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Speed Runaway  作者: バベル
第一章指名手配
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第一章 指名手配

第一章指名手配


 意外な事に貴樹達は泳がなかった。しばらく水中にいるとヘリは海の方へと飛んで行った。なるほどっと貴樹は思う。あの勢いで海に入れば泳いで逃げるだろうと思わせたのだろう。その上、閉鎖された工場の1つのロッカー室の様な場所に避難している。そうするとしばらく近くを敵が捜索はするだろうが、近辺にいないとの判断を下すのも遠く無いだろうと彼女は言うのだ。そして、貴樹の頭の中は敵? って誰? っと思うのも一瞬だけで、自身の巻き込まれた現状を説明出来るであろう麗菜に話しを聞きたい……っと思うも濡れた服を脱ぎ、お互い真っ裸の為背中合わせで、貴樹は自分の心臓の音が伝わっていない事を祈る事が忙しかった。

 だからこそ、始めは分からなかった。麗菜の呼吸が荒い事に。

 気が付いたのは、音が鳴ったからだ。座っていた麗菜の身体が横になった音。見てはいけないと思いながらも、心配心だと自身に言い聞かせて横目で見た。

「お、おい。肩」

 思い出した、初めて見た時、肩を抑えていた事を。麗菜は乾いた笑い声を上げ言う。

「ハハ。アドレナリンが全開の時は痛みなんてなかったんだけど……超痛い」

「い、医者に行こう」

 怪我をしたら医者しか平和な日本に住む、貴樹には思いつかない。

「そんな事したら警察に連れてかれちゃうわよ。ここから抜けたら針と糸で縫うから大丈夫。弾も抜けてるし。今すぐどうのこうのって事は無いから」

「……」

 声音からも表情からも、痛さは伝わるが確かに命がどうとかは、今すぐには起き無さそうに思えた。すると様々な疑問が浮かび始める。今の状況にだ。しかし、何を聞いたら良いのか全く分からない。分からないと言うよりも聞きたい事が多すぎる。だが、麗菜の行動でそれを聞く、きっかけが出来た。彼女は拳銃をバラし始めたのだ。初めて見る拳銃、それもおそらく本物だ。それをテキパキと使い慣れた様子で次々とバラバラにしていく麗菜に貴樹は息を呑んで声を出した。

「そ、それ本物なのか?」

 そして、その質問は貴樹の想像通りだった。

「ええ」

 短く麗菜は答えた。しかし、その質問よりも麗菜は違う言葉の方が感情を込められていた。

「……貴樹は、女の子の裸を見ても、興奮とかしない、同性愛者なのかな?」

 青い瞳がじとりっと貴樹に向けられる。言われて、貴樹は弾ける様に身体を後ろに向けて、

「ごめん!!」

 沈黙が流れる。貴樹は顔を赤く染めた。拳銃をバラしていく音のみが音を出していた。

 その音が聞こえるたびに麗菜の存在を感じ、恥ずかしくなった貴樹は、服が渇いたのを確認しようと自分の服を触る。釣りの時に愛用している青い防水ベスト。釣り用としているのには理由があるポケットの数が多いのだ。そのポケットからスマホを取り出して、確かめる。

「……良かった。水没して無い」

 そう呟いた。財布を無くし、原付を無くし、その上、スマホさえも失ったならば、泣くことも出来ないと思ったからだ。

 しかし、その想いもすぐに壊れる事になる。全裸の麗菜が自身の身体を見られる事をいとわず、貴樹の手からスマホを奪ったからだ。

「ちょ!! お前!!」

 外には聞こえない様に小声だが、動揺を見せる声を上げた。そこでさらに、麗菜がスマホを勢い良く踏みつぶした。

「ここから出よう」

 麗奈の身体を見ない様に手で目を隠した貴樹に麗奈はそう言った。目の前の麗奈の落ち着きから、こういう状況に慣れているのが分かる。漫画や映画の世界しか知らないがおそらくプロっと言う奴だろうかと貴樹は思っていた。それでも、今の状況は漫画や映画の知識しか無い貴樹でも分かる。外に出るのは危ないと。

「冷た」

 言いながら、テキパキと着替える麗菜。置いて行かれる恐怖が頭に過ぎる。こんな状況で彼女に置いて行かれれば、どんな事になるのか想像も出来ずに貴樹も慌てて服を着る。

「じゃあ、行きますか」

 肩に手を当てながら、麗菜は部屋から出ようとする。貴樹は慌てて聞く。

「行くってどこに?」

 その言葉に麗菜の口元が三日月の様に、まるでスカルの様に口元が曲がる。その表情はまるで、鬼や悪魔の様に貴樹には見えた。初めて見た時から彼女の美しさにドキドキと鼓動を速めていた心臓は、今は止まりそうな程、弱弱しくなっていた。彼女の本質はこの顔なのだろうかと貴樹の思考を襲う。だが、その考えを否定するかの様に貴樹は頭を振る。

 全く分からない状況で彼女にすがるしか、選択が無いからだ。そう思っても彼女の表情と言葉に貴樹は不安を募らせた。

「夜のドライブと洒落こみましょう」


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