間は結構立っており、外は夕暮れになっている。

帰りは私もカイニスも特に話すことなく、私は窓の外の景色を見ながら馬車に揺られた。



やっと我が家につき、カイニスは私を家の前まで送ってくれた。


「今日はありがとうございました。」


「あぁ。」


「・・・少し庭を歩きませんか?」


カイニスに渡したいものがあったのだが人の目が気になったため誰もいないところで話ができないか提案するとカイニスは嫌な顔せず付いてきてくれた。


涼しい風が吹きどこからか虫の音が聞こえる。

日が落ちてきているがまだまだ暑く、背中からは汗が流れる。


「ここの庭は花が沢山咲いているな。」


庭師が毎日大事に世話をしてくれているため枯れることなく沢山の赤い花が元気よくそよそよと風に揺られている。


「キレイですよね、とっても好きなのですが赤い花だけなのが残念です。」


「なぜだ?」


「この世にはきれいな他の色の花もたくさんありますから。カイニス様のお家はどうですか?」


「ここの家ほどではないが様々な花が植えられている。」


「それはとても素敵ですね。」


ゲームではカイニスの家は出てこなかったので想像しかできないがここよりもずっと立派なお屋敷だろう。

カイニスを攻略対象にしていた私としてはアルファランス家のお屋敷がどんなものか興味があったが行くことはないので少し残念である。


「今日はありがとうございました。これ、受け取ってください。」


「・・・これはあなたのプレゼントではないのか。」


宝石店で私は自分の瞳と同じ色のエメラルドを男性用のブローチにしてほしいとお店の人に頼んだ。

大きなエメラルドの周りをシルバーがきめ細かに細工されている。

私はそのブローチを手に取りカイニスの左胸につける。


「カイニス様、プレゼントは確かに本人が欲しいものをあげれば失敗はないと思いますが、本人の事を考えながら探してくれるプレゼントも受け取る側はとても嬉しいのですよ。

もしプレゼントが自分の欲しいものではなくても探している間に自分のことを考えてくれてくれたと思うだけで気持ちがいっぱいになります。」


ゲームの中のカイニスも自ら考え主人公にプレゼントをあげることはなく、主人公が欲しそうにしていたのを気づきそれをプレゼントにしていた。

結局主人公はそれで喜びはするが、自分を思って行動してくれるならもっと喜ぶだろう。

カイニスの事だ、欲しいものを聞かなくても主人公が喜びそうなものを選べるだろう。


この世界の主人公ともっと幸せになってほしく私はすこし助言をした。


「やはりカイニス様に似合いますね。宝石は私の目と同じ色にしました。赤だとすこしきつく感じると思いましたので」


仲のよい婚約者のアピールをするため自分の瞳の色と同じものを探した。


「これだとプレゼントを渡したことにならないだろう。」


「もらいましたよ。カイニス様に自分の精通したものを渡したい、という願いは叶いましたので。

逆にそのブローチをもらってくれないと私のプレゼントはもらえていません。つけなくてもいいので捨てないでくださいね」


「捨てるはずがない。・・・大事にする。」


まぁ一年間だけ大事にしてくれていれば構わない。

主人公が現れ恋に落ちたら邪魔になるだろうが処分してもらうか私に返却してくれないだろうか、逃亡しなくてはならない場合の資金にしたい。


しかしカイニスから的外れな言葉が出る。


「あなたはそれほど私を想ってくれていたのだな」




「・・・・・・・ん?」


カイニスは大事そうにブローチに手をそえている。

彼の顔がすこし赤いのは暑さのせいか夕日のせいだろう。


私はカイニスの言葉を特に追及することなくそのあとすぐに屋敷に戻り、別れを告げカイニスが馬車に乗り去っていくのを見送った。



本来ならあそこでちゃんと聞きなおしたほうがよかったのだろう、

しかし仕方なかったのだ、私だって現実から目をそらしたい時もあるのだ。









いつも読んでいただきありがとうございます。

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