↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/28

エピローグ -今日も明日も明後日も-

みなさま。

無名で何も実績がない、私が作った物語を読もうと思ってくださったこと、とても感謝しております。

誰の目にもとまらない作品だったかもしれないのに、評価やブックマークをしてくださって、誠にありがとうございます!

本当に読んでくれている人がいるんだ、と実感することができました!

本編はこれで完結ですが、その後の話を考えているため、連載中の表記のままにしておきます。


ふわり、と穏やかに風が吹く。

ゆらり、と微かに水面が揺れる。


あたたかな日の光が降り注ぐ。


今日もまた、新たな1日がはじまる。




「意外だなあ。」


しみじみとキーが呟く。

言いたいことはわかる。

察しはつく。


しかし。

なんとなく悔しいので、頷いてはやらない。


「聖職者たるもの、常に己を律することを心がけなければ。」


年齢や経験が違うのだ。

いつまでも成長しないという情けない姿を後輩には見せたくないではないか。


「いや…。

セイの気質からして、もっと悲観しているのかと。

表面上はともかく、内面は沼にでも沈んでいるかと思っていたのに。」


いくら気心の知れた仲とはいえ、もう少しオブラートに包むことはできないものか。

確かに、自分でも驚いてはいるが。



ユカリさまが、元の世界へ戻ってしまった。

それが彼女の意志ならば、他人がとやかく言うことではない。

今後どう生きていくべきか、きちんと考えた末の答えだろう。


しかし。

それでも、寂しくないと言ったら嘘になる。


それに。

遠い場所へ転居して会えなくなる、というのとは次元が違う。

世界が違うのだ。


もはや、今生で再会することはできないかもしれない。

連絡のとりようもない。


単に遠い場所というだけなら。

それなら、互いに会おうと努力すれば会うことはできる。

手紙を送って近況を知ることもできるだろう。


だが、世界が違うとなれば無理だ。


つまり、私たちにとっては一生の別れに等しい。

帰ってしまったと聞いたときは、とても悲しくて寂しかった。


そして、常ならば。

しばらくは、そうした寂しさを心に抱えたままなのだ。


しかし。

今の自分はどうだろう?

寂しかったのは一瞬。


すぐに、また会えるから大丈夫だと思うことができた。

次に会ったら、何を話そうかと考えていたくらいだ。

再会できることを、信じて疑っていない。


なんてことだろう。


「まさか…私がキーのように、何の根拠もない自信を持つようになるとは…。」


「…セイ。もう少しオブラートに包んだ言い方はできないのか?」


確かに俺はそういうところがあるが、とキーが唇をへの字に曲げる。



ユカリさま。

私もキーも。

あなたに再会できる日を楽しみにしています。


いつかきっと。

また会えると信じています。


ですから、どうか。

あなたが、信じる道を歩んでいけますように。


自信をもって、前へと進んでいけますように。



♢♢♢



服の上から感触を確かめる。

大丈夫だ。


「寂しいなあ。ああ、寂しいなあ。会いたいなあ。」


不思議なことに、この件に関しては確証がある。


しかしながら。

先ほどから聞こえる雑音は、非常にうっとおしい。


「ユカリー!ユカリちゃーん!!!」


「うっせえ、クソジジイ!仕事しろ!!」


冒険者ギルド本部。

盗賊集団の一件を軍に引き継ぎ、イーロ支部も引き払って、久々に本部へ戻ってきた。


つかの間の休息。

の、はずだった。

残念ながら、どこぞのクソジジイが小蝿のごとく側についてまわるせいで、まったく休めている気がしない。


「アッカー。いい加減、俺に隠すのはやめなさい。

お前が何かを後生大事に持ち歩いてんのは知ってんだ。

ユカリがらみだろう?ほれ、出しなさい。」


にまにまと、近年稀に見る良い笑顔で手を出してくる。


こめかみに青筋が立っているだろうことが、自分でもわかった。


「てめえには関係ねえだろうが!!!」


誰でもいいから、このクソジジイをどこかにやってくれないものだろか…?



あのとき。

神の泉に浄化の光が満ちたとき。


ユカリが泉に沈むのを見た。

咄嗟に引き上げようと手を伸ばしたが、指先が微かに触れた瞬間、目の前から消えてしまった。


溺れて沈んだわけではない。

元の世界に戻ったのだ。


はっきりと、そうだとわかった。



そして。

手の中には、ひとつ。

浄化の光が残っていた。


天へと昇り、地上に残らぬはずのそれ。

まるで、くもりのない水晶のような。



また、会える。

この水晶が、導いてくれる。


なぜか、確信していた。

ユカリは、元の世界で使命を果たすだろう。


そして。

いつかは、きっと。


こちらの世界に戻ってくる。

この世界にも、ユカリの使命があるはずだ。


「10年くらいしたら、ひょっこり戻ってくるかもしれないな…。」



♢♢♢



きらりと、きらめく。

浄化の光の結晶。

それは今、私の胸元を飾っている。


あの日。

突然、私は日本へと帰ってきた。


トリップ直前と同じく、あまり人気のない路地。

そして夜の闇。

一瞬、長い夢だったのかと思ったのだが。

すぐに、そんなわけがないと思い直した。


なぜなら。

差し伸べたままの手が、何かを握っていたから。


私の手のひらの中には、ここ最近よく目にした浄化の光が残っていた。

きらきらと光をはじく水晶。


こんなもの、日本にいた頃の私は持っていなかった。

先ほどまで、異世界にいた。

間違いない。



あれから。

私は泉で決意したように、やって貰って当たり前、与えられて当たり前だと思わないように努力した。


変わりたかった。

だから、些細なことでも感謝の心を忘れないように心がけた。


なかなか難しくて。

つい以前と同じように当然のこととして、受けとってしまうこともあったが。


それでも。

日々反省をしながら、少しずつ。


少しでも、前へ。




そして、いま。

色々と悩みはしたが。

私は保育士の資格を取得すべく勉強中である。


子どもたちに精一杯の愛情を注ぎたい。

与えられる側から、与える側へ。


みんな、みんな、大切な子だよって伝えたい。

自分には価値がない、なんて思って欲しくない。


たとえ。

親に産まなければ良かった、なんて言われても。

お前は何をしてもダメだ、なんて否定されても。


友達から嫌われても。

孤独感に苛まれても。


どんな苦境に立たされても。

自分には何もないと空虚な気持ちになっても。


かけがえのない、生命なのだ。


生きる意味がない人間なんていない、ということを伝えていきたい。


これは、私の役目だと思っている。

あちらの世界で、使命というものを教えてもらった私にしかできないことだ。


そう思っている。

そのために、いま私は生きているのだ。



闇に飲まれそうになったときは、水晶に触れて心を落ち着ける。

問題を、他人事にしないように。

現実から、目を逸らさないように。

まっすぐに進んでいけるように。


それに。

この水晶は、きっと異世界に繋がっている。

おそらく、また向こうへ行ける気がする。


日本で生きることの意味を見出した。

あとは、それに向かって進むだけ。


そうすれば。

また、あちらに行ける気がする。

セイとキーにもまた会えると思う。

そして、アッカーにも。


再会できたら、彼らにお礼をしよう。

たくさん、助けてもらったから。

今度は、私が助ける番だ。


だから。

きっと、いつの日にか。



♢♢♢



神さま。

少しは、顔をあげることができましたか。


私は、やりたい事を見つけることができたと思います。

少なくとも、無為に過ごしていた日々は終わりを告げました。


これが、いわゆる使命ではなくても。

私は、人に何かを与えることができる人間でありたい。


一歩ずつ、前へ進んでいきたい。


私は、生きています。

今日も、明日も、明後日も。

こうして、前へと進めるよう、生きていきたい。


いつか。

きっと。

成長した私を見てください。


そのときは。

また泉に報告をしに行きます。


そうですね。

前と同じように、アッカーも誘ってみます。


神さま。

今日も私は、生きています。

未来へと、歩んでいます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。