第一章 ④
コツンと手に持った杖を鳴らす。その鳴った音に老人の前に並ぶ数人の男達の表情が歪む。それを数度繰り返す。
「奪われたじゃと?」
重々しく口を開く。それと同時に男の1人が捲くし立てる様に口早に叫ぶ。
「まさか、情報が漏れているなんて想像していなかったんですよ!! 裏切り者が……裏切り者がいるに決まっています!! 俺達は、俺は悪く無いんです!!」
叫ぶ男に老人が鼻を鳴らす。同時に並ぶ男達の後ろに立っている黒いスーツの男が無言で男の頭に銃を押し付け、引き金を引いた。倒れ動かない男を黒いスーツを着た男は、黒い瞳を冷たく周りの男に向ける。表情が歪む男達。誰も口を開けない。そんな中、老人が呟く。
「コレコレ、頭を撃ってしもうたら、楽しめ無いじゃろ。この男の言う様に裏切り者の可能性があるんじゃよ。楽しませてもらおう」
老人の口元が歪む。その言葉で自分達の運命を知った男達、1人は失神してしまい、その場に倒れた。他の男達は思っただろう。自分も気を失いたいっと。
「榊。コレらを連れ行け」
「ハ」
長い黒の長髪を1度掻き上げて、顎で男達を促す。男達もここで抵抗しても無駄な事を知っており、倒れた男に肩を貸して従い出て行く。
「それで?」
誰もいなくなった部屋で老人が呟くと。
部屋の片隅で立っていた男が返事を返す。
「わざわざ、アレを奪うのは豪人の手下でしょ。諸外国の者ならば、日本が傾く可能性が大きいのにわざわざ手を出すはずが無いでしょうから」
「ならば、何故お主が情報を知らない」
裏切り者はお前なのか? そう疑うかの様な声音で言う。
「まさか……豪人も馬鹿では無いですから、実行犯にしか情報を流していないのでしょう」
「取り返せるんじゃろうな? アレが無くてはちょいと計画に支障が出るんじゃよ」
「今現在、日本と外国の情報源をフルに使っております。それに……」
老人にカードを手渡す。老人はそれを見て、目を細める。コレを手渡された理由が分からなかったからだ。
「それが現場に落ちていたらしいです……民間人を巻き込んだんでしょう。だが、死体が無かった」
「ほっほ。今や警察も自衛隊もこちらの手の内じゃ。好きに使え」
「はい」
言って、老人を残し、部屋を出る。肩までの金髪をなびかせ、青い瞳で最後に老人に頭を下げて。




