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Speed Runaway  作者: バベル
第一章指名手配
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第一章 ⑦

 老人は、机と椅子以外の調度品が無い、広い部屋の中で日本地図を広げていた。その地図には愛知から石川の半分程の場所に赤い線が本当を半分にしていた。関西方面を真日本帝国。関東方面を米。北海道を露。沖縄を中華と書かれている。その地図を見て、老人は深い溜息を吐く。一時的とはいえ、愛する日本を分断するのはツライと思う。しかし、それでもやらねばならない。何故なら、世界を手にしなければ気が済まない自身の深い欲が許さないのだ。

 日本分断計画は、世界の主要国の一部に統治させ、利益から大きく出られない間に世界のパワーバランスを完全に破壊する時間が必要なのだ。

 ブレイン・マシン・インタフェース。この技術が老人の欲のストッパーを破壊した。

 初期の計画では、脳波を解析して機械との間の出力装置である。それは脳で軍事ロボットを操作させる為だった。

 1人の人間が何台モノ戦闘機や戦車を使い戦場で一騎当千の力を手にする。そうする事で戦争をしても味方を減らす事を最小限に抑える事が出来る。

 だが、それだけなら、世界のパワーバランスを崩す程ではなかった。繰り返す人体実験の山が奇跡を生んだのだ。

「ほっほ」

 老人は立ち上がり、悪くなった足を引きずる様にして、隣りの部屋に移動する。その部屋はコンピューターにコードだらけ、そして、真ん中に椅子がある。その椅子には手足を括り付けられ、目隠しをされ猿ぐつわをされた男が座っている。

「ちくしょう!! ここはどこなんだよ!! 誰かいないのか!?」

 声音から中高生程の年齢だと分かる。

「ほっほ。気分はどうじゃ?」

「誰かいるのか!? 水、水をくれよ!!」

「いいじゃろ。水じゃな? ……それをやるから、これからの日本を見てくれ」

「……日本?」

「そうじゃ。この国は……いや、ワシの国はどうなっているんじゃ?」

「……てめーがくそったれなジジイか、日本をこんな国にした……」

 その言葉に老人の口元が歪む。まだ、この国は『こんな国』になっていない。何も変わっていない日本なのだ。目の前の少年は確かに何かを見ているのだ。老人には見えないナニかを。

「それで? どんな綺麗な国になっておる?」

「帰してくれ……頼むよ。家族が心配なんだ」

「っで? どうなんじゃ?」

「戦争が……起きてるだろ? ……どこの国か分からない……でも……日本人同士が戦っている様に思う。つうか俺に聞かなくても知っているだろう……」

 少年は分かっていない。

 まだ、戦争が起きていない事を。

 これから起きるのだ。

 戦後日本の影の王として頂点に立つフィクサーの豪人と老人の日本を掛けた戦いが。ノックの音が聞こえ、老人がドアの方に視線を向けると金髪の男が入って来た。

「ご老体。捕捉しました」

「……未来は決まっているのじゃが、余興じゃな。こちらが本気だと思わせていれば、豪人の意識もそちらに向くじゃろ。兵の準備を急いでおけ。自衛隊の全てを抑えている訳では無いのじゃしな」

 その押さえれていない部分が日本人同士の戦いになるのだろう。だがどうでも良いのだ老人には。日本がどうなろうが、世界がどうなろうが。

「……ご老体。未来は変わるモノだと私は思います。アレは未来を変える可能性があると私は思っております」

 その言葉に老人の顔は歪み、その瞳を向ける。金髪の青い瞳を見透かす様に黒く染まった瞳を。


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