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その後 -ユカリの日本奮闘記-

※おまけ編

ユカリが日本に帰ったあとの話。



こそっと耳打ち。

そっと入室してきた男性が、ちらりと私を見つつ、ぽそぽそと話しはじめる。

おや、と目を見開く、耳打ちされた壮年の男性。

面接官。


あー、これはダメだ。


もはや、この空気にも慣れてきた。

伊達に何社も面接を受けてはいない。


こっそりと、ため息をつく。

頭の中で、次に志願する会社の候補をあげていく。


と、いうか。

私、いったい何をやっているんだろう…。



♢♢♢



異世界から戻ってきた私に待ち受けていた現実は、厳しかった。

せっかく、あちらで決意したのに。

困難、という壁が行く手を阻む。


セイが、何かの折に話していたことがある。


人が成長する過程においては、試練が立ちはだかるものだ、と。

大きいものから、小さいものまで千差万別。


乗り越えることが理想的だが、本当は失敗してもいいらしい。

はじめから諦めない限りは。


大事なことは、試練に立ち向かうこと。

乗り越えるために、試行錯誤する。

ああでもないこうでもない、と動いてみる。

人に相談してみる、協力を仰ぐ。

たとえ失敗しても、そこには得られるものが必ずあるのだそうだ。


辛い試練ほど、神からの特別な贈り物。


セイはそう言っていた。

ものすごい考え方である。


だから。

異世界のことを知った私としては。

少々の困難になら、負けないぞ、と意気込んでいたわけだ。


しかし。

本当に現実は厳しかった…。


なぜなら。

まず、帰ってきたら1年経っていた。

向こうにいたのは、せいぜい1ヶ月くらいなはずなのに!

ナンデ??


そして。

当然といえば当然ながら。

会社は解雇(クビ)。

いくら縁故採用でも、そりゃ1年も経ってたら、そうなるよね!!


さらに。

マンションも、引き払われていた。


日本に帰ってきた直後、私は何も持っていなかった。

手ぶらである。

自宅の鍵は、当然もっていない。

住んでいたマンションには、隣に大家さんの一軒家がある。

だから、大家さんを訪ねて、部屋を開けてくれと言いたかったわけだ。


でもな?

1年、行方不明だったのだ。

両親がすでに解約してました!!

大家さんの、幽霊でも見たかのような、ぽかん、とした顔は忘れられない!!


おわかり、いただけただろうか?

この時点で、私は職なしの宿なし、である。


しかし。

本当の試練は、ここからだった。


大家さんは、すぐ警察に連絡をいれた。

なぜか?

私が、捜索願を出されている失踪人だから。

それも、事件に巻き込まれた可能性があると思われていた。

むしろ、もう死んでるんだろうなって大家さんは思っていた。

だから、幽霊を見たような表情(かお)したんですね!



ここで、私が異世界に行った直後の、日本の話をしよう。


ある日、社員が無断欠勤した。

電話をしても、メールを入れても、返事がない。

私は縁故採用である。

だから、上司が会社に報告したところで、心配した社長が実家の両親に連絡を入れた。


実家の両親が、私に電話しても、梨のつぶて。

両親には、合鍵を渡してある。

ところが、自宅マンションにも私はいない。


もしや、事故にでも…?

両親は、その日ソワソワと落ち着かなかったという。


そして。

翌日も無断欠勤。

母はずっとマンションにいたが、当然、私が帰ってくるはずがない。


3日目。

この日も無断欠勤。

とうとう、両親は捜索願を出す。

父と母は、ずっと交代でマンションにいたので、私が帰宅していないことはわかっていた。


母は手がかりがないものか、室内の捜索をしたらしい。

そこで、預金通帳や印鑑、印鑑登録証、保険証書、パスポートなどなど…。

貴重品入れを見つけたのだ。

ここで、母は思った。

絶対に、自ら失踪したわけではない、と。


だが、この時点では、ただの一般家出人だった。

それが一変したのは、カバンが見つかったからである。

私の、通勤用のバッグ。


思い返してみると。

たしかに、異世界の神の泉に落ちたとき、手に持っていたはずのバッグはなかった。

道路が陥没し、かなり落下したはずなので、落下中に手放してしまったものだとばかり…。

まさか、日本にそのまま残っていたとは。


そのバッグだが。

なぜ、見つかるのが遅かったのか?

それは、落し物扱いされていたからである。


落し物?!

財布にスマホ、見るからに自宅の鍵らしきものが入っているのに、ただの落し物?!


そう思うよね。

私も、そう思う。

でも、これは事実だ。


私のバッグは、人通りの少ない道路に、ぽつん、と転がっていた。

そして、私が異世界に行った夜、その日のうちに発見された。

ここまではいい。


だが、拾い主は警察に届けなかった。

のちに彼は、こう警察に語っている。


「だって、俺、少しとはいえお酒入ってたんで…。

面倒ごとは、ちょっと…。」


そんな面倒ごとが嫌いな彼は、拾ったものの途方にくれた。

そこで、目についた店に届けたのである。


個人経営の理髪店。

たまたま、閉店間際で店内には受付のアルバイト君しかいなかった。


「これ、店の前に落ちてましたよ。

おたくのお客さんの物じゃないかな。

だから、よろしくね。」


と、言ってさっさと店に押し付けて出て行ってしまった。

アルバイト君は戸惑ったものの…。

とりあえず、セオリーどおりに落し物として扱った。

その時点では、特にバッグの中を確認しなかった。


だが、多少は疑問に思うところもあったのだろう。

数日して、オーナーに相談したのだ。


「あのう。カバンの落し物があるんですけど、誰も取りに来てないみたいで…大丈夫ですかね?」


そこで、オーナーが中身を確認した。

貴重品のオンパレードだった。

財布には現金どころか、免許証に保険証、キャッシュカードにクレジットカード。

後は前述のとおり、スマホに自宅の鍵。

あ、社員証も入ってるね。


オーナー、即座に警察に届け出た。

この時点で、私が消えて5日目なので即座も何もない気もするが。


さすがに、この状況で事件性がないとは言えないだろう。

バッグの身分証から、捜索願が出されている人物だとわかる。

私は、ただの一般家出人ではなくなった。


そして、1年後。

何も知らない私が帰ってきた。


私が異世界から帰ってきた道路だが。

実は、自宅マンションの近くなのだ。

徒歩で5分程度。


そして、思い出して欲しい。

日本に戻る直前まで、私はどこにいたか?

神の泉である。

そして、帰還の際には泉の中に沈んだ。


私は全身、びしょ濡れだった。

しかも、泉に浸かっていたので、靴を履いていなかった。

いや、普通に考えて、靴脱ぐでしょう?

日本でも水遊びするとき、裸足になるでしょう?

それと同じ。


しかし、夏の昼間の話ならともかく。

夜の住宅街に、全身濡れ鼠(ねずみ)の裸足の女がいたら、尋常じゃない。

徒歩5分程度の距離で乾くはずもなかった。


さらに1年も行方不明になっていた女。


大家さんは、我に返ってすぐに警察に電話をし、タオルを何枚も持ってきて、

『もう大丈夫だからね。がんばったね。』

と、警察が来るまで背中をさすってくれていた。

つまり、

『事件に巻き込まれ、今まで監禁されていたものの、隙をついて逃げてきたのでは?!』

と思われていた。


情に厚い、おばさんなのだ。

だが、私は現状を理解していなかったので、

『そんなに怪しいかー。

ずぶ濡れだもんなあ。

川に落ちた、とでも言っておくか?

いや、逆に怪しいか…。

何も言わない方がいいかな?

でも、そんなに心配しなくても…。』

と、思っていた。

むしろ、早く部屋開けてくんないかな、と思っていたくらいである。


ちなみに、警察への連絡は、おばさんが指示して息子さんが電話した。

だから、110番されているとは全く気がついていませんでした!

ちなみに、この時、両親にも連絡してくれたそうな。


最終的に。

私は、1年前に、どこかの誰かに拉致監禁されたことになっていた。

大家のおばさんの、想像どおり!


そして、隙をついて逃亡するときに靴なんて履いていられない。

だから、裸足。

濡れ鼠だったのは…犯人に水に沈められたとか、逃げる途中で川に落ちたとか、色々と予想されたものの、はっきりせず。

犯人が逮捕されるまで、わからない。

いや、犯人などいないのだが。


私は、事件のショックにより記憶を失っていることになっていた。

まあ実際に1年分の記憶とか、ないし。

一応ね?

1ヶ月の異世界生活の記憶はあるわけだから、それとなーく、告白してみたりしたんだよ?

結果として、事件のショックで記憶が混乱、残りの11ヶ月は記憶喪失として扱われた。


さらに。

きちんと病院で徹底的に検査を受けさせられました。

いやー、現代の医学というか技術ってすごいよねー。


私が、おそらく手足胴体を縛られるなどの、きつい拘束を受けた後、おとなしくしていたために、縛るのをやめて軟禁に移行したと思われる、という結論をだしてきた。


あながち、間違っていない。

カラの沼地で、盗賊に拘束されたことを思い出したよ。

あれ、おもいっきり縛られてた。

それも長時間。


盗賊から解放されたあと?

共犯の疑いかけられて、たしかに軟禁状態だったわ!


日本、すごいね…。

そして、私の事件はニュースになりました。


両親は、覚えていないなら、無理に思い出す必要はないと思っているようだ。

怖くて辛かっただろう記憶を思い出して、苦しむくらいなら、そんな記憶は無いほうが良い、と。


しかし一方で、犯人に対する憎しみが日々募っていくようで、早急に逮捕してほしいと警察に訴えていた。


ごめん、犯人いないんだ…。


そんな、拉致監禁事件の被害者である私。

だが。

日本は、被害者に優しい世界ではなかった。

好奇の目にさらされまくったのである。



そして、いま。

実家には帰ってきたものの、いつまでも職なしのままでいるわけには、いかない。


もともと、日本でがんばるべきだと思ったうえで異世界から帰還したのだ。

自分を変えたい。

何かを与える人間でありたい、と。


だからこそ。

今度は、自分の意志で。

自分なりに、この仕事なら人の役に立つかもしれない、とか。

きちんと自分なりに考えて、就職活動を開始した。


結果。

落ちまくった。


やはり。

被害者であっても、事件に巻き込まれた人間には、それだけの理由があると思われているのか。

はたまた、約1年分の記憶喪失という精神的な部分を懸念しての不採用なのか。


とにかく。

NOを突きつけられまくったのである。


人生って厳しい。

心、折れる。


ストレスが溜まったとき、人は何をするか?

それは人それぞれ。


買い物をする人もいる。

ドカ食いをする人もいる。

カラオケに行く人もいる。

推しの芸能人や、漫画アニメのキャラに貢ぐ人もいるだろう。


このとき。

私は、叫びたくなったのだ。

いくら、危機感が足りない、楽観的だ、と言われた私でも。


さすがにもう、50社近くから、今後の活躍をお祈りされまくったら、焦ってくる。

いったい、どうしろというのか。


荒れ狂う心のままに、ちょっと愚痴をこぼすぐらいなら、許されるのではないか?

口に出すだけなら、自由ではないか?


それで、少しでも心が晴れるなら。

叫んでもいいだろう。

ということで。


「日本、死ねぇぇぇぇーっ!!!」


ああ。

せっかく、異世界で色々と学び、成長できたと思ったのに。

試練とは。

困難とは。


人生、そう上手くいかないものである。

むしろ、生きるとは、厳しいものである…。



♢♢♢



結局、正規の仕事が決まらなかったので、派遣会社に登録して短期の仕事をするようになった。


私の、あの決意は、どこに…。

泣きそうである。


しかし、ここで挫けたら、何のために帰ってきたのかわからない。

これも、試練だ。


一歩ずつ一歩ずつ…。


本当にダメだと思ったときは、あの水晶に頼ることにした。

浄化の光がそのまま固まったかのような、この石。


不思議と、これを握りしめると、心が軽くなる。

私の中にある闇の誘惑を、退けてくれているのかもしれない。


おそらく。

もう立派な、異世界の宗教の信者だろう。

でも、それでも良かった。

あちらの世界の教えが、悪いものだとは思えなかったから。


だから、これからも。

厳しい現実が目の前にあっても。

日本の中で生きていても、自分が無意味な生命であるとは思いたくはなかった。


どこかに、きっと。

私が生きる意味があるはずだ。

まだ、見つけていないだけ。


辛い毎日だけど。

それだけは、信じよう、信じたい、と思った。



だからかもしれない。

その子から、目が離せなくなったのは。


空虚な瞳。

無表情。

ただ息をしているだけ、というような雰囲気。

華やかなイベント会場でする顔ではなかった。


とある大型スーパー。

期間限定で、テレビで人気の戦隊モノとコラボしたヒーローショー。

戦隊モノを誘致したのは、とあるメーカーだった。

メーカーと、スーパーと、戦隊モノの共同企画。

その日の私は、メーカー側の人間として、風船係をしていた。


イベントを告知し、盛り上げるため。

ひとついくら、とかの高い風船ではなく。

無料配布の、空気を入れただけのもの。


そこで。

1人の男の子が、家族と一緒に風船を貰いにきた。

もちろん、渡すことが仕事なので、笑顔で手渡す。


私と一緒に仕事をしているメーカー社員が、親子にヒーローショーの説明をする。

契約に繋げるため、熱心なトークが繰り広げられた。

まあ、無料(タダ)でショーは見れないよね。

ヒーローショーは、メーカーの契約特典なのだ。


祖父母も一緒に来ていて、大所帯。

小さな男の子は、楽しそうに風船をブンブンして喜んでいる。

まだ、1歳半くらい?

ベビーカーに乗っている。


両親祖父母、小さな男の子の5人。

はじめ、私はそう思っていた。


しばらくして。

気がついた。

彼ら5人の後ろ、少し離れて、もう1人。

小学校低学年くらいか、という男の子が立っていることに。


その彼の距離感が。

寂しいというよりも、何かを諦めたかのような。

ぐっと胸に突き刺さる何かが、あった。


だから。

両親祖父母たちの話が、途切れた瞬間に問いかけたのだ。

後ろの男の子も、お子さんですか、と。

良ければ、風船をどうぞ、と。


そこで、両親祖父母は、はじめて気がついた、という顔をした。

母親が、後ろの男の子を呼ぶ。


おずおずと近寄ってきて、母親の隣に並ぶ。

やはり、親子のようだ。

母親似、かな?


屈んで、目を合わせるように。

できる限り、威圧感を与えないように。

どうぞ、と風船を手渡した。


その時だけ。

空虚だった瞳が、微かに、ほんの僅かに揺れるのを見た。

ありがとう、と蚊の鳴くような声。

それきり、彼は黙って、再び後ろに隠れてしまった。


そして。

すぐに両親祖父母の興味も視線も、その子から外れて。

話題も視線も、他へ移っていく。

どうやら、ベビーカーにいる男の子が中心。


昔の私なら。

他人の家族に、どうこう思うことは、ない。


家庭の形なんて、それぞれだ。

さらに、私はひとりっ子。

兄弟のことは、よくわからない。

ただ漠然と、お兄ちゃんは弟に譲ったりするものなんだなと思った。

親だって、小さい子のほうに目がいくよねって思う。


だから、特に気にしない。

その時も、そんな気持ちがあった。


でも。

あの子の、瞳が。

どこか、引っかかって。


だから。

世間話のように、社員に先ほどの家族の話をしてみた。


おとなしいお兄ちゃんでしたね、って。

メーカー社員は、割とお喋りで、想像力が逞しいタイプだったらしい。

彼の世界観、というか妄想という名の設定を聞くことになってしまった。


母親は元々シングルマザー。

父親と再婚。

父親のほうは初婚で、ベビーカーの男の子は祖父母にとって初孫。

だから初孫フィーバー中。

一緒にいた祖父母は父方で、だからお兄ちゃんは肩身がせまい。

家庭でも、母親が新しい父親とうまくやっていて、弟ができた。

小さい子は、手がかかる。

お兄ちゃんは、身の置きどころがなく、1人孤独を抱えている。


あの短時間の接触で、よくそこまで妄想できたな、と思う。


だが。

少し、私も思ったのだ。

あながち、間違いでもないかもしれない、と。


真実なんて、わからないが。

あの、お兄ちゃんの、瞳が。

もはや、人生を諦めてしまったかのようで。


もし、自分の価値を見出せずにいたら?

このまま、誰も彼を抱きしめてくれなかったら?


行き着く先は?


生きる意味があるはずの、異世界でさえ。

生きることに絶望してしまうのだ。

神話に出てくる娘や、ハークのように。


これは、いけない。


人には、必ず、価値がある。

すべての人が、大切な意味のある生を授かっているはずなのだ。


私は、それを知っているではないか。

それならば。

これを、伝えていくのは私の役目なのではないか?


絶望する子を生み出しては、いけない。

自分自身の価値を、疑わないで欲しい。


そう思ったのだ。

そして、これだ、と確信した。


日本で、私がしなければならないこと。

これしか、ない。



子どもと関われる仕事はなんだろう?


真っ先に、思いつくのは教師だ。

しかし、教員免許を持っていない。

今から取得することは可能だろうか?


ほかには?

子どもの習い事だろうか。

水泳や野球、サッカー、バスケ。

ピアノ、習字、バレエ。

しかし、事務員ではそこまで関われない気もする…。

講師になるには?

今からでもできるのか?


本当に、色々と考えてみた。

今度こそ。

自分のやりたい事を、見失ってはいけない。


最終的に。

保育士を目指すことにした。


色々な子たちと接することができて。

私にも手が届く職業ではないかと判断した。


保育士の知人からは、反対された。

給料も安いし、重労働だよ、と。

忙しすぎて、愛情を注ぐ、とか言ってられないよって。


たしかに、そうかもしれない。

でも。

それでも。

やってみなければ、わからないではないか。


私は、愛情を与えられてきた。

愛されてきたと思う。

それでも、どこか空虚で。

精一杯、生きるなんてしなかった。

あまり、自分に価値があるとは思っていなかった。


でも。

もう私は、そう思っていない。

愛情を与える側へ。

生命には、意味があるのだ。

どんな生命にも、価値がある。


いろんな子がいるだろう。

私のような子も。

あの、イベント会場で会ったような子も。

アッカー、セイ、キーのような子もいるだろう。


そして。

将来、多かれ少なかれ、困難にぶち当たる。

そんな時に、絶望感に苛まれないように。

どこかに、解決の道があると探せるように。

自分の存在を、自分が認めてあげられるように。


子どもたちが、そう思えるように。


誰かが、やってくれるのを期待していてはダメだ。

私が、動かねばならない。


だから。

私は、子どもと接することができる仕事を。

保育士を目指すことにした。



♢♢♢



保育士には、資格が必要である。

派遣で短期の仕事を受けながら、勉強をはじめた。


そして。

異世界で学んだように。

やってもらって当たり前の意識を変えようと思った。


まずは、ありがとう、とお礼を言うところから。

それが、両親であっても。


私のことを心配してくれて、私のことを想ってくれる。

私のために、ご飯を用意してくれたり、家でも色々と気遣ってくれる。


今までは、親なんだから当然だと思っていた。

でも、当然として受けとってはいけないと思った。


アッカーも言っていたではないか。

まず、心がけるところから。

本質は変わらなくても。

10年くらいすれば、多少はマシになってるものだって。


だから、少しずつ。


意識を変えられるように。

人に何かを与える人間になれるように。


生命の尊さを、伝えていけるように。


変わりたい。



アッカー、セイ、キー。

ありがとう。


あなたたちのおかげで、いま私は、この日本でやりたい事を見つけることができました。

そちらの言葉で言えば、使命、と言ってもいいかもしれない。


次に会ったときには。

成長した姿を見てほしい。


そして。

お礼をしたい。


日本で、使命を果たすことができたなら。

今度は、異世界にお礼をしに行くべきだろう。


だから。

それまでは。


私のこと、忘れずに待っていて欲しい。


きっと、いつか。

会いに行くから。


私は、保育士を目指す。


これをもって、【神さまが宿る泉】を完結表記に変えさせていただきます。


今のところ、番外編も次回作も未定です。

ですが、また忘れた頃にでも、何か投稿するでしょう。

そのときは、またよろしくお願いします。

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